チベットわが祖国 改版: ダライ・ラマ自叙伝 (中公文庫 B 1-21 BIBLIO20世紀)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122039384

作品紹介・あらすじ

化身転生者としてチベットの宗教界・政治界の最高責任者となった十四世ダライ・ラマ。中国の度重なる弾圧、インド亡命という苛酷な運命に抗し、釈尊に発する非暴力によって祖国の解放と平和を希求する感動の自伝。

感想・レビュー・書評

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  • 新書文庫

  • 本書は、ダライ・ラマ14世が1980年代後半までのチベットを自身の立場・視点という自叙伝の形式にて客観的に伝える目的で書かれている。

    宗教に深く帰依して、素朴に生きていたチベットという国が中国という大国に飲み込まれる過程をダライ・ラマという政治と国民の精神的柱である立場から淡々と伝えている。悟りの境地に程遠い凡人では理不尽に対して「怒り」が先走ってしまいがちだが、本書の中から、読者にその抑制された気持ちと当時の無力感を切り取るように伝えている。無為に帰した数々の中国との政治的な取引そして裏切り、頼みとした国連を含む国際社会がある面から見るとチベットを見放したことによる孤立は、常人ではとても耐えられないと思う。

    2008年のチベット騒乱に対しても「非暴力」の呼びかけは、ダライ・ラマ14世の首尾一貫した主張であり、現代において再び中国政府が、「亡命政権による陰謀」などと時代錯誤の主張を繰り返すのが滑稽でさえある。

    本書は、文集文庫の「ダライ・ラマ自伝」より客観的な視点を多く盛り込んでいる。特にチベットが独立国家であると主張する根拠について歴史的・国際法の観点、国連決議などを上げている。

    読後感としてやはりチベットについては中国の国内問題と一言では片付けられない感じがした。

  • ダライ・ラマ目線のチベットを知る一冊。

    国家・宗教・習慣・領土・権利。。
    深くてとてもとてもすべてを知ることはできないけれど、入門編としてはぴったりかもしれません。

  • 重い重い運命とチベット人の期待を背負って、並みの人間では耐えられないような人生。
    本当に活仏様のようだと感じるけど、実際には講演会などで聴衆の前で鼻をかんだりして「同じ人間である」ということをアピールしている。
    思想・瞑想によって、これだけ強く生きられるのかと。

  • ようやく読み終わりました。淡々と彼の数奇な歳月とチベットの受難が綴られているのだけれども、インドを旅した折(亡命前)の、ガンジーに助けを乞うシーンは胸に迫るものがある。もちろん、その時すでにガンジーは死んでいて会うことはできないのだけれども、彼らは魂で触れ合うのだ。それから、ほんの数行しか書いていないが、中国側のチベットに対する残虐な行為の数々。中国文化にも中国人にも私はけっこう好意を持っているが、この中国という国家の自分勝手な行為については少しも正当化の論理は成り立たないと思う。そういえば、昔、高校の頃、「アラビアのロレンス」を読んでイギリスという「国(nation-state)」に対して激しい憤りをおぼえたが、今回はこのダライ・ラマの自伝を読んで中国という「国」に対して憤りを感じる。残念なことだけど。
    あと、本筋とは関係ないことで「ほへー」と思ったのは、毛沢東の時代。中国の政治家は、5時間とか7時間とか平気で演説をし続けたらしい。それってすごい。本人も喋ってる間にどんどんわけわかんなくなっちゃうんだろうなー。(2000 Apr)

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著者プロフィール

1935年、チベット東北部アムド地方に生まれる。1989年にノーベル平和賞受賞。全チベット人から絶大な尊敬と信頼を寄せられているのみならず、世界中に熱心な信者をもつ。

「2013年 『ダライ・ラマ般若心経を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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