皇族 (中公文庫 ひ 25-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122039605

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  • 北白川宮家は「悲劇の宮家」だ。

    初代・智成新王は17歳で夭折、初代の兄にあたる2代・能久新王は
    討伐軍の指揮を執った台湾で戦病死。

    そして3代・成久王は美しき宮様だったが、軍事御研究の名目で
    留学していたフランス・パリ郊外で自らハンドルを握っていた
    自動車で事故を起こして亡くなった。

    その第一子・永久王は父の薨去に伴って宮家を継いだが、日華事変で
    出征し、飛行機の不時着事故で亡くなっている。

    長生きしたのは5代となる道久王だけ。最も、戦後には皇籍離脱を
    しているのだが。

    本書では北白川宮成久王と東久邇宮稔彦王を中心に、明治維新後の
    近代皇族の姿を描いている。

    東久邇宮稔彦王については本書以外でも読んでいるし、皇族の中では
    かなりの「困ったちゃん」だったと思っていたのだが、北白川宮の
    事故に関連しては救助にあたった地元の人たちへの気配りなど、
    日本大使館よりも迅速な働きをしていたらしい。

    終戦までは今とは比較にならないくらいに宮家も多かった。明治天皇
    の皇女たちの嫁ぎ先として宮家が必要だったこともあったのだろうが、
    成人した親王が後の大正天皇おひとりだけだったこともあり、やはり
    天皇家のスペアとしての役割だったのだろう。

    室町以降の4親王家以外の宮家がどのように創設されたかなど、制度面
    について詳しく書かれているので勉強になった。

    「これも誠に御気の毒なことではあろうが已むを得ぬ事であり、今まで
    が善すぎたのであり、その殆ど全部が(二、三の例外を除いては)皇室
    のお徳を上げるほどのことをなさらず、汚した方も相当あったのを考へ
    ればむしろよい事であろう」

    直宮以外の臣籍降下にあたり、昭和天皇の侍従長だった入江相政は日記
    に綴った。皇族であったからこそ、潤沢な資金を得ての留学だったのに、
    再三の帰国要請にも従わずに「帰国させるなら皇族を辞める」とまで
    言って宮内庁を脅していた東久邇宮のことでも念頭にあったのか。

    ただ、明治維新以降に増えた宮家にしても元勲たちの政治的思惑も
    絡んでいるので、一概に彼らだけの責任とは言えないと思うのだ。

    明治天皇にしても、維新の志士たちに御簾の向こう側から引っ張り
    出され、新しい日本に利用されたのだし、大正天皇に至っては明治
    天皇を模倣するよう求められ、病んでしまったのだから。

    本書は秋篠宮悠仁親王殿下のお誕生前に書かれているので、東宮家にも
    秋篠宮家にも親王が誕生しなければ女性天皇もあるべきではないのか
    との提言をしている。

    一部では旧宮家の復帰を希望する人たちもいるようだが、当の旧宮家
    の人たちは望んでないだろうな。「明治天皇の玄孫」を売りにしてい
    る「皇居の方から来ました芸人」の人は別として。

    ただ、悠仁親王殿下がいらっしゃるから…と、女性天皇・女性宮家の
    件の議論を終わらせてはいけないと思う。近い将来、皇族の数は減少
    するのが分かっているのだから。

  • \105

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