日本語はいかにして成立したか (中公文庫 お 10-6)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122040076

作品紹介・あらすじ

日本語とはどのような言葉なのか?神話の分析から日本文化の重層的成立を明らかにし、文化の進展に伴う日本語の展開と、漢字の輸入から仮名遣の確立に至るまでを説く。日本語に対する著者の情熱に裏打ちされた、歯切れのいい日本語の成立史である。

感想・レビュー・書評

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  • 惜しい! 日本人が文字を獲得した有史以降の分析は緻密だし、興味深い論説に富む。なるほど一つの民族が高級な母語体系を確立するのは、こういうプロセスを経たんだなと思わせる。
    が、しかしである。日本語のタミル語起源説とヤマイモ栽培に関連付けた神話解釈は妄想レベルである。文系の学者は因果関係や相関関係の立証が非常に甘い。2つの集合に類似点が見られることと、それらに因果、相関関係があることは全く別であり、科学的には論評に値しない。いくら後半で素晴らしい論を唱えても信用ガタ落ちで台無しである。
    タミル語起源説の最大の欠点は伝播ルートが全く見えないこと。もしインドから南方の島伝いに人がやって来たとすると、生体遺伝的な特徴にも言語などの文化的な特徴にも広域な連続性がなければならないが、インドネシア、フィリピン、台湾を不連続に飛び越えて日本とポリネシアにその特徴が受け継がれることは非常に考えにくい。古代インド人が飛行機やクルーズ船に乗って来日したとでも言うのか?
    またヤマイモは本来熱帯性の植物であり、縄文人が主に居住していた東北地方での栽培は考えられない。種芋を分割して栽培できるのは、南方系のタロイモと、中国原産の長芋だけであり、日本固有種の自然薯は可食できるまでに何年もかかることから、縄文時代に意図的に栽培していたと考える考古学者は皆無だろう。種芋を埋める栽培習慣がなければ、生贄の少女を切り刻んで埋めるという発想も出てこない。そもそも縄文人が農耕をしていたかどうかも見解が分かれる。
    こういう訳の分からない妄想さえなければ、完璧だったのだが。

  • 日本語とはどのような言葉なのか?神話の分析から日本文化の重層的成立を明らかにし、文化の進展に伴う日本語の展開と、漢字の輸入から仮名遣の確立に至るまでを説く。

  • 日本語の成立について、まさかオーストロネシア語やタミル語との類似に繋がり、それが東日本や西日本の勢力図にまで繋がるとは!
    知らなかった……。

    助詞主格「の」「が」の違いも、驚き。なるほど。

    情報量が多くて、一読しただけでは読めていない部分もある。再読前提。

  • 私たちの言語である日本語の歴史の変遷について書かれている。まだ文字を持たなかった時代のこと、漢字という文字が入ってきた時代のこと、漢字を日本人が使う日本語、やまと言葉にいかに合うように苦心があったか……。
    現代の日本語が成り立っている背景には、長い年月の日本人の苦心・工夫の上に成り立っていることがよく分かる。
    内容もそれほど難しくなく、とてもお勧めできる書籍である。

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著者プロフィール

1919-2008年。東京生まれ。国語学者。著書に『日本語の起源 新版』『日本語練習帳』『日本語と私』『日本語の年輪』『係り結びの研究』『日本語の形成』他。編著に『岩波古語辞典』『古典基礎語辞典』他。

「2015年 『日本語と私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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