ふところ手帖 改版 (中公文庫 R 24)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122046474

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  • 子母澤寛は、118年前の1892年2月1日北海道石狩市生まれの小説家。

    現在ではほとんど読まれなくなったといってもいい存在ですが、それでも近くの小さな書店を覗くと、『新選組始末記』『勝海舟』『味覚極楽』の三冊の文庫が置いてあって、これには、さすが今の時代劇ブームの隆盛を知る思いで感心しました。

    でも、他でもなく、子母澤寛の真の真骨頂は、あの不朽の名作・座頭市の生みの親だということにあります。

    しかも、それは彼の得意な長編小説のかたちで私たちに提出されたものではなく、随筆集である本書の中の「座頭市物語」という、わずか10頁のショートストーリーが発端なのですから驚くではありませんか。

    江戸時代に知れ渡った房総地方の侠客を取材するべく現地を旅した折に、あの飯岡助五郎一家にわらじを脱いでいる盲目の侠客・ばくち打ちがいて、目が見えないにもかかわらずサイコロの丁半を見事に言い当てたという話を聞き及んで、俄然、その座頭の市に関心を持って、あっというまに10頁ほどの物語を作ってしまったというのです。

    すべては、そこから始まったのでした。

    映画は巷間伝えられる『座頭市物語』(1962年)ではなく、1960年の『不知火検校』からはじまって『新座頭市物語・笠間の血祭り』(1973年)に終わる26本の作品と、1989年に勝新太郎自らがメガホンをとった『座頭市』により、圧倒的な暴力と人情をもって私たちに迫ってきます。

    それにつけても、その後、この日本時代劇史上もっとも傑出した物語の栄光と、勝新太郎という不生出の俳優の殺気迫る名演技に感涙してか、少しでもおこぼれ頂戴とばかりに勢い勇んでリメイクした、ビート北野の『座頭市』と綾瀬はるかの『ICHI』は、残念ながら見るも無残な失敗作、というか、前者は、それなりの猿真似は出来るけれど、カツシンの気風と迫力の足元にも及ばないことをわざわざ立証したり、後者は、綾瀬はるかの気丈なりりしい可愛らしさだけが目立って、座頭市の本質である虐げられた者ゆえの非情さをスポイルしてしまっていて問題外の感じですが、もっともアイドルが有名人役を演じるという名作路線というのなら、はるかちゃん、あなたはイケテますことよ。

  • 出版社 / 著者からの内容紹介
    勝海舟、榎本武揚など幕末動乱を生きた人物の実像を、歴史小説の第一人者が独自の語り口であざやかに描出した、格調高い歴史随筆集。〈解説〉尾崎秀樹

  • (2006年4月)。

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著者プロフィール

子母澤寛

明治二十五年(一八九二)、北海道生れ。本名、梅谷松太郎。明治大学法学部卒。新聞記者を経て文筆業に。昭和三年の『新選組始末記』に始まる新選組三部作の実録や時代小説を多数手がけ、戦後は『勝海舟』『父子鷹』『おとこ鷹』『逃げ水』など徳川遺臣と江戸への挽歌ともいうべき諸作品を発表。昭和三十七年に菊池寛賞受賞。随筆の名手としても知られ、『味覚極楽』『ふところ手帖』(正続)など。昭和四十三年(一九六八)没。

「2021年 『愛猿記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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