コンクールでお会いしましょう: 名演に飽きた時代の原点 (中公文庫 な 27-3)
- 中央公論新社 (2006年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122047747
作品紹介・あらすじ
この「豊かな社会」、常に新しい刺激が求められる現代にあって、今なぜ世界中でクラシック音楽のピアノコンクールがさかんなのか。その百年にわたる光と影を語って、クラシック音楽の感動の原点を探り、その未来のあり方を考える。
感想・レビュー・書評
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良書。音楽の価値が、いかに社会の変革とともに変わってきたかがよく分かる。中流階級の興隆、レコード等の技術革新、物質的豊かさの追求とその陰に霞む芸術活動、細分化される観客の好み等々。
クラシック音楽に限らず、あらゆる鑑賞活動に援用できる視座を与えてくれる一冊。音楽そのものではなく、それに付随する演奏者の人生といったプラスαに現代社会は熱狂しているとの見方は、スポーツにも通じると思う。
グレングールドがレコード技術を駆使してミスなき名演を追求したことは、こうした時代の流れに対する反発だったのだなぁと思った。音楽そのものを楽しんでほしいという思いは中村紘子と同じなのに、ライブ演奏を重視する中村紘子と、グールドの対照的なアプローチは印象的。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おもしろかった。
でも、読む順番を間違えた。
これから「チャイコフスキー・コンクール」を読みます。 -
2010年10月31日購入
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ピアノを弾くのが本業の著者ですが、エッセイの文章も流れというか調子があってとても読みやすい。
さまざまなコンクールのエピソードは、あれやこれやの小説やコミックでのこれが元ネタね、と楽しい。 -
大ピアニスト、中村紘子さまのピアノコンクールに関するエッセイである。
なんかこのままNHKの番組にできるなと思ったら、本当にNHKの番組でしたww NHKの「人間講座」の「国際コンクールの光と影」っていうので放送したものをまとめたものだって。
微妙。
確かに、すごくよくできてる。
音楽(ピアノ)コンクールの歴史から、今日的な問題まで、教養としておさえるものはきちんと網羅している。
でもな…。
とはいえ、中村紘子の上品なんだけど、毒、っていうスタイルはあちこちにあるので、とりあえずそれを堪能しておく。
ホント、第一線で活躍し続けるってことは、並みの精神力じゃできないよ、っていうのが彼女の文章からにじみ出てるよ。
えーーーっとくさしてるようですが、そんなことないですよ。
音楽はあまり知りませんって方が読んでも、とっても楽しめます。
ま、私は中村紘子のエッセイには、バラのとげのような、もしくはスズランの毒のようなものを期待しているので、それが肩透かしだっただけ。
にしても、この放送があったのが2003年だったらしい。
中村紘子的には、ブーニンはどう聞いたのか、そこんところ語って欲しかったな。彼こそが、ソ連からロシアへの体制の変化と、コンクールの社会的意味が変革していく、その狭間でのショパンコンクール優勝者だっただし、相当画期的な解釈で弾いたのだから。 -
コンクールではどういうことが行われているのか。”一位なしの二位”ってどういうことなのか。コンクール入賞=スターへの道なのか、などなど、ちょっと興味あるけど誰も教えてくれなかったことを教えてもらいました。ピアノ曲はほとんど聴かないし、ピアニストの名前なんて数名しか知らないという私でも(…バレンボイムがピアニストだなんて初めて知りました)、十分に楽しめました。
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「チャイコフスキーコンクール」でもそうだったが、この作者のエッセイ?は、興味深い内容を扱ってはいるのだが、文が端正すぎる、毒のない平板な印象を与えるもので、「再読したい」という気分にならない。
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数々の国際コンクール審査員として長年携わってきた著者が綴る、
珠玉の音楽コンクール論。
そもそも「芸術に点数をつける」ことが内包する矛盾や不条理を、
事例を交えながら展開しつつ、それでもコンクールなしには成立
しない現代のクラシック音楽業界の現状も浮き彫りにするあたり、
通り一遍等のエッセイからはかけ離れた優れた評論といえます。
音楽コンクールについてまさしく「酸いも甘いも噛み分けた」
からこそ到達できる達観にも似た「コンクールの楽しみ方」が
提案されていますので参考にしてみては。