- Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122057173
作品紹介・あらすじ
三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。「本当に悪いのは誰?」はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か?そもそも答えは存在するの?面白くて考えさせられる、伊坂エンターテインメントの集大成。
感想・レビュー・書評
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相変わらず、設定がいい意味でハチャメチャで、読んでいると、置いてけぼりにされてしまう。
「私の話」と、「猿の話」を繰り返しながら、「猿の話」ってなんやねん、とツッコミを入れたくなるけれど、急に、洞窟を抜け出したときのように、視界が開けてくる。
話の中でハッと気付かされる登場人物の言葉。今回も、それらに突き動かされる。
『「それこそが作り話の効力よ。物語は、時々、人を救うんだから」』(kindle P180)
良薬は口に苦しというけれども、伊坂氏の散りばめた言葉の処方箋は、苦味なく、深く深く、患部に届いていく。
不思議なタイトル、考えさせられる内容に、一気に引き込まれました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021(R3)5.11-6.3
図書館の2週間の貸出期間では読み切れず、さらに延長してようやく読み終えた。
「私の話」と「猿の話」が交互に出てくる構成。
どちらも淡々と進んでいく感じは伊坂作品らしく、最後の伏線回収を期待して読み進める。
しかし、「猿の話」が荒唐無稽な展開になり、ついていけなくなる自分に「理解できない自分に読解力がないからだ。」と言い聞かせるも、訳が分からない。
最後にそのカラクリが明らかになるものの、やっぱり訳が分からなかった。
主題のキーワードは「因果関係」な気がするが、「なんだかよく分からなかった」というのが正直な感想。
伊坂幸太郎のレトリックと、心理学と孫悟空の知識についていけない自分への評価として星2つとしました。 -
伊坂幸太郎 著
「また妙な小説を書いたものだな」って解説でも記されてた通り…妙な小説だったが、結構面白く読めた。
「SOSの猿」ってタイトルから、はてな?って感じだったし、伊坂幸太郎さんって こんな感じの小説も書くんだって
やけに感心してしまいました。
猿から始まり…エクソシストやらユングの心理学 そして
ひきこもりの社会的な事柄までにも結び付けており、そしてまた「西遊記」孫悟空まで飛び出すとは…何だか 楽しい
こんな妙な展開の中で きっちり 伏線を回収する 流石!
「私の話」と「猿の話」語り手も状況設定も異なってる話が 調和されてゆく 勿論 他の色々な作家さんが 2つの物語を同時進行させながら 関係を持ち、結びつけたりして収束するっていうのは よくありますが…伊坂幸太郎さんの作品はかけ離れているような次元の2つの物語を本当に心地よく調和してゆくところが とても好きだなぁと思う。
何だか、気になったのは「誰かを救ってあげたい、というこだわりで、それは、自分自身の存在価値を証明したい、という弱さから生まれているらしくて(メサイアコンプレックス)」え!なるほど…そうなのかもしれない なんて 思わず、自分に当てはめて考えてしまった(>_>)
そこには 大きく触れないで キーボードで打ってみて、何だか大仰だなぁ、と思った そしてその文章を消し…とあり、
そんな作者の心配りがいいなぁって感じた 誰かを救いたい とか思う気持ちにあまり意味付けをしても仕方ない。
救いたいと思える気持ちは救えるかどうかってことより 純粋に そう感じられることが人間らしいし、そうそう弱くてもいいのよ なんて勝手に納得して読み終えた。 -
H29.11.30 読了。
・悪魔祓いの副職をしている「私の話」と証券会社で何百億円の損失の原因調査する「猿の話」で構成されている。
最後までぼんやりしたスッキリしない話で、あまり面白くなかった。 -
すごく奇想天外な物語!
孫悟空がもっともっと活躍するのかと思いきや、ぬるっと現れてそして消えていくという、なんとも煮えきらない孫悟空。なのに、不思議と物足りない感はなく結構な存在感。孫悟空としてのパーソナリティ(?)にはほとんど言及はないのは個人の持つイメージで補わせるというところなんだと思う。
原因の原因をもとめていく、という軸がおもしろかった。 -
「この本は嵐だ」と評される本作。世界観は「オーデュボンの祈り」や「あるキング」に近く感じる。感受性の豊かな青年が人の発するSOSを感じ思い悩む姿は、何となく自分と重なる気もした。漠然と人の役に立ちたい。と思った中学生の頃の僕は医療従事者として人のためになる仕事を選んでいる。
「SOSを発している人間を救えないと嘆いているが、そうではなく、キャッチしているだけでも十分、救いになっている。そうは思わないか。」
「家族以外の第三者が、利害関係のない誰かが、『良くなりますように』と祈ることは、誰かを助けたいと思うことは、ひどいことではないはずだから。悪いことではない。」
どこか救われた気持ちになった。
「人の気持ちを文章化しにくい。本人にだって、難しい。強いて言うには、気持ちを表現するには、絵とかじゃないかな。」
ただ絵心のない僕はどこか救われない気持ちになった。 -
『物語は、語り手が喋ればそれが真実となる』
「魂の救済」「物語は人を救う」
「暴力は必ず悪か」「善と悪の拮抗」
テーマはこの4つ。
伊坂幸太郎ファンの中でも賛否が分かれる作品だが、私はテーマそのものが好きだった。
「どうしても分かんないことは頭の中で物語を作って、それで納得するのよ。それで救われる。」
西遊記とエクソシストとひきこもりという突拍子もないパーツが、このテーマの中でどう絡み合っていくのか、その面白さに注目。
これをきっかけに西遊記に興味が湧き本を買ってしまった。