- Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122060395
作品紹介・あらすじ
インドで消息を絶った兄が残した「智慧の書」。不思議な力を放つその書に導かれ、隆は自らもインドへと旅立った…。ウパニシャッドからショーペンハウアー、そして現代へ。ムガル帝国の皇子や革命期フランスの学者が時空を超えて結実させた哲学の神髄に迫る、壮大な物語。『不滅の書』を改題。
感想・レビュー・書評
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萩耿介『イモータル』中公文庫。
この作品も以前から本屋で山積みになっていて非常に気になっていた。最近、近所の古本屋の百円文庫コーナーで発見し、購入。
現代と過去、宗教と哲学が交錯する難解混沌混迷の物語。確かにスケールは大きいが、小説として昇華し切れていない感じがした。つまりは面白くないということなのだが。学生時代に講義を受けたインド哲学を思い出す。
大手不動産会社に勤める滝川隆は嫌な雰囲気の職場に鬱屈とした日々を過ごしていた。隆の高校時代にインドで消息を経った兄が残した『智慧の書』が持つ不思議な力に導かれ、隆は兄の姿を求めてインドへと向かう。自分は一体何者なのか……
現代よりも、過去の『智慧の書』の生い立ちを巡る物語の方が圧倒的にボリュームが多い。
『不滅の書』の改題・文庫化。
本体価格820円(古本110円)
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宗教 哲学 歴史
主人公の男性がインドで亡くなった兄の謎を探る旅にでる。そして残された『智慧の書』をめぐり、執筆したムガル帝国の皇子のストーリー、フランス革命の時期に翻訳をした学者のストーリーの構成になっています。
現在ではなく過去の話の方がボリュームがあります。
私には難しく全てを理解した訳ではないが、宗教や哲学、歴史に触れられて神秘的な気持ちになりました。
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本が旅をするという話を聞いたことがある。
バックパッカーが世界中を旅しながらお互いに本を交換する。ある本は日本からインドに渡り、フランスへと旅する。いつか誰かの手によって日本に舞い戻ったりする。
イモータルは『智慧の書』の時空を超えた旅の話だ。
ガンジスの世界観は遠藤周作の『深い河』も想起させる。 -
世俗の争いに紛れて、途絶えそうになった知の系譜が奇跡的に受け継がれる。ロマンティックです。
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読書録「イモータル」3
著者 萩耿介
出版 中央公論新社
p20より引用
“ わからなかった。真剣に生きた人なら、
もう一度人生を求めるのではないか。前向き
な姿勢は変わらないはずだからだ。しかし、
すぐに気づいた。この世の悪意にさらされな
がらも真剣に生きた人は十分に疲れている。
長い戦いを終え、憔悴しきっている。だから
二度と人生を求めることはないのだと。”
目次より抜粋引用
“扉
言葉
予感
信頼
憧れ”
時代を越えて伝え続けられる伝承と、それ
を後世に残すために尽力した人々を描いた長
編小説。同社刊行作「不滅の書」改題・改稿
文庫版。
十五年以上前にインドで行方不明となった
兄の足跡を追い、インドに入国した隆。兄は
何を考え消息を絶ったのか、自身の悩み苦し
みとも混じり合った感情と共に、答えを探し
て動く…。
上記の引用は、主人公・隆の兄が残した「智
慧の書」の中の、赤線が引いてある場所につ
いての一節。“「思慮深く誠実な人は、その
生涯の終わりに際して自分の人生をもう一度
繰り返したいとは決して望まないだろう」”
という部分に引いてあったとのこと。やり直
したい繰り返したいと、最後の時に思わずに
いられるように、精一杯日々を過ごしたいも
のです。
主人公は一応現代人の隆なのでしょうか、
「智慧の書」を現代まで繋げてきた人たちに
ついての描写が多いので、主人公と言ってい
いかわかりません。
時間も場所もあちこちに飛ぶので、読みにく
く思われます。かといって、時系列順に並ん
でいたら、それはそれで面白くないのでしょ
うね。
この作品を本当に楽しむには、わたしの知
識は足りていないように思います。歴史・哲
学に造詣が深い人が読まれれば、もっと評価
の高い作品ではないでしょうか。
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時空を超えて旅をする壮大な物語。ただ、哲学の神髄に迫る話ではなかったと思う。