大東亜戦争肯定論 (中公文庫 は 68-1)

著者 :
  • 中央公論新社
3.25
  • (1)
  • (4)
  • (5)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 115
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122060401

作品紹介・あらすじ

戦争を賛美する危険な暴論か?敗戦恐怖症を克服する叡智の書か?幕末から終戦までを「東亜百年戦争」として捉えた視点は、歴史の連続性という重要な見方を示唆しながら、禍々しい光を放ってやまない。「中央公論」誌上発表から五十有余年、当時の論壇を震撼させた「禁断の論考」の真価を現在に問う!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いつか読まなければとは思っていたが、大部であることと、昨今の「右傾化」を反映してか手頃な類書が巷に出回り始めたこともあり、今まで読まずに済ませてきた。今年は敗戦70周年を迎える。先の戦争を改めて問い直す試みがいろんな形で行われるだろうが、本書の再刊もその機縁となるだろう。出版当時はかなり物議を醸したそうだが、今読むと過激さは微塵も感じられない。むしろ中国や韓国のナショナリズムへのナイーブな贖罪意識が見え隠れするのが意外ですらある。

    大東亜戦争は幕末以来の西力東漸への対抗としての正当なナショナリズムの発露である。それが中国を始めとするアジア諸国のナショナリズムとの不可避的な矛盾・対立を惹起し、その前に志半ばで挫折した。挫折の要因の一つには、大アジア主義、或いは王道楽土の理想を貫徹できなかったことがあるが、それがパワーポリティクス渦巻く歴史の現実というものであり、後知恵で裁くことはできない。大体こういう内容である。

    戦勝国の一方的な歴史観に鉄槌を下した功績は多とするも、大上段の書名に期待した現在の読者はやや肩透かしを食らうかも知れない。対米戦争が止むに止まれぬ自衛戦争であったことはもはや常識になりつつある。結果的にであれ、アジアの植民地解放に果たした役割についても誰も異論はない。残るは中韓との関係だが、この点さすがの著者も歯切れが悪い。思うに、彼らのナショナリズムなるものが、果たして著者が暗に想定するような健康な民族精神の発露であったのかどうか。所詮は国内の権力闘争が列強を利用し、また利用されただけではないのか。真のナショナリズムが両国に育たなかったことこそ、日中、日韓の悲劇の根源ではないのだろうか。この点だけを言い募るのは手前勝手な理屈になるが、それ抜きにあの戦争を語ることもまたできないはずだ。

    こうした疑問は残るものの、本書の白眉は同時代史としての迫力である。著者は本書に登場する軍人、民間人の幾人かと直接交流を持ち、その空気を肌で感じている。満州国建設に関わった日満の民間人のエピソードを通じて分かるのは、彼らが王道楽土の理想に捧げた情熱が疑いなく真実であるということだ。それだけに、それが現実の荒波の中で覇道政治に転化せざるを得なかった歴史を踏まえるならば、覇道を求める旧いナショナリズムとそうでない新しいナショナリズムは区別できるものでなく、前者の悪魔を見ずに後者に性急に肩入れする軽挙を慎めとの指摘は重い。

  • 再読。「東亜百年戦争」という捉え方は面白いですね。内容は穏健です。決して過激な書ではありません。この本に記載されている中共やソ連についての記述を今読むと、予言書のようです。ナショナリズムについての言及は秀逸です。

  • 林房雄が1963年~1965年にかけて「中央公論」に連載した同名記事をまとめたもの。本書では、大東亜戦争の開始を1845年の幕末まで遡り、日清・日露・日支戦争などを含む1945年までの100年間に起きた戦争を、アジアを代表する日本の西欧勢力の東漸に対する反撃として「大東亜百年戦争」とし、本質は解放戦争であると主張しました。言われているほど、突拍子もないことを主張しているわけではないと感じました。内容とは別にして、当時を生きていた人たちの考えを直接読めるのは良い。

  • 2015.05.22 池田信夫ブログより。

  • 読書会の課題本。自分では決して手に取らない題名の本。

    著者は敗戦により卑屈になった日本人へ、少しでも前向きにプライドを持てるように書いた。

    幕末の頃からの諸外国が日本から搾取しようと長年虎視眈々と策略を巡らして、ついに第二次世界大戦で日本を敗戦国として目標を達成した、とも読み取れる。
    敗戦後の日本はアメリカを始め世界各国から搾取され続けている。
    断れずお金を出し続けている。

    第一次世界大戦後の日本の振る舞い方では連合国側にいられた可能性もある。
    当時の政治家や軍人の能力不足が哀しい。
    かじ取り一つで大きく変わってしまう恐ろしさを感じた。

  • 歴史を見据える小説家の眼が「東亜百年戦争」を捉えた。私はつい先日気づいたのだが、ペリーの黒船出航(1852年)からGHQの占領終了(1952年)までがぴったり100年となる。日本が近代化という大波の中で溺れそうになりながらも、足掻き、もがいた100年であった。作家の鋭い眼光に畏怖の念を覚える。しかも堂々と月刊誌に連載したのは、反論を受け止める勇気を持ち合わせていた証拠であろう。連載当時の安保闘争があれほどの盛り上がりを見せたのも「反米」という軸で結束していたためと思われる。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/08/blog-post_7.html

  • P.320まで読了。先は長い

全7件中 1 - 7件を表示

林房雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×