- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122060791
感想・レビュー・書評
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食べものがテーマのはずだけれど食べもののことがほとんどでてこない川上未映子さんのエッセイシーリズ第二弾。今回もまた選ばれた言葉と表現とリズムの奔流に身を委ね切って。
「ぼくのおかあさん」と題された文章では、薄暮れが降りてくる中にお母さんを待ち続けるお兄ちゃんと妹、関西弁で声をかけてお菓子をあげる未映子さん。たまらなくって胸をぎゅうとつかまれた。
我慢の三連休とはなんぞや、アクアラインで渋滞につかまったバスの車内でさいごまで読み耽った。遥かな気持ちになってふと窓に顔を向けると海は、どこまでも真っ暗で。ぽっかり浮かんだ半月はぴたりとついてくる。娘も夫もそのほかの乗客もみな眠っている。魔法飛行。それぞれの冬の、たったひとつの冬の記念に。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
川上未映子さんの文章は浮遊感がある。本書はエッセイだけど、小説と同じように何処かに連れていかれるような不思議な読み心地だ。旦那さんは作家の阿部和重さんでなんてオシャレな…と初めて知ったとき痺れた。たまに猛烈に読みたくなる川上作品。タイトルまでもオシャレなんだからセンスの塊みたいだなと常々思っている。
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急に摂取したくなる作家さん。
食にあまり興味がないのかなとおもう。
ふわふわとドラえもんのように数センチ浮きながら歩いているような、日常。
こどもを生むと大人もまた生まれ変わるという考えかた、すきだな。親が子どもと幼少期の体験を一緒にすることで子どもになる瞬間があるのかしら。 -
川上未映子さんのエッセイ。
エッセイという気分ではなかったのだけど、この人のエッセイってどんなんだろう?という素朴な疑問が私を動かした結果。
小説は、すごくすごく繊細な語彙が世界を作り上げているけれど、同じ語彙を用いているのに何だか石に躓いてこけてしまいそうな間がある。
川上未映子さんの目は、何気ないことに一喜一憂している感じがする。それも一人であれこれと。
料理にこんな奮闘している作家さんはいるのかと思いながら、出来た料理が美味しくても、レシピ通りに作って美味しくても自分がそこにはいない、と思ったり。
夕暮れ時に母をまつ兄妹が、泣いて宥めてしているのを見て、コンビニでお菓子買ってきて一緒に食べちゃったり。
そういう姿は、なんだか身近で、でもきっとどこかにあの仕事スイッチがあるんだろうな、と思ったりもして。
文体も、エッセイとなるとやや読みにくかったりもするんだけど、小説になるとすごく魅力的になったりして。
とりあえず私も、カルボナーラ作ってみるかな、と思うような優しい力をもらえた。 -
川上未映子が食べ物を作るところや食べるところを書いていても、食べ物が美味しそうと思わない、取り留めない思考の草原に引き込まれるだけなのだけど、そこも、好き。乳と卵に使わなかったシーンを読めたのも、よかった。
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今の時期が夏なので、夏のテーマのエッセイだけ読んだ。子供の頃の夏の記憶が大好きで戻りたいところとか、川上未映子さんと感覚似てるかもって思った。だから好きなのかもって。
川上未映子さんのエッセイはちょこちょこ読むのが好き。 -
川上未映子が1日3回スパゲッティを食べているだけでとても嬉しくなる
「観察をつづける」、もちろん書く人としての、とても真摯でごまかさない姿勢を感じるけれど
年齢とともにシフトしていくの共感
「学ぶ」ことはあくまでその時点での自分にとってのアンサーでしかないから、その時起こったこと、感じたこと、翻ったこと、自分はちゃんと観察したのか、そこを怠ることこそがどこか恥であるかのような、そんな自意識と戦う日々。。 -
「ーー思いすぎると足が痛く、思いですぎると独りになって、薄暮はゆくーーあんな青、黄色だって青になる、何度だって笑ってしまう」
これは1冊目「発光地帯」の続編になっている。"一応"食のエッセイ。魅力的な散文詩もあれば、詩もあり言葉を紡ぐことを楽しんでいるような著者に出会える。 -
エッセイ発光地帯の続編。目次を読むだけで詩的。
公園でお母さんの帰りを待つ兄妹の話、「ぼくのお母さん」がとても印象的だった。川上未映子さんの子供達への接し方が素敵。
エッセイの中で直接は触れていないけれど、幼少期時代の母親という存在が、大人になった今でも、自身にかなり大きく影響しているのだなぁって思う。
考え方や感じ方が、とても自分と似通っていて、それを文章として表現してくれるので、どこか安心してしまう。
文字の羅列を解読したくなるような、いや、そのまま受け止めたくなるような。
「しかし世界には信じられないくらいにエレガントな音楽が絶えず流れつづけていること」で、阿部和重『シンセミア』について、"世界はこんなにもどうしようもないのに、誰も彼も本当にもうどうしようもないのに、しかし世界には、信じられないくらいにエレガントで、生まれてこなければ聴くことも叶わなかった素晴らしい音楽が欲望と叫びと崩壊とともに絶えず流れつづけていることを、そしてそこに「人間」がいる限りそれは決して鳴り止まないのだということを無言で差し出してくれる。”
と書かれてて、大切な人を喪ったことを私も一緒に思い出した。