テミスの求刑 (中公文庫 た 81-5)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122064416

感想・レビュー・書評

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  • 「城山事件」
    連続放火殺人事件の容疑者、城山柳太朗を担当した検察は冤罪を恐れ彼を不起訴とする。その後釈放された城山は自宅に放火、実の弟を殺害した。
    その責任を取り検事を辞めることを決めた一人の男の視点で短いプロローグは締められる。冤罪と正義のお話の幕開けだ。
    ーーーーーーーーーーーーーーー
    場面は変わる。
    被疑者と検事のやり取りを記録し弁解録取書を作り上げる、立会事務官として働く平川星利菜。担当している検事、田島亮二は検察庁のNO.3、三席の立場であり被疑者の自白を取るプロだった。
    星利菜の父は過去、警察署勤務だったのだが取り調べをした少年に撲殺される。その少年 、沢登健太郎の自白を取ったのが田島亮二。しかし彼は冤罪を訴え拘置所にて自殺した。
    そして当時彼を弁護していた黒宮が事件を洗い直し、真犯人の目星が付いたことを匂わせた頃、何者かに殺害される。現場に残された監視カメラの映像には血塗れの服と凶器を持ち鬼の形相でその場を離れる田島亮二の姿だった。
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    沢登健太郎が起こした過去の事件であるはずの星利菜の父の撲殺事件。沢登が悲痛な想いを書き残した遺書に対して星利菜は「犯人性はシロ」と感じる。しかし、もし冤罪なら自分の怒りの意義が失われてしまう。無実の人間を罵倒し自殺に追いやったのならば、私も人殺しではないか。
    過去の事件の繋がりに動揺を隠せない彼女だったが、現在進行形で問題なのは田島亮二の行方だ。彼も冤罪を訴えていた。そして星利菜は田島に対しても「犯人性はシロ」と考えてしまう。
    そして星利菜は、田島の代役として呼ばれた変人エリート検事滝川要とこの事件を担当することとなる。
    ーーーーーーーーーーーーーーー
    うぅむ、無難に面白かったのだが、、
    折角、田島と星利菜を初めとした主要人物達の鬼気迫る感情がとても面白いのに、お後にわざわざ丁寧に説明を入れる誘導尋問な文体が好みではなかった。そんなに読者を疑わないで。想像させて。
    文章に対してどこか神経質さを感じる。

    区切りに使われる天候の移り変わりもよく分からない。意図がつかめない。星利菜の感情を表しているのかと思ったが、結局何にもリンクしなかった。
    何より鴻池先輩の存在と、村上刑事の無慈悲過ぎるバッドエンドは必要だろうか。私はこの二人が好きだったぞ。脇役では終わらない何かを感じていたんだぞ....。

    ストーリーが飛躍してる部分が多かったので内容はエンタメとして無難に楽しんでいた分、心理描写に期待し過ぎてしまったのやもしれない。
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    「見所まとめ」
    過去の事件が発端となった前代未聞の弁護士殺人事件の真相と、星利菜の父を殺した真犯人の正体は。正義と冤罪のジレンマがエピローグにて繋がる。

    しかし、期待値を越える事は無いだろう。

  • 面白かった
    テーマは冤罪、正義、そして、償い

    優秀な検事の田島の元で働く検察事務官の星利菜。
    星利菜の父親は警察管でしたが、何者かに殺され、その犯人として捕らえられたのが沢登健太郎。その事件を立件したのが田島でしたが、沢登は冤罪を訴え拘置所にて自殺。
    そして弁護士の黒宮はその当時の事件の真相に迫った最中、何者かに殺害され、その現場付近の監視カメラには大型ナイフと血塗れの服をきた田島の姿が..

    逮捕された田島は何者かに嵌められたと、冤罪を主張。
    しかし、肝心なことは黙秘。
    起訴され、法廷でその真相を明らかにしていくことになります。

    現場でいったい何が起きていたのか?
    田島は犯人なのか?
    沢登健太郎の事件は冤罪だったのか?

    といった展開です

    被害者遺族でもある星利菜の複雑な思い
    田島の想い
    過去事件が冤罪なのか、それが、今の事件にどう絡むのか、そして、法廷で最後の最後で明らかになった事件の真相ということで、とてもスッキリ。

    お勧めです

  • 「テミス」続き。
    本書は法廷ミステリーそのもの。
    殺人容疑で指名手配された検事。彼の無罪を信じながらも、確信が持てない検察事務官。
    もどかしい前半に対し、逃走の果てに逮捕された後半は一気呵成。
    起訴された検事は無実を訴えながらも、一部を黙秘する。地検エースと言われる検事と、敏腕弁護士が法廷で対決する。
    何が真実で、真犯人は誰なのか、一連の出来事の底に流れるのは、過去の冤罪事件。
    二転三転する法廷劇に、読み手も翻弄される。

  • アマゾンプライムで途中までみて
    原作本を読んでみた。
    冤罪をテーマにした小説だが、
    もう少し深みが欲しかった。
    さらっと読めた。

  • 久しぶりに活字を読む時間ができたので。主人公が自分と同じ働く女子なので、感情移入はできました。田島のことを信じたいのに信じられない揺らぐ気持ち、窓を開けるか開けないかの決断する時の狂いそうなくらいの悩みが想像にたやすく、せりなちゃんと一緒に頭を抱えていました。
    大どんでん返し!!ってわけではなかったけど、最後にたどりついた答えと、最後の田島さんの自白は真犯人の胸を思って涙が出るほど悲しかった。
    出だしから田島側!って思ってましたか、飄々とした掴みどころのない最強検事滝川とイケメン秀才深町弁護士のバトルもっと見たい。
    とても面白かったです。

  • 立会い事務官の平川 星利菜の視点を主とした法廷ミステリー。
    殺人現場の付近の監視カメラが捉えたのは、大型ナイフを手にした血まみれの検事・田島の姿であった。
    果たして、本当に田島検事は、真犯人なのか?

    後半に続く法廷の場面に、ややストーリーの難解さを感じました。
    もう少し、スッキリさせても良かったのでは?

  • 検察官の人間ドラマ。冤罪だったとわかったときの検察官の苦悩を余すことなく描いている。
    ただし、少し迫力不足か?読みやすいのだが、心に響くものが少ない。

  • 他の方のレビューでも書かれていたが1つの事件だけでなく過去の事件や色々な登場人物の犯した罪が立体的に繋がっているのが見事であった。大きなどんでん返しはないもののしっかり1つ1つの真実が明らかになっていったと思う。
    途中で過去の事件の真犯人があっさり判明したので、この後どのように終結していくのか楽しみでもあった。
    検察事務官と被害者家族として揺れ動く星利菜の心情もよく表現されていたと思う。

  • 大門剛明『テミスの求刑』中公文庫。

    これまでに読んだ大門剛明作品の中では並以下だろう。かなり込み入った法廷ミステリーなのだが、その結末に何の感情も湧いて来なかった。一つの事件を余りにもこねくり回し過ぎたことが原因だろうか。

    殺人現場の監視カメラに映った敏腕検事・田島の衝撃の姿。田島の元で働いていた検察事務官・星利菜は事件の真相を調査するうちに自分の父親の死の真相へと近付いて行く…

    書店員や文芸評論家がよくぞ、この作品に賛辞を送ったものだと感心する。

  • 星利菜が最後に思う、「本当に優れた検事や弁護士とは、勝つとか負けるとかではない。事件関係者を少しでも幸せにする者ではないだろうか」が、印象に残った。

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著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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