- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122064430
感想・レビュー・書評
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多分、最初に読んだのは中学生の頃だと思う。
きょう、奈良の「ふうせんかずら」で発見して嬉しくなったので、即決で入手した。
冒頭の正宗白鳥先生との思い出が、とにかく面白い。
名前が白鳥だけど庭に池がないとか、同時代に活躍中の作家について「その人は今生きている人ですか」と尋ねて先生に教わったりといろいろ(本人的には)まずいこといっちゃったなあという思い出が淡々とつづられている。
読んでいると、深沢さんという人は、自分も含めて周囲の人をみんな好ましく思っていて、とにかく人間が好きなんだな、と思う。
新潮社のサイトでプロフィールをみると、戦前から活躍するギタリストでもあり、1960年に『風流夢譚』がテロ事件を誘発し、放浪生活をしばらくしていたようでもある。
文庫版あとがきにもその放浪が北海道まで及び、浜辺でハマナスの花びらをむしっていたという文章が別の作品になっていると紹介されていた。
それを知って読むと、単に面白いというだけでは足りない、何かを感じるような気がする。
後半のポルカという題名の短編集が独特な味わいだった。文章にリズムがあり、まさにポルカ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小川洋子さんの対談本で『みちのくの人形たち』に興味を持って読んで、勢いで『楢山節考』を読んだあと、なぜかたまたま読んだ無関係な本に深沢七郎の名前が出てくることが多くて(篠原勝之の『骨風』、松田青子の『スタッキング可能』)なにこれシンクロニシティ?と密かに思っていたのだけど、そのときから気になっていたエッセイをやっと読みました。
およそ作家らしくない、気取ったところもなく、難しい文学の話も興味のない、どちらかというと「ちょっと変な人」な筆者のキャラに妙に親近感が沸く。実存主義がわからなくて、いろんな人に質問するもよくわからなくてさらに混乱しちゃうあたりとか、こういう言葉を使っていいか微妙だけれどいっそ「可愛い」とすら思ってしまう。
正宗白鳥、石坂洋次郎、伊藤整、武田泰淳、井伏鱒二ら当時の文壇の錚々たる面々に、遠慮してるわりには気軽に(あるいは図々しく)訪問し、うっかりおバカ発言をしてはすぐさま「言わなければよかった」と後悔してしまうあたり、もちろん自ら戯画化しているのだろうけど、くすっと笑ってしまいながらも、その気持ちわかるわかる、と共感できる。
なんやかんやでエライ作家の先生たちのほうもそういう筆者の文壇擦れしていないところを、素直で微笑ましい、と思ってくれているから嫌われず、いつでも会って話してくれたのでしょう。意外なところでは石原慎太郎との交流が面白かった。現代のわれわれが思う姿とは当時は違って、癖は強いけど悪い人じゃない感じ。
巻末の武田百合子との対談を読む限りでは女性にモテなさそうな発言が多いけれど、何度もお見合いに失敗する話などは自身をあえて愚かに、滑稽に描いてあってくすっと笑ってしまう。プレスリーを神様だと言い、キリストと同レベルで語るのも私は正論だと思った。自分の魂を救ってくれるものを神様だというなら、アイドルだってミュージシャンだって作家だって当人にとっては神様だもの。(私だって萩尾望都を神様だと思っている!)
前述、松田青子の『スタッキング可能』で登場人物の一人がこの本を読み「長い間友達だと思い込んでいた実際の友人たちよりもずっと、もうこの世にいない、一度もあったことのないおっさん」のほうが自分の気持ちをわかってくれていた、と思うくだりがとても好きで、作家としては後世の会ったこともない読者にそう思われることが本望な気がする。そしてすべての素晴らしい本は、読者にそう思わせるからこそ読み継がれているんだろうな。
※収録
言わなければよかったのに日記/とてもじゃないけど日記/銘木さがし/変な人だと言われちゃった日記/ないしょ話/柞葉の母/思い出多き女おッ母さん/思い出多き女おきん/こわい話/母校訪問/ささやき記/十五のポルカ/解説:尾辻克彦/対談:武田百合子×深沢七郎「男と女のまな板ショー」 -
私自身が「言わなければよかった‥」と後悔すること度々のため、タイトルに惹かれて購入。
えっ!?と驚かされ、爆笑エピソード満載の日記であった。
飾らない愉快な人柄が伝わってきた。
自分の思うがままに少々奇怪?な行動をとっても、文壇の諸先生に可愛がられ、交遊範囲の広さに、才能ある深沢氏を羨ましく感じた。
ん~と考えさせられたり、そうだよな~と気付かされた「15のポルカ」も不思議な世界であった。 -
おもろくて、可愛くて、めっちゃ阿保で、ちょっと泣ける。最高の文章、、、。
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1
読み始めは純粋な感じが面白いと思ったけれどあまりにもパターンが同じすぎてつまらなくなった。
無知な自分を自虐するのもつまらない。田舎から東京に出てきた芋感が抜けきらない。本気で作家になるつもりなのかどうかも分からない。軽んじているのかなんなのか。どうも面白くない。
2
なんだかこの人の女の見方がいやだ。
3
話の描きぶりがやっぱり面白くない。途中で読むのが苦になってきて、止めてしまった。
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軽めのエッセイである。抱腹絶倒とかいてあるけど、さほどおかしいことはない印象。最後の武田百合子さんとの対談も雑談以上のものはなかった。
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小説「楢山節考」でデビューした著者が、武田泰淳、正宗白鳥ら畏敬する作家との交流を綴る文壇日記。巻末に武田百合子との対談を付す。〈解説〉尾辻克彦