- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122064454
感想・レビュー・書評
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中公文庫 「五つの証言」
トーマスマン 渡辺一夫 らが 戦争や暴力が 人間の本質である精神の自由や寛容を奪うことに対して、文学者として 抗議した文書集。ユマニスム(ヒューマニズム)という理想に基づいて抗議している
戦争そのものより上昇して権力に到達した大衆を批判したトーマスマン「ヨーロッパに告ぐ」は 温厚的なユマニスムのイメージを変える。狂信主義に阻害されないために 戦闘的ユマニスムという言葉が出てくる
「専門外のことにも耳を傾けてこそ、専門の奴隷にならずにすむし、機械にならないですむ」という言葉が印象に残る
「ヨーロッパに告ぐ」
戦争のために物質的および精神的に際限のない荒廃が生じた〜文化の失格は大衆の上昇と権力への到達にある
渡辺一夫「文法学者も戦争を呪詛し得ることについて」
血みどろの理想は 理想ではない〜生存競争、弱肉強食の法則を是正し、人類の文化遺産の継承を行うのが、人間の根本倫理である
渡辺一夫「人間が機械になることは避けられないものであろうか?」
自分の専門研究が人間社会、人間文化において占める位置について常に反省し、専門外のことにも耳を傾けてこそ、専門の奴隷にならずにすむし、機械にならないですむ
やむを得ぬ戦争という概念に捕らわれるより、戦争は罪悪というイドーラに捕らわれる方が、はるかに人間的である
人間の利便幸福のためにつくられたものが、多くの人間を不幸にするところまで硬化した以上、進んでこの制度を変えるか、棄てるかしなければならない。人間がこの制度の奴隷となって、この制度の必然的結末である戦争まで起こすことは 笑うべき愚挙である
ヒューマニズムとは、人間の機械化から人間を擁護する人間の思想である
渡辺一夫「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」
結論は〜寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容たるべきではない
寛容と不寛容の問題は〜人間性をお互い想定できる人間同士の間のことであって、猛獣対人間、天災対人間の場合は論外
秩序は守られなければならず、秩序
をみだす人々に対しては、社会的制裁を加えてしかるべきであるが、その制裁は、あくまで人間的でなければならない
寛容の武器としては、ただ説得と自己反省しかないのである〜寛容は不寛容に対するとき、常に無力であり、敗れ去るものである〜不寛容な人々に対しては、説得のチャンスが皆無ではない
不寛容に報いるために不寛容を以ってすることは、寛容の自殺であり、不寛容を拡大させるにすぎない
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