僕とおじさんの朝ごはん (中公文庫 か 85-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122064744

作品紹介・あらすじ

無気力に生きるケータリング業者の水島健一。先輩の忠告も、派遣先で問われる不可解な薬の存在も軽く受け流してきたのだが、ある少年と出会い、それらと真面目にかかわらざるを得なくなる――。少年が最後に下した決断に、水島はどう向き合うのか! 傑作感動長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の目玉焼きが美味しそうという理由で
    何の気なしに手に取った本だけど、
    ぐっと心掴まれる作品でした。

    何よりおじさんのキャラクターがとても良い!

    初めての作家さんですが、
    他の作品も読んでみたくなりました。

  • 出だしのニコニコ顔から歪んだおじさんが心の中で反パクしていく物語かと思ったら全然違うって、人間らしい常識ある涙脆いおじさんじゃないですか。ケータリングの仕事に誇りを持たずいい加減で生きてく為に仕事しているだけの司の養育費の為だけの、と思いきや全部ひっくり返る。毎年行ってる妹と友人の思い出の山に1人でも行くとか未だに自分を責めるとか死からガラッと生き方変わる、それを忘れない潔さ。途中でぼくが秀樹でおじさんが健一と理解した、なんて味のある物語だと、出汁の話でちゃんと技術あるんだよ、料理人だよと感動する

  • 出来合いのものをそれらしく加工し、なるべく手抜きをして、盛り付けだけきれいにすればOK。
    なんとも誠意のないケータリング業者の水島健一・44歳。
    バツイチ、息子は元妻と暮らす。

    なんていい加減な料理人!だから食中毒も出すし、やる気がないにもほどがある!

    しかし、料理はまず、自分が「食べたい」と思わなければ作る気が起きないのだろう。
    食欲ではなく、「食べたい気持ち」というのは生きる気力のことだ。
    そして、誰かに食べてもらいたいという気持ち。
    おいしく食べてもらいたい、喜んでもらいたいという願い。
    料理をするエネルギーはそこから来る。

    いい加減な料理をしていた健一は、大切な者たちを失って、生きることの意味や希望を見失っていたのだろう。
    タイトル、「僕とおじさん…」の、"ぼく"の登場はずいぶん遅かった、そして、あっという間に彗星のように去ってしまった。
    「任務を終えたような気分だよ」は健気過ぎる。

    「ぼく」に出会って、「ぼく」とともに命を見つめなおすことができた、おじさんの再生の物語である。

  • めちゃくちゃ泣きました。

    タイトルから僕とおじさんの日々の朝ごはんの話なのかと思っていたら、全然違いました。

    朝ごはんが出てくるのはたったの一度。
    自分にとって当たり前の何の変哲もない朝ごはんが、誰かにとってはとても特別な事なのだと考えさせられました。

    主人公はやる気のない料理人のおじさん。
    このおじさんが少年と出会い変わっていく物語。
    おじさんの変わっていく姿が読んでいてうれしかったです。

    変わった後のおじさんが作る料理がとても美味しそうで食べたくなりました。

    良い1冊に出会えました。

  • なんとも美味しそうな表紙に惹かれて。

    中盤まで「僕と、おじさんとは?誰のこと?」とハテナでいっぱいなりながら読み進めていたけど、終盤でグッと引き込まれた。
    あの人も、あのエピソードもここで繋がるんだね。
    何事にも無気力だった健一が徐々に暖かみを取り戻していく様子に嬉しくなる。本当は人一倍優しくて、気の利く人なんだよな。


    「僕とおじさんの朝ごはん」の場面がとても良くて、最後まで読み終わってから、もう一度そこだけ読み返した。
    美味しそうだなぁと思った表紙。意味が分かって胸にじんと沁みる。

    ⚫「あのさ人生で初なんだけどさ」
    「この調子だとお代わりが欲しい感じなんだよね」

    嬉しいんだけど、切ないこの台詞にグッときた。
    今週末は朝ごはんに目玉焼きを焼こうかな。

  • 親友と妹を亡くした時から一生懸命に生きることをやめた健一が、病気に苦しむ英樹に出会って変わっていく。健一との出会いから、周囲の人も少しずつ変わっていくのがよかった。表紙の絵は健一がつくった英樹の最後の晩餐だったんだなぁ。タイトルの意味もそこで分かる。大きな事件は起きないけれど、じんわりと温かい気持ちになる好きな作品でした。

  • 人生に疲れた人が、おいしいご飯を食って、少し元気を回復して、再び世間の荒波に立ち向かっていく、「時には美味しいものを大切な人と食べていいんだぞ」的、昨今はやっている系小説かと思っていたのだが。

    確かに人生に疲れて投げやりなおっさんが出てくるが、そのおっさんが食事を作る側の主人公という変化球を投じてきた。なかなかやるやん…と思っていたら、そのおっさんが「僕」と出会うことで、元気を回復していくという、もうひとつのひねり。

    読み終わってみれば、結論は似たようなところに落ち着くのだが、ひねったことで、食感…もとい読感はかなり変わっていて、ありきたりのグルメ小説とは感動度合いが一味違う。

    前半の視点がうつりかわりすぎるモブ描写と後半が乖離しているのがちょっと残念なのと、俺には投げやり時代のおっさんの方が魅力的にうつってしまったのも(これは大いに俺の責なのだが)残念なところであるが、良作。読んで気持ちがシャンとする作品だった。

  • 詳しいことを書くとネタばれになってしまうから書かないけど、縁って生きるってこういうことよねと思った。
    昔話みたいに「幸せにくらしました。」おしまいみたいに人生はやさしくないけど、でも、生きていく意味や力をもらえる出会いというものがある。
    主人公はだらだらしててやる気なくて、好かんなーと思って読んでいたけど。

  • グッとくる台詞回しや演出など特出すべき点はあるのに、要らない登場人物、無駄な長台詞、余計な設定、視点や場面切替の無駄な多さ…等あげたらきりが無い残念ポイントの数々で、全面的に薄っぺらかった。意図的にそうしているのだろうが、作者の自己満足が過ぎる印象しか抱けなかった。

  • 題名に引かれて読み始めた。
    途中、話が次から次へと切り替わっていくので、読みにくい。
    内容的にもイマイチ。

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著者プロフィール

一九六五年東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、二〇〇三年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『県庁の星』『嫌な女』『ハタラクオトメ』『頼むから、ほっといてくれ』『残された人が編む物語』『息をつめて』など。

「2023年 『じゃない方の渡辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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