- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122066373
作品紹介・あらすじ
近隣への散歩、ソ連での散歩……現在と過去の記憶がひびきあい、新たな記憶が立ち上がってくる。幼い日の思い出、結婚生活、子供の話……。死を前にした人独特の清澄なひびきを持つ晩年の秀作。野間文芸賞受賞。改版に当たり、巻末特別エッセイ「丈夫な女房はありがたい」、野間文芸賞選評抄、百合子夫人の「受賞の言葉」を収録する。
感想・レビュー・書評
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昭和51年度に野間文学賞を受賞したエッセー。選評には「ずば抜けて優れている、へんなすご味がある」とあるが…。
「散歩」というタイトルにふさわしい、とりとめのない昔話の数々。糖尿病に脳血栓、目まい…。口述筆記だというし、思考も混線しているようだ。大丈夫か著者、というのが正直な感想。選評の「経んな凄み」の意味するところは、心身が衰え、死を予感しつつ絞り出すように執筆されたエッセーということかも。実際、著者は本書の刊行(1976年)後程なくして亡くなったようだ。内容的には、先の戦争の痕跡が日常生活の随所に描かれているなど、むちゃくちゃ古かった。
そもそも著者は戦後文学の代表的旗手とのことだが、全く知らなかった。今はもう作品が読み次がれてないのかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鷹揚とした風貌が武田泰淳という名前に合致していて、それだけで「大人」であるなと仰ぎ見ていた作家である。単行本で出版されたころに買い求めて一度読んだ。あっという間に彼より長く生きてしまい、文庫本になったこの本を再度読んでみた。今回も天女のような妻百合子さん、娘花子さんのエピソードが印象に残った。この本をきっかけに百合子さんの富士日記を読んでみたことも思い出される。巻末の「地球上には、安全を保障された散歩など、どこにもない。ただ、安全そうな場所へ、安全らしき場所からふらふらと足を運ぶにすぎない。」との一節にその通りと膝を打つ思いがする。
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歩を進めれば、現在と過去の記憶が響きあい、新たな記憶が甦る……。野間文芸賞受賞作。巻末エッセイ「丈夫な女房はありがたい」などを収めた増補新版。
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新版。
散歩をテーマにしたエッセイ。日常の散歩も魅力的だが、ソビエトに旅行した時のものが良かった……というか、当時を外国人の目から見た貴重な資料でもあると思う。