装丁物語 (中公文庫 わ 25-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122068445

作品紹介・あらすじ

星新一から村上春樹まで――かくも愉しき装丁今昔


そのデザインの源泉は、幅広い好奇心と書物への愛着。

編集者から依頼を受け、ゲラを読み、絵を描き、文字を配し、

一冊の本を作り上げるプロセスを詳しく紹介。


軽妙な語り口にその人柄がにじむ、和田誠さんの本作りの話。

感想・レビュー・書評

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  • どうやら本好きであるらしい。
    最近分かってきたことだが、読書好きというのとは少し違う気がしてきた。
    「本にまつわる本」というと、おおかたのひとは本を媒介にした物語を思い浮かべるようだ。
    たぶんそれが「読書好き」なひとなのだろう。
    ところが私は、本というハードな媒体の話が好きなのだ。
    特に、どのような工程を経て完成に向かうか、その間の創意工夫や手順、使用する道具のことなどを聞かされるとワクワクが止まらない。
    きっとものづくりそのものが好きだからだろう。

    もちろん「読書好き」という面も多々あるが、比重は「本好き」7に対して「読書好き」は3程度かな。(その3の部分で新書をお薦めしている・笑)
    残念ながら「本作り」そのものを解説した本は少ない。
    本棚を見てみたら、3冊しか入っていないことも判明した。
    ブックガイドや書評本・読書術の本は玉石混交というほど数多いのに。

    前置きが長くなったが、そういうわけで和田誠さんの装丁のお話を。
    デザイナーさんであり、挿絵画家さんであり、映画監督さんでもある。
    この本がとても良いのだ。読書好きなひとなら読まずとも見覚えのある本が次々に登場して、和田さんの仕事の幅広さを再認識できる。
    遠藤周作、星新一、谷川俊太郎、丸谷才一、吉行淳之介、村上春樹、赤塚不二夫、山本容子、阿刀田高、辻邦夫、椎名誠・・海外文学と映画の本もそれはいっぱい。
    手がけた装丁が1000冊以上だそうだから、知らずに視界に入れている可能性は相当に高い。
    作家さんたちとの交流の話、どんな道具を使うか、一冊ごとのエピソードには失敗談もあれば苦労談もある。傍らで気さくに話しかけられているような語りの温かみで、本に対する愛情がひしひしと伝わってくる。

    発想の原点、装丁のコツ、(あの真っすぐなラインのコツもやっと分かった)勉強になることが山盛り。今までどの本にも載っていなかった紙の話とペンの話、帯の話もあり、ここは何度も読み返すことになった。
    バーコードが印刷されることに強く反対されていて、「決まりだから」ではなくなぜ納得がいくまで粘り強く話し合わないのか、という批判も。
    装丁も本の一部なのだということを理解できないひとが、便利だというだけで本の文化や歴史を傷つけていることを深く嘆いている。
    97年の本を9年後にUブックス化したのがこの本だから、現在はどうなのだろう。
    和田さんの声は届いたのだろうか。

    それでもその仕事はしっかり形になって残っている。
    子どもたちは、必ず谷川さんの絵本を読んで大きくなるだろう。マザー・グース好きな人は、宝物を手渡すように次世代に差し出すだろう。
    ほのぼのとした色彩とデザインが、小さな子の記憶に残ることを想像するだけで温かい気持ちになる。
    これからも私は、表紙や挿絵をゆっくり見せながら和田さんの本を読み聞かせることと思う。
    装丁というお仕事は、書物への愛情が創造の元だと知ることができた。自分が相当な本好きだということもね。
    読んで良かった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      明日、この本を探して確認しようと思っているのですが、古い記憶なので別の本だっかも、、、
      学生の頃、和田誠を真似た訳じゃな...
      nejidonさん
      明日、この本を探して確認しようと思っているのですが、古い記憶なので別の本だっかも、、、
      学生の頃、和田誠を真似た訳じゃないけど、ロットリングを使っていた。
      和田誠とロットリングの意外な出会いについて、書かれてたと思うので、、、猫が所持しているのはUブックス版
      2020/11/20
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      図書館に返却してしまったので正確な記憶ではありませんが。。。
      たぶん本書だと思われます。
      画材をさんざん探しぬいて、ロット...
      猫丸さん。
      図書館に返却してしまったので正確な記憶ではありませんが。。。
      たぶん本書だと思われます。
      画材をさんざん探しぬいて、ロットリングに出会ってからこれ一本という記述があったような。
      製図に使用するような細いペンですよね。
      和田さんの均一な線がずうっと謎だったのですが、私も答えを知ってすっきりしたのです。
      猫丸さんも使ってらしたんですか?
      わぁお!和田猫さんだったんですね!猫絵も描かれますか?
      2020/11/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      ありがとうございます!
      「ブラウン管の映画館」と「装丁物語」の2冊が無事?見つかり、
      気になっていた部分の確認中。...
      nejidonさん
      ありがとうございます!
      「ブラウン管の映画館」と「装丁物語」の2冊が無事?見つかり、
      気になっていた部分の確認中。。。

      ロットリングの話は最初にあって、記憶の確認が出来ました。因みに、その方は当時ドイツ留学中だった高橋悠治。

      この黒猫アイコンも自作ですが、もう絵の話は過去形です。。。
      2020/11/21
  • 1997年の新書を底本として2020年に発行された本。装丁という仕事についてデザイン・文字・レイアウト・用紙などなど具体的に語られている。和田誠さんの博識は作家や映画への愛からきてることがよくわかった。バーコードも当たり前でなかったのか!

  • 和田誠が手掛けた装丁の話が豊富に入っていて、それぞれの本について、どんなことを考えてデザインしたかを読んでいると、改めて見直したくなる。

    ジャケ買いという言葉があるように、本にとってジャケットを含めたトータルデザインはハズせない。

    栞の色が絶妙だったり、紙の質感がイメージ通りだったりするだけで、高くてもハードカバー買いますうー!置いときますうー!となる。
    作家にとっては複雑な言葉だった。ごめん。

    オビの色はこちらでコーディネートするが、内容は編集者の思いの見せどころ、という言葉も面白い。
    そんな和田さんが、本のデザインを語り尽くしたところで、最後に、バーコード問題について怒りを湛え始める。

    そこで、ハッとさせられるのだ。
    この問題を語らずして、装丁がどうのとか言ってるんじゃないよ、と。
    反省した。
    というか、これだけ技術の進歩が激しい現代にあって、バーコードがあのサイズでないといけない理由って……。

    筆者以外の話をして申し訳ないのだけど、私が初めて買った全集というのが、安部公房だった。
    正直、それまで特に好きな作家でもなかったのだけれど、銀色のプレートが貼られた全集が手元にやってきた時、あああ、お金出して買って良かったあぁーと心踊った(笑)
    文庫のジャケットも同様に、近藤一弥さんがデザインされている。

    読んでいない本のタイトルを聞くと、私はジャケットで思い出す。
    ああ、こういう絵柄のとか、こういう色のとか。
    和田さんの仕事の姿勢を読んでいると、作家さんにとってはありがたい人なんだろうなと思う。

  • 和田さんの本を初めて読む。職業病って感じの本だったけれど、やはり面白い。こういうこだわりに携わりたいと思う。表4のバーコードは、当たり前だと思っていたので、経緯を知っておどろいた。そう思うとたしかに野暮だ。

  •  表紙だけで「本」を買わせる人。この本は、決して肩を凝らせたりしませんよ。そう思わせる装丁の妙。謎が知りたければ、この本を読めば、なるほどそうだったのかと納得することを受け合います。
     亡くなってしまって、ちょっとつらい和田誠さんの「装丁」術をイロハから本人が語っています。新装しても「和田誠」、復刊してくれた中公文庫に感謝。
     ブログに感想書きました。読んでいただけると嬉しい。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202005210000/
     

  • イラストレーターでありながら装丁家としても活躍した著者による装丁の全てが網羅されたエッセイ。これまで手掛けた装丁の解説から紙、文字、画材などのこだわりまで印刷やデザインに関わる者には必読の内容。改めて和田誠の偉大さが分かる一冊。‬

  • 手元に読む本がない……という非常事態(笑)。
    でもさがせばある。
    途中で置いていた、和田さんの本。
    イラストを描いたり、デザインをしたりと一応、和田さんと同じ仕事だけど、ま、力量もなにもかも違いすぎる…というか中学の時、和田さんの「お楽しみはこれからだ」を読んでそのまま和田さんに憧れた私にとっては大先生の本。
    なのに途中で積読とは…。読んで良かった。
    改めて新年から働いている心構えになりました。

  • 図書館で働くということと本を愛するということは違うのだ、と痛感。いろいろな意味で深く恥じ入らずにはいられない。「バーコードについて」

  • 地味な本が地味であることを尊重し愛しその地味さに誠実に応える装丁、最高です。

    「堅い本は堅く、地味な本は地味に装丁したい。」

  • 読めば、次からはきっと本の表紙やカバーも気になってくる。
    レコードやCDはデザインを見て購入することがあると思うが、本ではどうだろうか。著者があって、タイトルがあって、裏表紙のあらすじがあって、少し流し読みをして。本を選ぶポイントはその辺りが主だったのだが、和田さんの装丁への思いや工夫、意図などについて読むと、なるほど今度はその点も見てみようと思えてくる。和田さんから言わせれば、裏表紙にあるバーコードもあらすじも全体デザインにとっては邪魔なわけで、譲れない矜持があるのだ。

    電子書籍が普及すると、こうした本のデザインはより埋没していくような気がしていて、元々買おうと思っていた本があって、クリックひとつで購入する。こうなると、目的もなく本屋に行くことや、ましてデザインを見ていいなと思って読んでみることも少ないだろう。自分の趣味嗜好の殻を破る可能性が減るわけだ。

    紹介されている本を見ると、和田さんが装丁した本をたくさん見たことがあって、このタッチは和田さんのものだったのかと驚く。きっとこのデザインに親しんだ方はたくさんいるはずだ。

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著者プロフィール

一九三六年大阪生まれ。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)卒業。
五九年デザイン会社ライトパブリシティ入社。六八年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。
六五年創刊の雑誌「話の特集」アート・ディレクターを務める。
講談社出版文化賞、講談社エッセイ賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞など受賞多数。
七七年より「週刊文春」の表紙(絵とデザイン)を担当する。二〇一九年死去。

「2022年 『夢の砦 二人でつくった雑誌「話の特集」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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