日本語の技術-私の文章作法 (中公文庫 し 23-3)

著者 :
  • 中央公論新社
4.08
  • (5)
  • (3)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122071810

作品紹介・あらすじ

文章術は泥棒に学べ!? ロングセラー『論文の書き方』の姉妹編。実践に役立つ文章修業の本道を説く。社会学者・ジャーナリストとしても活躍した著者による体験的文章指南。〈解説〉斎藤美奈子

(以下、本文より)

 その中の或る文字、或る言葉、或る文章を大変に好きだと思い、反対に、その中の或る文字、或る言葉、或る文章を非常に厭だと感じるような人、そういう人は、立派な文章が書ける素質のある人だろうと思います。

 実際に、その人の文章と瓜二つのような文章を何篇も書いてみることです。これが文章修業の本道で、それ以外に道はありません。一にも真似、二にも真似、三にも真似です。

   *

 締切という時間的限定、枚数という空間的限定、この二つの限定が曖昧なのが研究室の特色で、それと反対に、この二つの限定が厳格なのがジャーナリズムの約束です。

 文章を修業するのには、自分で締切と枚数とを厳重に定めて、これを自分に課するという方法をお勧めしたいように思うのです。

   *

 文章というのは一種の建築物だと考えています。大きな論文はビルディングのようなもの、小さな文章は交番のようなもので、文章が建築物であるならば、それを作るのには、どうしても、設計図がなければなりません。正確な設計図を用意せずに、文章を書き始めたら、論旨不明の文章が出来上るのは全く当然のことです。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ずいぶん久しぶりの清水幾太郎。IT時代よりも遥かに以前の指南ではあっても、古びていないところもある。読んでもらえる文章を書いたり、聞いてもらえるスピーチをするのであれば、普段から教養を整備しておき、十分に内容を組み立ててから、区切りとつながりを意識してやれ、とのこと。

  •  言葉なしでは何も考えることはできない。それほどまでに大事な事柄であるにも関わらず、言葉を真剣に学ぼうと思いはじめたのは、背伸びをしてみてもここ数年がいいところである。過去を悔いても仕方がないので、せめてこれからは怠ることなく歩みを進めていきたい。まずは「文章」と「読書」をテーマに扱っている書籍を濫読しようと思う。

     本書に登場する文章執筆についての記述を以下に要約する。こうして書き続けている記録の一つひとつが、今の自分にとっての「小高い地点」である。

     人生というのは、山を登って行くようなものだ。その途中で、或る小高い地点に達することがある。俄に展望が開け、自分が辛くも渡ることのできた川や、漸く抜け出した暗い谷が、眼下に見えて来る。道はまだ遠い。しかし、自分が辿って来た道を振返っているうちに、過去のいろいろな事柄の意味が心に浮んで来る。そういう場所である。

     ここで、過去を眺めて、いろいろな事柄の意味がただ心に浮ぶというだけでは駄目である。心に浮ぶくらいのことは、誰でも、毎日のようにあることだ。小高い地点に立った人間は、心に浮ぶものを文字によって固定させねばならない。なぜなら、それは、その時は生命を賭けた事柄でありながら、月日の経つにつれて、何時か磨滅してしまうものだからだ。それを繋ぎとめて、われとわが心に、二度と消えないように刻みつけるのには、どうしても、これを文章として書かねばならない。

     或る小高い地点に立った時、人間は、一つの考え方から他の考え方へと心が変わる、転向のチャンスを持つ。私たちが読書や思索に苦労するのは、転向するためである。そのきっかけは、一冊の本でも、何気ない他人の一言でもよい。もとより、これらの書物や事件そのものに特別な魔力が含まれているのではない。人生という山を登って来る途中で出会った無数の経験が、或る言葉や事件を機会に爆発を遂げるのだ。

     どんな人でも、一生に何度か、こういう地点に立つ。その時は、誰でもそれに気がつく。しかし、多くの場合、やがて、それは忘れられてしまう。その瞬間に、自らの経験をキチンとした文章に書くか書かないか、それが、人間が本当に成長するか成長しないか、真実の意味で自分を大切にするか大切にしないかの岐路なのかもしれない。

  • 大学の講義を聴いているような感覚。とても読みやすかった。文章は建築物と一緒。最初の骨組みが大切。あと順番も重要。家を建てるのに、初めから瓦を置いてしまったら柱が立てられない。
    この本も再読必須。

  • 普段読んでいる文章術の本とは違った。エッセイのような感覚だった。いや、エッセイというより、講義を聞いているような感じ。

    自分には難しかったな。
    でも、段落ごとに小見出しがあったので、読み進めやすかった。

    文章に対する好き嫌いがある人は、立派な文章を書ける素質のある人。
    なんでかというと、それを真似ることで、文章修行の道に入っていけるから。
    好き嫌いが素質に!?ってなったけど、理由を読んで納得。
    好きなものに近づきたくて、真似をすることって楽しいから、自然とたくさん修行できるのか。

    表現に自由がなかったときに、制限の中で少しでも自分の意志を表すことのやりがいとかは、今は想像もできないな。。
    伝えたいという気持ちが、文章を締まったものにするんだろうな。

    読書日記をつけると、本の構造がわかるようになってくるというのを読んで、感想を書くモチベーションになった。
    あと、今は構造とかを意識できていないのも自覚できた。。
    印象に残ったフレーズを残すだけでなく、
    反論してみるくらいの自分の意見を考えることで、
    相手が説明している内容の構造がわかるのかも。

  • 文章術は泥棒に学べ!? 日本語を知り、よい文章を書くための34の方法。ロングセラー『論文の書き方』の著者が説く、体験的文章指南。〈解説〉斎藤美奈子

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

清水幾太郎

一九〇七(明治四〇)年、東京生まれ。社会学者。東京帝国大学文学部社会学科卒業。文学博士。二十世紀研究所所長などを経て、学習院大学教授、清水研究室主宰。主な著書に『愛国心』『流言蜚語』などのほか、『清水幾太郎著作集』がある。訳書にヴェーバー『社会学の根本概念』、カー『歴史とは何か』などがある。八八(昭和六三)年没。

「2022年 『日本語の技術 私の文章作法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

清水幾太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×