掌の読書会-柚木麻子と読む 林芙美子 (中公文庫 は 54-5)
- 中央公論新社 (2023年5月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122073678
作品紹介・あらすじ
私はこの「ふてぶてしさ」に何度も元気づけられてきた――。筋金入りの「おフミさん」ファンを自認する作家・柚木麻子が、
数多く残された短編から一二編をセレクトし、語る。自分で稼ぎ、自分の足で歩く女たちの魅力あふれる短篇集。〈解説〉今川英子
感想・レビュー・書評
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柚木麻子さんの選書ということで手に取った。
林芙美子さんの本は初読み。
大正~昭和の女性が主人公の短編集。
女性のたくましさや潔さが感じられるものが多く、面白かった。
時代が違っていても、思っていることは案外似ていたりするのかも。 -
作家柚木麻子氏が選んだ12作品は、いずれも古さが感じられない。新仮名遣いであること、人間の根源が普遍であること、また選ばれた作品であることもその理由と言えようか。著者の強い主張、「書かずにはいられない」情熱が迫ってきて、そのペースに乗せられるように一気に読んでしまった。その中から特に印象深かった一編について振り返ってみたい。
★市立女学校
主人公垣島さわは市立女学校の学生。彼女の目から見た学校生活が活写されている。ハラスメント的な言動をとる教師や、クラス内の階級意識などなど、現代でも話題となりそうなネタのオンパレードに、好奇心がかきたてられた。作者の表現形態も楽しめる。冒頭の理科の試験では「発散流とは何か」という出題がある。主人公はこれに対して「私たちのこと」と書いて消す。その「発散流」が最後に再び登場したことで、物語は俄然面白くなる。彼女はボールを蹴り上げて胸で受け止める動作を繰り返す。そのボールは「汚れた煮〆めたような革のフットボオル(引用)」。おもしろい!青春のはちきれんばかりの息遣いが一面に広がっていくようだ。自分まで青春の真っただ中にいる気分!
林芙美子作品はこれが初めて。やはり代表作「放浪記」を読んだ後の方がより深く理解できるだろうと思った次第。機会を見て読んでみよう。-
yumecoさん、いいねをありがとうございました!
『市立女学校』は残念ながら未読・・・。
『柚木麻子と読む 林芙美子』は最近読んだので...yumecoさん、いいねをありがとうございました!
『市立女学校』は残念ながら未読・・・。
『柚木麻子と読む 林芙美子』は最近読んだのですが、図書館の返却日が過ぎてしまい返さなくてはならなくなりました。読みたい本もたくさんあって、3編しか読めなかったのが口惜しくて・・・。いずれまた借りるつもりです。芙美子さんの感覚はおっしゃるように古さがなくて現在にも通じますよね。2023/08/27 -
しずくさん、こんにちは!
いいね&コメントを、ありがとうございました。
今回はたまたま購入したのですが、感想を書いた本の多くは図書館で借...しずくさん、こんにちは!
いいね&コメントを、ありがとうございました。
今回はたまたま購入したのですが、感想を書いた本の多くは図書館で借りたものです。未読のまま返却した本は数知れず…。日夜返却期限のプレッシャーと闘いながら読んでおります(笑)しずくさんのお気持ち、よくわかります!機会があれば是非ご感想をおききしたいです。2023/08/27
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名前は知っていたけどその作品は読んだことがなかった林芙美子。柚月さんがセレクトした林さんの短編集。大正昭和の自由に生きづらかった時代の女性の日常が目に浮かぶようだった。自分の母を大切にしてくれない夫と別れを決意する女、上京したが生活していくために娼婦になった女、亡夫の友人を家に招き話をしながら「この人と結婚して貧乏をするのは嫌だ」と思う女、などを淡々とした文章で読ませる。特別ではない物語なんだけど妙に印象に残る。林芙美子の作品はこんな感じ?機会があれば代表作の放浪記も読んでみたい。
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「柚木麻子と読む」とあるので、一作ごとに解説が入るのかと思ったら、そういう形式ではなかった。
柚木麻子・編の林芙美子の短編集である。
こういう作品集は、編者が原作者のどういった部分を好んでいるかで、色合いが変わってくることもある。
やはり「柚木麻子と読む」で良いのだろう。
「はじめに」で、林芙美子本人があまり気に入っていなさそうな作品をあえてチョイスした、と書かれている。
女友達に、ニヤニヤしながらちょっと意地悪をしてみる感じで微笑ましい。
「おわりに」では、林芙美子の作品では、男女の機微を描いたものより、シスターフットが感じられるものの方が好き、と書かれていて、この好みが『ついでにジェントルメン』を柚木さんに書かせたのかなあと思った。
男に頼らず、自分の足で立って、自分で稼ぐ女性たち。
女の味方は最後には女なのだ、との読後感のある作品だと思う。
「市立女学校」は、作者自身が気に入っていないようだという。どうして?
林芙美子も女学校を出ていて、このヒロインのさわは本人がモデルなのだという。
卒業を控えた女生徒たちのあれこれが、瀬戸内の風景とともに描かれる。私はとても好き。
生徒たちにはまだ他人事だが、女性の教師たちが、教頭や男性教師からのパワハラやセクハラで辞めていく様子を描くのは、彼女たちを待っている厳しい社会の一角をチラ見させているようでもある。
卒業前は、まだ何にでもなれる「余白」を持っているけれど、社会に出たらどうなるだろう。
女学校時代は、短いきらめきの季節だ。
続きの作品というわけではないけれど、「ボナアルの黄昏」では、女学校を出た同窓生たちが学校を出た後、結局どういう運命を辿ったかという、一種残酷な後日譚が披露される。
最後の「椰子の実」は、死の3年前くらいに書かれた、小説ではなく随筆のようなもの。
もう書けない、疲れてしまった、どうせ後の時代に生きている人たちが書いたものの方がいいに決まっている、と弱気。
若い頃は、書けなくなると衝動的に旅に出た。大陸だってパリだって、どこにでも行けた。
もうそんな遠くには行けないけれど、とりあえず海を越えれば自分の旅心も満足する、と大島に行ってみたら思わぬ再会あり。また書きたいものができた。
浜辺に打ち上げられて朽ちるかと思われた椰子の実は、また波によって海へと誘い出されるのだった。 -
一発目の「母娘」から持っていかれた。やっぱり林芙美子は小説がめちゃくちゃにうまい。文章がうまいのではない、小説がうまい。
どうしようもない男を好きになる気持ちも、そんな男と貧しい暮らしをしているところを母に見られる不甲斐なさも、分からないけどわかる。胸がギュッとなる。田舎の老いた母が、雑踏の中で所在なさそうにいるところも、初めての円タクではしゃいでるところも、あるあるなんだけど、つらーーーーつれーーーよーーーー林芙美子何者だよーーーーーー -
ユーモアとバイタリティ、誰にも負けない野心を持つ林芙美子の「ふてぶてしさ」に、何度も勇気づけられたという作家の柚木麻子さんが編集する、林芙美子の短篇集。
本書の一遍「暗い花」は、戦後の東京を売春で生きる女性が主人公。田舎から母親が訪ねてくる。何も知らず、娘の生活を心配する母親に幾らかの金を持たせて帰すため、その晩も彼女は夜の街に立つ。 哀しい物語のはずですが、そこには陰鬱さや、哀れみの眼差しは無く、むしろハードボイルド的なタフさが感じられます。他にも、普通の幸せがなかなかに遠い女性たちのシスターフッド小説とも読める「寿司」等々。柚木さんは林芙美子に語り掛けます。「あなたの作品が愛されるようになるのは、むしろこれからが本番だ」。 -
ポッドキャストY2K新書再熱中に行った本屋でみかけて購入。寿司がいちばん好き。
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とても面白かった。
放浪記より個人的にはこちらに入っているような短編が好き。
特に『退屈な霜』は思わず笑ってしまったところもあった。
もう林芙美子が大好きになっていて、これからもまだよんでないさくひんをどんどん読んでいきたくなったし、今回読んだ作品も再読したいぐらいハマった。 -
一つ一つに柚木さんの解説や案内があればよかったな