なぜ心を読みすぎるのか: みきわめと対人関係の心理学

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130133104

作品紹介・あらすじ

行動の原因を,状況よりも心(性格や動機)に求めがちで,自然と相手の良し悪しをみきわめようとしてしまう私たち.他者を知り,関わろうとするとき,心の中では何が起きているのか――対人認知というフィルターを通して,人間の心の社会性,他者とのつながりのあり方に迫る.

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  • 東京大学出版会:
    http://www.utp.or.jp/book/b307543.html

    ALL REVIEWS「自著解説」 2018/12/25
    https://allreviews.jp/review/2788

  • 【書誌情報】
    著者:唐沢かおり 
    価格:2,800円+税
    出版年月日:2017/07/27
    ISBN:9784130133104
    4-6 288ページ

    行動の原因を,状況よりも心(性格や動機)に求めがちで,自然と相手の良し悪しをみきわめようとしてしまう私たち.他者を知り,関わろうとするとき,心の中では何が起きているのか――対人認知というフィルターを通して,人間の心の社会性,他者とのつながりのあり方に迫る.
    http://www.utp.or.jp/smp/book/b307543.html


    【目次】Kaori KARASAWA, Reading Other Minds: Perceiving Others with a Naive Heart
    目次 [i-iv]

    第1章 対人認知を考える視点――他者をみきわめる目 001
    1 心を読むことと評価的なまなざし003
      コラム1 対人認知という研究領域について
      評価と道徳
      ‎心と結びつくことによる評価
    2 他者の心を知ろうとすることについて 008
    3 なぜ評価が大切なのか 011
      接近と回避
      ‎相互作用の基盤として
    4 行動の原因となる心の認知 015
      行動の予測
    5 理解をめざすしろうと科学者(心理学者) 017
      しろうと科学者の対人認知
      ‎対人認知のバイアス
      ‎コラム2 認知した他者像が実現する――他者が抱く信念の自己成就 
    6 他者をみきわめるための対人認知 022

    第2章 性格特性からみる評価の役割 025
      本章の話題
    1 評価で印象が決まる 029
      コラム1 アッシュの印象形成研究の詳細 
      コラム2 ケリーの印象形成研究 
    2 性格特性を表す言葉のまとまり 033
      暗黙の人格理論
      ‎コラム3 ハロー効果 
      ‎ローゼンバーグらの対人認知次元研究
      ‎コラム4 二次元以外の対人認知次元は? 
    3 対人記憶と評価 040
      コラム5 自発的特性推論
      ‎スラルとワイヤーの対人記憶モデル 
    4 評価は変わりにくい 046
      コラム6 確証バイアス(confirmation bias)とステレオタイプ的判断 
    5 評価的な次元の普遍性――性格特性の二次元との関係 051
      対人認知の二次元
      ‎集団ステレオタイプの二次元
      ‎コラム7 アンビバレントなステレオタイプ 
      ‎自己認知の二次元
      ‎コラム8 自己観の文化差と二次元の関係 
    6 なぜ人柄と能力が重要なのか 061
      人柄に関する次元の優位性
      ‎他者に利得をもたらす特性・自分に利得をもたらす特性
    7 性格特性という道具と「よい―悪い」のみきわめ 068

    第3章 行動の原因としての心 069
    1 しろうと心理学者の推論 072
      ハイダーの分析――しろうとの因数分解
      ‎コラム1 傾性とは 
    2 対応推論理論 075
      非共通効果
      ‎状況・社会的のぞましさ・役割
      ‎コラム2 行動の同定 
    3 人か状況か 080
      二分法の効用
    4 対応バイアス――心を過剰に読む私たち 084
      ジョーンズとハリスの態度推論実験ロスらの知識推論実験
      ‎対応バイアスは頑健か
    5 対応バイアスを生む認知メカニズム 088
      ギルバートの三段階モデル
      ‎認知資源と状況要因の考慮
    6 対応バイアスの背景にあるもの 092
      状況の制約についての意識の欠如
      ‎行動に対する非現実的な期待
      ‎状況に同化した行動のカテゴリー化
      ‎特性推論の不十分な修正
    7 対応バイアスはバイアスなのか 095
      コラム3 状況の力――アッシュの同調の研究
      ‎バイアスの修正
      コラム4 性格に帰属することのネガティブな効果
      ‎文化差とバイアスの意味
      ‎コラム5 理解の必要と対応バイアス 
    8 みきわめようとする目と動機への疑惑 105
    9 「人か状況か」ではなく――対応推論の新たな展開 109
      コラム6 パーソナリティとは何か 
    10 日常的概念による行動の説明 112
      コラム7 マレの理論の補足
    11 多重推論モデル 116
      行動を取り巻く状況から動機の推論へ
      ‎心に関する推論の多重性
      ‎コラム8 ミルグラムの服従実験
    12 心の推論へ 122

    第4章 心の推論方略 125
      本章の話題
      ‎コラム1 動く図形の「心」を知覚する
    1 ステレオタイプと理論説 131
      コラム2 カテゴリー情報の優位性――フィスクの連続体モデルとブリューワーの二重処理モデル
    2 フォーク・サイコロジーと理論説 134
      心的状態マーカー
      ‎コラム3 理論説と科学者メタファー
    3 理論説におけるバイアスの問題 138
    4 シミュレーション説 140
      コラム4 自分の心の動きは自分で把握できるのか?――非意識的過程の存在
      ‎自己がデフォルトとなること
    5 シミュレーション説におけるバイアスの問題 145
      類似性の過大評価
      ‎コラム5 授かり効果とフリーマーケットにおける売り手・買い手の齟齬
      ‎不十分な調整過程
      ‎「私しか知らないこと」への理解不足
    6 どちらのメカニズムが採用されるのか 153
    7 他者の心が「正しく推論しがたいこと」をめぐって 155
      適応と推論の正確さ
      ‎「似ている」ことと推論の正確さ
    8 心を読むことのもう一つの意味――似た経験の効果から 160
      似た経験の効果
      ‎心を読むこととつながること、みきわめること

    第5章 人間としてみる 167
      本章の話題
      ‎コラム1 人間とは何か
    1 非人間化と加害・侵害 172
      コラム2 社会的アイデンティティ理論
      ‎道徳的コミュニティからの排除
      ‎非人間化から攻撃への心理
    2 人間らしさとは 178
      人間らしさを構成する認知次元
      ‎二つの非人間化
    3 モノ化 183
      性的対象としての女性のモノ化
      ‎テクノロジーと非人間化
    4 動物化 187
      動物化と感情の付与
      ‎コラム3 IAT(潜在連合テスト)
    5 モノ化の機能的側面と権力 194
      権力(パワー)と道具的な対人認知
    6 排斥がもたらすもの 198
      コラム4 システム正当化
    7 人間らしさの二次元と道徳的立場 203
      人間らしさの二次元との関係
    8 人間としての心の知覚と道徳 210

    第6章 道徳性の根拠としての心 213
      本章の話題
    1 マインド・サーベイ 217
      心の二次元
      ‎コラム1 心の実在性と脳科学の進歩
      ‎日常の中での二次元
      ‎コラム2 言い訳の心理学と意図の推論
    2 道徳シナリオと「キャスト」 229
      主体と客体の背反性
    3 モラル・タイプキャスティング 232
      個人の中の行為性と経験性の背反性
      ‎背反性の皮肉な結果
      ‎二者関係に対する認知
      ‎コラム3 関係認知の枠組み
      ‎相補性の成立条件
    4 二者関係的な道徳の拡張 241
      心を持たない対象への認知――加害による心の知覚
      ‎不在の被害者・加害者を補完する
    5 モラル・タイプキャスティングの効用 246
      加害者と被害者を探すことの意味
      ‎コラム4 被害者非難と公正世界信念
    6 道徳的な配慮を決めるもの 250
      コラム5 実験哲学
      ‎理性か感情か――それぞれの論点
      ‎実証的研究が示すことがら
    7 行為性と経験性の相互依存性 259
      二源泉仮説
      ‎改めて行為性と経験性の効果を考える
    8 心の認知と道徳的判断 264

    第7章 互いにみきわめあう私たち 267
    1 心を読むこと,他者をみきわめること 269
      本章の話題
      心を読むことについて
      ‎みきわめることについて――裁きのまなざし
      ‎コラム1 ワイナーのモデルとしろうと裁判官
      ‎みきわめることについて――共感というまなざし
    2 心を読む側へのインパクト 275
      共感する他者
      ‎評価し裁く他者
      ‎他者の心を認知することと自らの道徳的なふるまい
      ‎コラム2 社会心理学と人間観について
    3 他者との関係を支える対人認知 287
      対人認知の社会性

    あとがき(二〇一七年六月 唐沢かおり) [291-294]
    引用文献 [vii-xv]
    事項索引 [iii-v]
    人名索引 [i-ii]

  • 学術的で今一ピンとこない本であった。
    何故これほど評価が高い?

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB24109617

  • 自分がどのように対人関係で振る舞っているかを見直す機会になった

  • 本文よりもコラムが今までの古典的な研究のレビューになっているので役立つような気がする。

  •  わたしたちが他人の「心的なもの」を絶えず読み解き、評価しながら生きているということについて書いていてとても興味深い。そしてその複雑な処理を簡便にするがゆえに、さまざまなバイアスがあるということ。そして、そのような処理にもとづいて接し方を決定してゆく。それはときに共感となり、ときには非人間化にまで至る。共感と言うと聞こえはいいけれど、同質化は排他傾向をもたらすなど負の側面もある。非人間化は言うまでもない。こういう分野の本は、他人を理解することの難しさを教えてくれるもので、個人的に面白く読んだ。

  • いただきもの。前半では主に社会心理学の最新の研究動向が紹介され、第5章以降では、人間を非人間的(モノ的あるいは動物的)に扱うとはどういうことかや、道徳的判断をするときに心を読むことにはどういう要素が含まれているかという問題などが扱われており、重要。

  • 対人認知の王道の話から,いわゆる視点取り,道徳性,擬人化の話など,ちょうど自分の今の関心をなぞっていて面白かった。授業のストーリー作りの参考にできそう。

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著者プロフィール

1992年 UCLA Department of Psychology 博士課程修了(Ph. D)、
    京都大学大学院文学研究科中途退学
現 在 東京大学大学院人文社会系研究科教授
編著書 『心と社会を科学する』(共編、東京大学出版会、2012年)
    『新 社会心理学』(編、北大路書房、2014年)
    『人文知Ⅰ 心と言葉の迷宮』(共編、東京大学出版会、2014年)
    『なぜ心を読みすぎるのか』(東京大学出版会、2017年)他

「2019年 『〈概念工学〉宣言!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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