- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130331074
作品紹介・あらすじ
メディアはナショナリズムやポピュリズムの防波堤たりうるのか.新聞=明治デモクラシーからネット・SNS=平成デモクラシーまで,メディアと政治との関係,政治におけるジャーナリストの役割について考える.マスコミ志望者・メディア関係者必読の書.
感想・レビュー・書評
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特に目から鱗のような言説があるわけではない。メディアと政治の関係について、皆漠然と思ってきた・思っていることが文章化されていて、それだけの価値はあるし、それ以上の価値はない。
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【書誌情報】
『政治を動かすメディア』
著者:芹川 洋一
著者:佐々木 毅
装丁:米谷 豪
本文デザイン:デザインフォリオ
税込:2,640円(本体2,400円)
ISBN:978-4-13-033107-4
発売日:2017年05月25日
判型:四六
ページ数:244頁
ジャンル:政治
メディアはナショナリズムやポピュリズムの防波堤たりうるのか.新聞=明治デモクラシーからネット・SNS=平成デモクラシーまで,メディアと政治との関係,政治におけるジャーナリストの役割について考える.マスコミ志望者・メディア関係者必読の書.
〈http://www.utp.or.jp/book/b307467.html〉
【主要目次】
はしがき [i-ii]
目次 [iii-vi]
総論 現代民主政とメディア
1 「世論の支配」とメディア
2 現代民主政の歴史性
各論 政治のプレーヤーとしてのメディア
第1章 政治過程への影響
1 新聞の影響力
2 雑誌の影響力
3 テレビの影響力
4 ネットの影響力
第2章 政治思潮への影響
1 ナショナリズムの培養装置
2 ポピュリズムを呼びおこす道具
3 新聞リベラリズムの系譜
第3章 記者の実相
1 職業としての新聞記者
2 歴史としての政治記者
3 生き物としての新聞記者
第4章 ニュースの現場
1 モデルと現実
2 選挙を変える
3 メディアが変わる
座談会 メディアは政治にどう関わるか――ジャーナリズムとアカデミズムの対話(佐々木毅・曽根泰教・谷口将紀・芹川洋一)
【目次】
はしがき [i-ii]
目次 [iii-vi]
◆総論 現代民主政とメディア 001
1 「世論の支配」とメディア 002
2 現代民主政の歴史性 009
◆各論 政治のプレーヤーとしてのメディア 023
第1章 政治過程への影響
1 新聞の影響力 004
1 憲法にみる全国紙の立ち位置の違い
2 安全保障法制の例
3 全国紙と地方紙
4 新聞の変質の理由
2 雑誌の影響力 035
1 総合誌の時代があった
2 月刊誌が内閣の帰すうを決めた
3 週刊誌が政局のブレーヤーになった
4 なぜ今、週刊誌なのか
5 週刊誌の功罪
3 テレビの影響力 044
1 ラジオの時代
2テレポリティクス前史
3 テレポリティクスの時代
4 ネットの影響力 054
1 加藤の乱と偽メール、尖閣ビデオ流出事件
2 SNSは政治の「武器」
3 情報回路とメディア環境の変容
4 ネットの功罪
第2章 政治思潮への影響 065
1 ナショナリズムの培養装置 065
1 ナショナリズムとメディア
2 歴史が突きつける新聞の罪と罰
3 ネット右翼とは何か
4 なぜ今、ナショナリズムなのか
2 ポピュリズムを呼びおこす道具 075
1 ボピュリズムとは何か
2 ラジオ時代のポピュリスト
3 テレビ時代のポピュリスト
4 ネット時代のボピュリスト
5 世界を覆うポピュリズムの波
3 新聞リベラリズムの系譜 086
1 ナショナリズム・ポピュリズムの防波堤
2 福沢諭吉の「時事新報」と長谷川如是閑
3 石橋湛山
4 馬場恒吾と清沢測
5 桐生悠々と菊竹六鼓
第3章 記者の実相 102
1 職業としての新聞記者 102
1 新聞記者という存在
2 記者の役割
3 権力の監視犬か愛犬か
4 アクターとしての新聞――社説はどうつくられるか
5 新聞の機能を考える
2 歴史としての政治記者 114
1 政論記者から報道記者へ
2 記者クラブと番記者
3 政治記者から政治のプレーヤ
ーへ
4プレーヤー・渡邉恒雄
3 生き物としての新聞記者
1 新聞力とは何か
2 記者に求められる5つの目
3 政治取材の現場
第4章 ニュースの現場 139
1 モデルと現実 139
1 議題設定と誘発効果
2 切り口(フレーム)はいかに?
3 トリックスター
4 メディア多元主義モデル/5 第4列の登場
6 ウェーブモデル仮説
2 選挙を変える 150
1 選挙調査報道
2 予測が外れた1979年衆院選と3年参院選
3 予測と結果がずれる訳
3 メディアが変わる 160
1 世論形成のメカニズム
2 マスコミ世論からSNS世論へ
3 民主主義を支えるために
◆[座談会]メディアは政治にどう関わるか――ジャーナリズムとアカデミズムの対話[佐々木毅・曽根 泰教・谷口 将紀・芹川 洋一] 173
プレーヤーとしてのメディア―新聞の場合/総合誌の存在意義はどこにあるのか/週刊誌が政局を動かす 政治家のテレビとのつき合い方の変化/ネット選挙解禁、ビッグデータで何が変わるか/ナショナリズムやポピュリズムにどう向き合うか―イギリスのEU離脱問題とトランプ劇場をめぐって/石橋湛山、馬場恒吾、清沢のようなジャーナリストは再生産可能か/新聞社における編集と経営の関係の実態/番記者の政治家との距離感/記者の長時間労働はどうなっているのか/抜いた抜かれたという価値観/選挙報道と世論調査の現実/世論調査の数字はほんとうに「世論」を表しているのか/マスコミ志望者、若手ジャーナリストへのメッセージ
あとがき [227-230]
日本あかでめ「マスコミ交流会」メンバー 一覧 [231]
人名索引 [1-3] -
東2法経図・6F開架:070.14A/Se83s//K
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日経論説主幹と元東大総長によるマスコミ論。政治と世論、マスコミの役割やSNSの影響など、メディア一般について幅広く書かれている。政治とメディアについて、学術的な内容もあるが、ほとんどはマスコミ、特に記者の役割やあるべき姿について書かれており、著者として意見を論じている範囲は狭い。スクープを重んじるとか、政策に対するチェック重視など、賛同しかねる論調が多い。結局、報道機関の報道姿勢が反政府的報道を重んじたり、政治批判に固執しすぎており、そのビジョンがみえない。今後日本をよくしようという政府の姿勢にただ反対し、足を引っ張るばかりで、日本のためには悪としての存在感しか示していないと感じることが多い。左翼的イデオロギーのに基づく、大衆誘導も感じられるが、これもスクープを重んじたり、政策チェックと傘に着て行っているとしか思えない。もうすこし、政治家と同じ視点に立って社会を見て論じることを重んずるべきだと思う。
「(リップマン)政治についての的確な判断力を備えた公衆といったものはどこにも存在しない。人間は基本的に自分自身への関心によって支配され、身近なことについてはそれなりの合理的な判断をするが、政治といった自分から遠い事象については十分な情報もなく、スローガンや政治家を通して得た単純なイメージでしかそれを考えることができない」p4
「人民が決めなければならないのは具体的な政策課題ではなく「誰が決定を行うべきか」に究極的に絞り込まれる」p6
「「政治家による政治」が「政治家のための政治」に転落しないという保証はどこにもない」p6
「政治過程におけるテレビの影響力は、伝統的できまじめなハードニュースによるものより、娯楽志向の強いソフトニュースによるものの方が大きくなっているのは否定できない」p53
「気を付けなければならないのは、ワイドショーのコメンテーターなどにしばしば見られる傾向だが、政治的な駆け引きや取り引きの不透明さを必要以上に指摘したり、訳知り顔に政治をそもそもおぞましいものと言い放ったりすることだ」p53 -
政治記者が大半を書いた学術書らしくない本。「メディア」と言っても新聞を中心に総合誌、テレビ、ソーシャルメディアまで雑多に言及され、整理されていない印象もあるが、記者の現場の様子も含めて、それだけに読みやすかった。東大出版会から出ているのが驚きで、むしろ新書が似合いそうな内容だ。
戦前のナショナリズムを新聞が煽ったこと、読者が好む情報ばかりを提供する危うさ、「空気」に影響されること、メディアによる紋切り型の批判は却って政治不信を生むこと、なども挙げられており、単なる記者の自己弁護になっていない。また、世論はステレオタイプのイメージにより形成される、そのイメージを提供するのがメディア、という今日でも当てはまる点をリップマンが既に100年前に指摘していたのは軽い驚きだった。
巻末の座談会で谷口将紀氏が、従来はマスメディアの役割として権力監視や事実報道が挙げられることが多く、プレーヤーとしてのメディアという視点が目新しかったと述べている。この点は自明だと無意識に思っていたので、読んで意外に感じた。
少し残念なのが、政治記者を志す若者向けの本とされていること(本書の内容自体はそこまでの色が濃いわけではないが)。そんな対象は世の中で極々一部だろう。むしろ、政治報道の受け手である大多数の一般人に気づきを与える、そんな意識を持ってほしかった。