- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130610742
感想・レビュー・書評
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骨の各部位の名称が頭に入っていないとスムーズに読み進められないかも(本文中に図はあるけれど)
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さだまさしの歌に、ふたりが化石になって見つかったとしたら、ふたりがかつてこんなに愛し合っていたことに誰か気づいてくれるだろうか…ってな内容の歌詞がありましたが、その曲のことを思い出しました。
徳川家将軍とその正室たち(のうち、増上寺改修の際に調査が入ったひとたち)の、お墓・遺骨調査の結果を報告する本です。内容が読み物っぽくなっている文庫版もあるらしいのですが、敢えて5000円するこっちを購入しました。
初期将軍はワイルドな風貌、後期になるにつれて貴族的風貌に…という様子がわかります。骨の状態から嗜好品や生活習慣も見えてきますが、彼らが何を楽しいと思い、何をつらいと感じながら毎日を重ねていたのか……さだまさしのいう「切ない命のいとなみについて」思いを馳せるには妄想力が★2つ分必要です。私はうっとり妄想。 -
徳川将軍家の墓所の発掘調査の本。
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東京の芝・増上寺改葬の際の調査結果。一番気になるのは皇女和宮が胸に抱いていたという湿版の男性像なのですが、調査中に感光してもはや分からなくなってしまったそうで・・・
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江戸時代の将軍家を始めとして大名高官,またその夫人たちの墓を発掘して,遺骨から生前のカオと時代推移を復元研究する.という趣旨の極めて真面目な本なのだが,何せ研究対象が対象であるから,載ってる写真が骨骨骨骨また骨,暴いた墓が (と言っては不謹慎だが) 40基余.さらに発掘した棺を開けてそのままの状態の人骨バラバラ散乱写真もあって,そこはかとなく後ろめたい猟奇の薫りさえ漂って来る一冊.とりわけ歴代徳川将軍の髑髏がズラリと並ぶ様は壮観.
また生前には妍を競ったであろう大奥の将軍夫人側室たちの頭蓋骨もゴロゴロ,それに付けられた見出しがどれも「均整のとれた体を持つ絶世の美人」などと一応は持ち上げて書いてあるのだが,もちろん写真は容赦なくドス黒く変色した髑髏.小野小町九相図を観る思いぞして,何やら無常観に囚われるようなそうでないような.
しかし和宮の骨が細工物のように華奢で美しいのには驚いた.昔の皇女とはああいうものだったのか.骨になってまでも繊細で高貴の印象があるのには胸を突かれる.見るだに子供産んだり育てたりには全く向かないように思えるけれども.
--余談だが,本書によると和宮が31歳で没したのは箱根塔ノ沢の環翠楼.とあるが,ここはウチの祖母が子供の頃に住んでいた,旧 稲葉男爵家別邸 (だった頃の)・天成園別館 飛烟閣のすぐそばだ.もし和宮が天寿を全うしていたら,幼女時代の祖母とまみえる事もあったかも--
この本で惜しむらくは,発掘データが何れも1950〜70年代と古いためか,復元した顔を詳しく見られず,横顔の大まかな輪郭しか載ってないことで,現代なら3Dスキャナで撮ってポリゴンぐりぐりで再現出来るだろうになぁ.
個人的には,伊達家3代,政宗-忠宗-綱宗の頭蓋骨に興味を惹かれた.初代政宗はいかにも頑丈でゴツい髑髏なのが,代毎に急速に華奢になり,綱宗はすっかりうらなりびょうたんみたいな面になっている.たった3世代での激変は,戦後30年の日本人の骨格の変遷を想起させて興味深かった.
徳川 秀忠がゴツくて毛深いというのも意外だった.イメージ的には親父の家康は短躯で頑丈な体格だが,秀忠はへなちょこな体型かと思っていたのだが.
読み終わると,髑髏の外見で男女の区別がつくようになるのはもちろん,美人かそうでないかも何となくわかる感じになり,さらに生身の美女を見ても頭蓋骨が透けて見えるような気がしてしまうのが副作用(笑)