- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130639552
作品紹介・あらすじ
ヒトに固有な特徴や性差について進化という軸を通して検討し、なぜ言語や文化を持つのか、ヒトの進化環境がどんなものだったかなどについて、領域横断的に考察する。第一人者が明晰かつ親しみやすい語り口で、進化という視点から人間の本性に迫る。
感想・レビュー・書評
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進化心理学、人間行動生態学の研究成果に基づいて、ヒトとはどのような動物なのかを考察した書。「チンパンジーとヒトは本質的にどこが異なるのか」解明したい、「進化の理解を通じて人間の理解を統合したい」、「自然科学の分野から、進化生物学の考えを使って、自然科学系による理解と人文社会系による理解との橋渡しを」したい。
著者は、ヒトだけが「三項表象」という高度な認知能力を持っているという。他者と認識を共有し合う能力(「「外界」に関する心的表象を共有していることを理解し合う」能力)のことであり、他者の心を理解し共感を得るベースとなるとても重要な能力だ。言語を生み出し、人類の文化をここまで発展させた原動力なのだという。「私は、あなたがイヌを見ているということを知っている、ということをあなたは知っている、ということを私は知っている」。文章にするとややこしいが(笑)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
231116-2-3
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36
体重以上に重要なのが脳の重さである。脳の大きさが大きい動物ほど長生きし、成長もゆっくりである。
40
人工中絶の合法化による出生率の急減
先進国の中でも中絶率が高かった
42
進化生物学による少子化の説明
57
社会生物学と犯罪
142
三項表象と脳神経科学
143
言語
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請求記号 469/H 36
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テレビを見ていて誰かが転んだり、足をぶつけたり、乗っていた台から転げ落ちたりすると、決まって僕にはお尻の辺りから上の方にズキンと嫌ぁな感覚が起こる。足が痛むとかではなく、ズキンとする。そういうことってある?と家族に聞くと、ないと言う。それで生徒たちに聞いてみると、半分くらいの子どもたちがあるあると言う。感じやすい人とそうでない人がいるのだろうか。これを情動伝染というようだ。本書の中でこのことばを見つけて、やっぱりこの感じはちゃんと研究対象になっているのだと分かってうれしかった。本書の内容を妻に話していて疑問が出てきた。大中小のお椀を移動させるとき、ヒトは重ねていっぺんに運ぶことができるが、チンパンジーには重ねるという行為ができないそうだ。そこで疑問なのだが、重ねなくても、3ついっしょに持とうとはするのだろうか。何度も行き来するのが面倒だから1回で済まそうとするのだろうか。一度実験の模様を見てみたい。さて、ヒトの脳はこの1万年くらいの間ではそれほど変わっていないはずだ。しかし、狩猟採集の遊動生活から農耕・牧畜の定住生活へと移行していき、所有という概念ができ、貧富の差が生まれてきた。産業革命があり、情報革命があり、環境は大きく変わった。それに脳はついていけていない。進化心理学の研究を通して、我々は何にストレスを感じているのか、そしてそれにどう対処していけばよいのかと言ったことが分かってくると良いと思う。そして、どうあれば我々は幸せと感じるのか、そんなことも分かってくると良い。進化心理学、大いに期待できる学問なのだ。そして、長谷川先生にはさらに研究を深めていっていただき、またその結果報告をお待ちしています。
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人間の生物としての特性、それを進化と絡めてみると、自分たちで辿ってきた道とはいえ、今の社会はヒトの生物としての本質にマッチしているとは言えないのだなぁ、、
そして、性差は存在する。それに目を瞑って平等を論じるのではなく、性差を理解してどう協働するかを考えるべきなのだ -
進化心理学についての概説。さらに掘り下げた書籍が欲しいです。
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進化論という自然科学的な立場から、人間の本性とは何かという問いをめぐって、いま分かっていることを幅広く、しかしごく浅く紹介した読み物。これから先に掘り下げるための端緒を提供するという役割をもった一冊。