境界線

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140057155

作品紹介・あらすじ

主演・佐藤健、共演に阿部寛、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都らで映画化が決定した『護られなかった者たちへ』に続く、「宮城県警シリーズ」第2弾!

「誰にでも境界線がある。
越えるか、踏みとどまるか」
中山七里

2018年刊行の『護られなかった者たちへ』と同じく宮城県警捜査一課を舞台に、東日本大震災による行方不明者と個人情報ビジネスという復興の闇を照らし出していく。震災によって引かれてしまった“境界線”に翻弄される人々の行く末は、果たして。「どんでん返しの帝王」・中山七里が挑む、慟哭必至の骨太の社会派ヒューマンミステリー小説。

《あらすじ》
2018年5月某日、気仙沼市南町の海岸で、女性の変死体が発見された。女性の遺留品の身分証から、遺体は宮城県警捜査一科警部・笘篠誠一郎の妻だったことがわかる。笘篠の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流され、行方不明のままだった。遺体の様子から、妻と思われる女性はその前夜まで生きていたという。なぜ妻は自分のもとへ戻ってこなかったのか――笘篠はさまざまな疑問を胸に身元確認のため現場へ急行するが、そこで目にしたのはまったくの別人の遺体だった。
妻の身元が騙られ、身元が誰かの手によって流出していた……やり場のない怒りを抱えながら捜査を続ける笘篠。その経緯をたどり続けるもなかなか進展がない。そのような中、宮城県警に新たな他殺体発見の一報が入る。果たしてこのふたつの事件の関連性はあるのか? そして、笘篠の妻の身元はなぜ騙られたのか――。

感想・レビュー・書評

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  • 『護られなかった者たちへ』に続く、宮城県警のシリーズ第二作。


    2018年宮城県警の刑事笘篠誠一郎は東日本大震災で妻と長男が行方不明のまま七年が過ぎ、失踪宣告を出していませんでした。

    気仙沼港の近くの海岸で、女性の遺体が発見され、その女性が笘篠奈津美という免許書を持っていたという報告を受けます。
    しかし、死体は全くの別人であると笘篠は判断し、遺体がデリヘル嬢の鬼河内珠美であることを突き止めます。

    鬼河内珠美の両親は犯罪者で東日本大震災被害者キズナ会から戸籍を買ったのではという疑いが持たれます。

    そして、もう一人、天野明彦という男性が刃物で心臓を刺されて亡くなっているのが見つかりますが、やはり名前は他人のものであり、本名は真希竜弥という前科者であり戸籍を買っていると思われ戸籍を買った者が二人続けて死んでいるので笘篠らは戸籍を売ったものを捜し始めます。


    以下ネタバレしています。これから読まれる方はお気をつけください。





    そして、戸籍を売った者は見つかり、逮捕されます。
    笘篠は妻の戸籍が使われたことを非常に悔やみます。
    自分が失踪宣告を出さなかったばかりにと。
    七年間行方不明となっていた笘篠の妻も子もすでに亡くなっていたのにと。
    震災はまだ、終わっていなかったのです。

    • かなさん
      まことさん、こんばんは!
      ちょっと前にまことさんの
      「護られなかった者たちへ」のレビューを読んで
      積んであった作品を読んで、
      今この...
      まことさん、こんばんは!
      ちょっと前にまことさんの
      「護られなかった者たちへ」のレビューを読んで
      積んであった作品を読んで、
      今この作品読んでます(*^^*)
      このあと「彷徨う者たちへ」もスタンバっています♪
      まことさんも読まれている頃かな…なんて思うと
      ちょっと嬉しくなりました。
      東日本大震災が背景にあるこのシリーズ、
      随所随所に震災のことも描かれていて
      読み応えありますよね!
      2024/04/11
    • bmakiさん
      まことさんこんばんは(^^)

      こちらの作品は読んでいませんでした。読んでみたいです!!

      最近は全然中山七里先生読んでいなかったで...
      まことさんこんばんは(^^)

      こちらの作品は読んでいませんでした。読んでみたいです!!

      最近は全然中山七里先生読んでいなかったです。

      この前どなたかのコメントに、
      https://youtu.be/HwvSdRFQqrk?si=BGVqOfBrrnAH7Gdk
      こちらのURLが貼り付けてあり、凄く興味深く見てしまいました。

      中山七里先生、全然寝てないんですね!?
      びっくりです。

      また今家に積み上がっている本が終わったら、中山七里先生読みたいですo(^▽^)o
      2024/04/11
    • まことさん
      かなさん、bmakiさん、おはようございます♪

      かなさんが、『護られなかった者たちへ』のレビューされていたとき、私もちょうど、この作品...
      かなさん、bmakiさん、おはようございます♪

      かなさんが、『護られなかった者たちへ』のレビューされていたとき、私もちょうど、この作品を読んだところだったので「おおっ!」と思いました。
      『彷徨う者たちへ』は図書館、予約がいっぱいなので、まだ予約していません。来年あたりになったら空いてくるかなと思っています。
      東日本大震災を彷彿とさせる作品ですよね。

      bmakiさんURSありがとうございます。
      拝見しました。
      中山七里さん、凄い!食べてない、寝てない、ふるさと納税で1年間たべられるなんて!
      仕事しすぎですね。仕事がきっとお好きなんでしょうね。

      この作品も良かったけれど、やっぱり私は『護られなかった者たちへ』が感動しました。
      2024/04/12
  •  「護られなかった者たちへ」の宮城県警シリーズ第二弾です。同じシリーズなので、前作にも登場した人物が描かれていることと、2つの作品の背景には東日本大震災が大きく関わっていることなどは共通してます。

     宮城県警捜査一課の笘篠は、東日本大震災で妻子が行方不明となりその後も見つかることはなく、年月のみ無常に流れ7年が経過していた。そんなある日、笘篠のもとに亡き妻の身分証明書を持った遺体が発見されたとの連絡が入り、部下の蓮田とともに駆けつけると全くの別人だった…。後日、新たに全く別人の身分証明書を持った男性が殺害された事件が発生したことを受けて、笘篠は2つの事件にはつながりがあるのではないか疑問を持ったうえで、捜査を開始することになるのだが…。

     身内や自身の前科により新しい戸籍を欲する人たちと、震災で行方不明になりその悲しみや現実を受け入れきれず失踪宣告ができずに戸籍はそのまま残してる人たちがいる…。そこから生まれた戸籍売買…。突然家族を震災で奪われた家族には、どんなに年月が流れようとも受け入れきれない思いがありますよね…。そして、震災を機に人生観が変わってしまった方もいる…。読めば読むほど、なんとも言い難い、重い感情が湧いてきます。前作で登場した名簿屋の五代とその同級生の鵠沼…このあとのふたりの関係性がよいものになりますように!そう思わずにはいられない作品でした。

    • どんぐりさん
      こんにちは(^^)


      護られなかった者たちへってシリーズものだったのですね!
      ずっと読みたいリストに入ってて手を出せてないです
      いつか必ず...
      こんにちは(^^)


      護られなかった者たちへってシリーズものだったのですね!
      ずっと読みたいリストに入ってて手を出せてないです
      いつか必ず読みます!
      2024/04/12
    • かなさん
      まことさん、こんばんは〜!
      ホントにタイミングがあってて驚きですっ(゚∀゚)
      でも、嬉しかったです。
      「彷徨う者たち」のレビューも
      ...
      まことさん、こんばんは〜!
      ホントにタイミングがあってて驚きですっ(゚∀゚)
      でも、嬉しかったです。
      「彷徨う者たち」のレビューも
      近いうちに投稿できると思います。
      私はちょうどいいタイミングで借りられました(*^^*)
      2024/04/12
    • かなさん
      どんぐりさん、こんばんは!
      「護られなかった者たちへ」の次がこの「境界線」
      そのあと「彷徨う者たち」…3部作なんです。
      続いているとい...
      どんぐりさん、こんばんは!
      「護られなかった者たちへ」の次がこの「境界線」
      そのあと「彷徨う者たち」…3部作なんです。
      続いているというよりは、同じ人物が登場して
      被災地ならではの問題を抱えた犯罪の
      真相を明らかにする感じかなって思います。
      私は、いつか…そのうちに、読みたい本だらけ(;・∀・)
      2024/04/12
  • 東日本大震災から7年
    宮城県警捜査一課警部・笘篠誠一郎は、震災で行方不明になった妻の自殺体が、発見されたと知らせを受け、現場に駆けつけたが、見知らぬ女性であった。

    震災の日の朝、笘篠は、妻の奈津美と、息子・健一の「一歳記念の写真」の事で言い争いになり、健一の顔すら見ずに家を出た。
    最後の瞬間くらい笑えば良かった。
    最後の言葉くらい穏やかであったら良かった。
    後悔の気持ちが、失踪届を出させなかった。

    翌月、同じように、他人名義の免許証を持った男の他殺体が見つかった。

    あの震災は、家族、町、仕事だけではなく、心まで奪ったのか。

    鵠沼と五代の高校時代の話も良かった。
    不謹慎かもしれないが、面白かった。

  • 知ることもなかったことが溢れていた一冊。

    3.11。あの日、あの瞬間、一体いくつもの見えない境界線がひかれたのだろう。

    震災の奥の奥。一瞬の生死の境界線はもちろん、皮肉でしかない境界線さえもひかれていたとは…知ることもなかった知らずにいたことがこの作品に溢れていた。

    笘篠刑事の心情を通して描かれていく震災がもたらした今なお続く哀しみ、止まった時間。
    自分にはそれぞれの言葉、描写から苦しみを感じ取る、ただそれしかできなかった。

    そして終わりのない苦しみと闘っている人がいることにひたすら思いを馳せることしかできない。

  • 宮城県警シリーズの第2弾ということでしたが、1作目を読んでいなかったので、早く読まねば!と思いました。

    中盤までは地道に真相に迫って行き、中盤以降は犯人側の視点という2段階でした。

    タイトルにある「境界線」が全てを表しているような作品で、今作のテーマの東日本大震災はまさしくな内容です。

    被災者にしか分かり得ない様子が心に重くのしかかってきて、10年以上月日が経った今でも喪失感は埋められるものではないのだと思いました。

  • 東日本大震災を背景に、ある2人の絆と彼らを追う刑事を描く物語。
    タイトルから導く意味を問いながら読んでみたけど、ポイントは3つほどあるのかな。
    1つは言わずもがな犯人と元同級生との見えない絆。1つは残された笘篠が向き合うことのできなかった行方不明の家族との境界。もう1つは犯罪の動機にも関係する救えることができなかった命にたいする無念。
    まとめてはみたけど、読む人によって捉えかたは色々あって然り。

  • 佳作「護られなかった者たちへ」に次ぐ宮城県警シリーズ。物語は連続しておらず笘篠刑事がまた主人公というだけのシリーズ。
    とは言え前作との共通点は、本来受けるべき生活保護も受けずに飢えている市民や、3.11大震災で亡くなった人も多くいるのに、悪事を働いて刑務所に収監されている人間は3食確保されて安心して寝られる。3.11の時も自身は安全だった(家族は別)。こんな不公平があっていいものかと思う。何で税金で犯罪者の健康・安全を確保しなきゃならないのか。

    またこの作品の主眼は色々な「境界線」だ。内容には触れないが、大震災の傷跡の何と深い事か。物理的な被害も遅々として復興は進まないが、被災者の内面の傷はいつ癒えるか分からない。私たちの想像を絶するものであろう事はこの作品を読んでも分かるが、それに対する答えはなく、読後もやるせない気持ちになってしまう。

  • 宮城県警シリーズ2作目。
    東日本大震災を機に奪われた様々なもの。
    それは人の命だったり心。そして存在証明。
    行方不明だった妻の訃報を聞き駆けつけ確認したら全くの他人。
    そこから起こる様々な事件。
    震災を機に変わったもの。2人の奇妙な友情。
    深く読ませる物語でした。
    ラストの笘篠の決断はやはり悲しいですね。

  • 7年前の東日本大震災で行方不明になった妻が、遺体で発見された。
    確認に行った笘篠の前にいたのは、見知らぬ女性だった。

    『護られなかった者たちへ』の続編。

    身分を偽って亡くなったのは、何者なのか。
    行方不明の被災者の個人情報は、どうやって流出したのか。

    謎も興味深く、後半の震災というテーマも、ぐっとくるものがあった。

    最初の事件の顛末は、もやもやするものがあった。

  • 舞台は東日本大震災の爪痕が残る宮城県。
    捜査一課の笘篠は、7年前に津波で行方不明となった妻の免許証を持った女性の遺体が発見されたことを知る。

    死と生、被災した者と免れた者、失った者と失わなかった者、さまざまな境界線が見えて、やりきれない思いでいっぱいになる。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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