コーヒー抽出の法則

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140333006

感想・レビュー・書評

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    田口護
    1938年、北海道・札幌市生まれ。1968年カフェ・バッハ開店。1974年に自家焙煎をスタート。同年、カフェ・バッハグループを主宰、多くの後輩を育成。1978年以来、度々コーヒー消費国、生産国を訪問。コーヒー生産国の数ヶ国でコーヒー農園を指導。また、バッハコーヒー主宰として数多くの後輩を指導。全国各地でバッハコーヒーの卒業生が活躍。SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)では、トレーニング委員会委員長、会長を歴任。人材育成に尽力

    山田康一
    1978年、埼玉県生まれ。カフェ・バッハ総店長・工場長。日本に300人のSCAJ認定アドバンスド・コーヒーマイスター。1988年、辻調グループ・エコール辻東京卒。有限会社田口珈琲(カフェ・バッハ)入社。2003年より総店長。生産国、消費国視察多数。2005年、米カリフォルニア・ロングビーチでQグレーダー取得。2007年EAFCAエチオピアで審査員、2011年ベストオブパナマ審査員ほか、国内外で審査員経験多数。辻調グループ校講師、NHKカルチャーセンター講師も務める


    中でも、わかりやすいのは「わるい」要素である。味が悪くなる要素をできる限り除去すれば、その結果抽出されるコーヒーは「適正な範囲内」の「よいコーヒー」となる。「適正な範囲内」であれば、基本的には「まずいコーヒー」にはなりえない。ストライクゾーンは限定的な一点ではなく、ある程度の範囲があるという考え方だ。つくり上げる味が「ボール」ではなく「ストライク」に入るように、生豆を選び、焙煎し、カッティングし、抽出することで、ストライクゾーンに入る「よいコーヒー」を淹れることができる。個人的な趣味嗜好はその上での選択となるのである。

    では、「よいコーヒー」のストライクゾーンとは具体的にどのような条件によって表現できるのだろうか。私は常に4つの条件を提示している。 1 欠点豆のない良質な豆 2 焙煎したてのコーヒー 3 適正に焙煎されたコーヒー 4 挽きたて、淹れたてのコーヒー

    欠点豆には様々な種類があり、発酵豆、カビ豆、死豆、未成熟豆(ヴェルジ)、虫食い豆、黒豆(ブラックビーン)、コッコ(果肉が残ったままの豆)、パーチメント(内果皮)、割れ豆、貝殻豆、レッドスキン(乾燥中に雨を被った豆)などが紛れ込んでいると、どんなに卓越した焙煎技術をもってしても、異臭や腐敗臭、濁りの原因となってしまうのである。

    極端にいってしまえば、味にこだわらなければコーヒーの抽出は誰にでも可能であり、そんなに難しいことではない。コーヒーの粉と抽出器具さえ用意すれば、後は湯とカップを用意するだけでコーヒーを淹れることはできる。

    ペーパーフィルターはドリッパーに合わせて必ず専用のものを使用する。ドリッパーはメーカーによって形や大きさが微妙に異なるため、フィットしないこともあるからだ。基本的にはどのメーカーも、ドリッパーに形状を合わせ、材質や織り方も適正な抽出ができるよう開発されている。ドリッパーのメーカーが販売しているペーパーフィルターを使用することが最良の選択である。ほかのメーカーのものでは、そのドリッパーの特性を十分に引き出すことができない場合もある。

    人間がこの世に誕生していちばん最初に口にするのは母乳でありミルクである。そこに含まれるのは「甘味」や「うま味」であり、「塩味」も加えた3つは安全で体に必要なものだという認識が生まれながらにそなわっている。それに対して「酸味」「苦味」は、警戒すべきもの、危険なものとして認識されている。

    コーヒーに深く携わる人は「良質なコーヒーにはほどよい酸味がある」といい、酸味の重要性を十分に理解している。酸味はコーヒーにとって苦味に次いで重要な要素なのである。しかし、一般的な消費者や、コーヒーをあまり飲み慣れていない人たちには「酸味が苦手」という人も多い。なぜそのような誤解が生じるのだろうか。

    ひとつには、「酸味が苦手」という人は「劣化したコーヒーの酸味」を思い浮かべていることが多い。コーヒーは本来、焙煎の過程で浅煎りから中煎りで酸味が最も強く、深煎りになるにつれ消失して苦味が強くなっていくのである。通常のコーヒーを焙煎、抽出したものが嫌な酸味になることはほとんどない。

    コーヒーで感じる酸味は、クエン酸や酢酸が中心で、そのほか生豆に含まれる様々な酸との組み合わせにより複雑な酸味となる。また、温度が低くなると苦味と甘みは感じにくくなり、酸味は感じやすくなる傾向がある。抽出して時間が経つと、同じコーヒーでも酸味を強く感じるのはそのためである。

    コーヒーの味を評価する際、「フレーバー」という言葉が使われる。コーヒーを口に含み、鼻に抜ける香りと味を総合したものをフレーバーと呼んでいる。フレーバーとは日本語でいうところの香味、つまり、「香り(アロマ)+味(テイスト)」である。フレーバーとして表現される香り(アロマ)は、口の中から鼻に抜ける口中香のことである。コーヒーは鼻先で感じる香りよりも口から鼻に抜ける香りが豊かだ。

    コーヒーの抽出は写真を撮ることに似ている。 どんなにフォトジェニックな場所に出会おうとも、 どんなに美しい被写体を見つけようとも、 そこでどのようにフレーミングし、どのように光を捉え、 どこにピントを合わせるかは自分次第である。 自分の心が動く時こそ、人の心を動かすことができる写真が撮れる。

  • カフェ・バッハの方の教科書。おそらく王道的な内容で、淡々とした記載ぶり。
    ・コーヒー抽出時に出る泡はコーヒーのアク
    ・湯温が高いほうが成分の抽出量が上がる
    ・温度が高いと苦味が出やすく、温度が低いと苦味が出にくい(酸味が立つ)
    ・ガスが抜けた豆は湯をドリッパーの中に抱え込む力が弱まり、抽出スピードが速くなる。そのため、90度以上の高温でないと味や香りを引き出せない
    ・深煎りはやや低温か中温、浅煎りは中温かやや高温で抽出

  • コーヒーをさらに美味しく飲みたくて手に取りました。
    特に2点が興味深いです。
    ●甘みはどこから来るのか?
    コーヒー豆に含まれるショ糖は少なく、焙煎が終わると甘みと感じる濃度は残っていない。それでも後味が甘いと感じるときがあるのは、香りに含まれるフラノン類の風味ではないか。
    →コーヒーが冷めると、甘みを感じなくなり酸味を強く感じるので、こちらの説に共感しました。

    ●焙煎度によって、味はある程度決定される。浅煎りは深入りと比べて酸味が多く抽出され、逆に深入りは苦味やコクが多く抽出される。
    →苦味より酸味が好みなので、浅煎りを選びたい

    コーヒー抽出の原理が詳細に書かれています。自宅で美味しい一杯を飲みたい人におすすめの一冊です。

  • 抽出にポイントを絞って、温度、抽出時間など、改めて学ぶところが多かった。
    メーカーごとの違いをテイスティングしているのも大変参考になった。

  • カフェバッハのオーナーによる本。酸味や渋味の成分、感じる原理を科学的に解説しており、味を自分で理解、説明しようとする上で参考になりそう。競技会で出たペーパードリップで攪拌する方式を荒技と評している。

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著者プロフィール

1938年、北海道生まれ。1968年カフェ・バッハ開店。1974年に自家焙煎をスタート。バッハコーヒー主宰として数多くの後輩を育成。日本スペシャルティコーヒー協会トレーニング委員会委員長、会長を歴任。

「2020年 『珈琲事典 新装版 この1冊で豆・焙煎・淹れ方がわかる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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