もう一日 for one more day

  • NHK出版
3.70
  • (9)
  • (15)
  • (17)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 105
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140811740

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • すべてを失くし、自分の人生を終わらせようとした主人公。
    そんな彼の前に現れた、死んだはずの母親。

    彼岸と此岸のはざまで過ごす、「もう一日」

    世界中の人があなたを責めたとしても、たった一人、味方になってくれる・・・。
    無償で深い愛情を持つ人。

    母とはそういう存在です。

    一人の子として母への思慕が胸に沁み、一人の母として母の想いに共感するお話です。

  • チャールズ・チック・ベネトは幼い頃から父の言う事だけを聞き、母をないがしろにしてきた。チックの父はチックが11歳の時に家を出て行き、その後は母が妹との3人家族を支えてきたが、チックはその後も父の望むとおりの道を進み、野球選手になる。しかしたった6週間メジャーで試合に出ただけで膝のけがの為に野球をあきらめなければならず、その後はセールスの仕事などをしたが思い通りにならず、酒びたりの毎日になる。妻と娘に捨てられ、娘の結婚式にも招待されなかった事を知ったチックは死ぬ事にし、車で暴走して事故を起こす。ふと気付くと、8年前に死んだはずの母がいた。母と過ごした1日の中で様々な人に出会い、母の愛情や思いやりを知り、ごく普通の日々に過ごす時間にこそ大切なものがあると教えられる。母と過ごした1日が過ぎ、母が往ってしまった時、チックは事故直後の現場で救急隊に助けられているところだった。母がこの世とあの世の間でもう1日をプレゼントしてくれた事で、チックは愛する人を大切にし、人生をやり直す事ができたのだった。

  • ストーリーの合間に語られる昔の母との思い出がすごくいい感じですね。母の愛は偉大だなぁ。

  • 『心温まる』ストーリーを書かせたら、アメリカでミッチ・アルボムの右に出る人はいないのではないか?『天国の5人』、『モリー先生との火曜日』もよかったが、『もう1日』も読者の期待を裏切らない作品だ。お涙頂戴の物語となると、どうしても冷めた読書なんかは白けてしまうが、普通の人びとのごくあいふれた日常を描いているからこそ共感が得られるのだろう。物語は、元メジャーリーガー(6週間だけ)のチャーリーが、財産を失い、家庭も失い、自暴自棄となり自殺する場面から始まる。自動車事故で昏睡状態となった時にチャーリーの前に母親が現れ、昔の出来事を一つづつ回想していくなかで、チャーリーの魂は救済されていく。母親への思慕の情は、世界どこへいっても変わらない。

    チャリーの胸には、母親にやさしくしてあげられなかった後悔の念が一杯に詰まっている。父親に俺とお母さんどっちが好きかと聞かれ、パパと答えたときからチャーリーの母への想いは屈折していく。男の子は、母親とはベタベタできない生き物であるし、子供というのは逃げていく愛を追いかけるものだから。チャーリーはお父さんの愛を追いかけた。

    昏睡状態の夢の中でチャーリーは、死んだお母さんに再会した。チャーリーは「母さん」とつぶやく。長いこと口にしなかった言葉。『死』は母親を連れ去るときに、この言葉も永久に奪い取ってしまったから。母の思い出が、次々に去来する。その、どの思い出でも、母はいつも自分の味方をしてくれた。そして、自分は母をいつも裏切った。

    父さんが出ていってしまってから、チャーリーの生活は一変する。当時のアメリカでは、まだ離婚家庭は珍しく、チャーリーのお母さんは街中のいたるところで男たちの好奇の目に晒され、女たちからは敵対視され、むかしの友達とは誰ともつきあえなくなる。ハロウィンでツリック・オア・ツリートと言って近隣の家を妹とノックして廻るが、最初は愛想の良かった人も、離婚家庭の子供であることがバレると、相手の笑顔を豹変し、悪態とともに追い出されたり、友達が家の裏通りで双眼鏡を覗いているので何を見ているのかとその先を見ると、お母さんの着替え姿が目に入り、友達に思いっきり飛び掛っていったり・・・。

    主人がいなくなり、母は子供を育てるために必死に働いた。長年勤めた病院の看護婦は、セクハラ医師のせいで退職を余儀なくされ、美容院で仕事をする。そして、チャーリーには隠していたが、昔の黒人のメイドと一緒にハウス・キーピングの仕事もしながら2人の子供を大学まで送る。そんな母に対しチャーリーは「ひとんちの掃除までして、自分の一番大切な病院の仕事はどうしたんだ」とどなるが、母は胸を張って、「母親であることが私の一番大切な仕事よ」と応える。

    母は、チャーリーがいつでも彼女にとってかけがえのない宝物であり、ふつうに過ごすじか時間のなかに真に大切なものがあることをチャーリーに気づかせてくれる。

  • 死んだ相手が生き帰る「もう一日」がありさえすれば、死に別れた全ての親子が幸せになれるというはずもなく、この母子に与えられたもう一日だからこそ、人生を変える一日になったのだと、読んだ人にはわかるでしょう。周囲の人に「今の自分を憶えていてほしい」と思える末期を迎えられるのは、幸せな人生だと思います。

  • 浅田次郎さんが書きそうな、切なくて、ちょっと胸あたたかくさせるストーリー。「普通こそが大切なこと、普通の一日こそが宝物である」ことを再確認させられる。「親孝行したいときには親はなし」という言葉が頭をよぎった。著者は大ベストセラー作家。近々映画化される作品もあるとのこと。

  • 過去は決して取り返しのつかないものではない。もうこの世では会えない人との関係でさえ、新たに築くことができる。家族や身近な人々と過ごすありきたりの一日。その宝石のような輝きに、過ぎ去ってから気づくことが多いけれど、心に刻もう、かみしめようと、この本を読んで改めて決意した。本当に大切にしたいことを思い出させてくれる一冊。2007.5

全18件中 11 - 18件を表示

ミッチ・アルボムの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×