NHK「100分de名著」ブックス パスカル パンセ

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815892

作品紹介・あらすじ

科学が進歩し、キリスト教的世界観が崩れ始めた十七世紀、「理性賛美」の声が高まった。そのような風潮のなかで、フランスの哲学者・数学者のパスカルは、自然科学とともに宗教と信仰の研究に打ち込む。「人間は一本の葦にすぎない。自然の中でも最も弱いものの一つである。しかし、それは考える葦なのだ」。人間の理性に基づく現代文明の脆さが露わになったいま、「考える」とは何かを探る。

感想・レビュー・書評

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  • ブレーズ・パスカルは17世紀のフランスの数学者であり、哲学者です。パスカルの定理や、パスカルの原理といった自然科学分野でも大きな足跡を残すと同時に、「人間は考える葦である」といった有名な言葉でも知られています。

    仏文学者の鹿島茂は、パスカルの哲学者としての思想のエッセンスをわかりやすく抽出しています。人間の考えるという行為が人間の尊厳の中心にある、と主張するパスカルの思考の背景を、彼のキリスト教への信仰から辿っています。

    他にも、パスカルの言葉が随所に散りばめられています。

    「人間のあらゆる不幸はたった一つのことから来ているという事実を発見してしまった。人は部屋の中にじっとしたままではいられない、ということだ」

    37年の生涯を駆け抜けたパスカルを突き動かしていた思いが凝縮されている言葉のように感じました。

  • 就職で悩むA君、激務に追われるB子さん、定年退職したEさんなど架空の人物のお悩みにパスカルの言葉を通して答えていくスタイルでとてもおもしろく、パスカルの「パンセ」の言葉が今の私たちに伝わってきます。

    子供の教育について、というある親からの質問へのパンセの言葉が、本当にしっくりくる回答でなるほど!

    「パスカルの理論では、人は忙しい忙しいとぼやきながら、なにごとかに熱中しているときには、人生の虚しさについて考える暇がないので、けっこう幸せでいられる。」
    なるほど、その通りだわ。

  • 鹿島先生のわかりやすい文体による解説本で非常に好奇心が湧く内容となっており原書を読みたくなった。
    特に子供に受験勉強を強いた方が良いかという設問に対して、人間は暇になると人生の虚しさを感じるので、忙しい方が幸せでいられる→よって受験勉強を強いらないより強いた方が良いという説は自分の中で想定してなかったので腹落ちできた(もちろん反対意見もあるとは思うが)。
    政治家に鬱がいないのは忙しくて自分のことを考えられないからという話も興味深い。自分もプライベートで色々あり人生辛い辛いという状況であるが、人生1度きりしか無いのであえて自分から忙しい状況を作り出すことで、前に進んでいきたいと思う。そのように思えただけでも読んで良かったと思える。


  • このシリーズの中での、最高傑作だと思います。とにかく今の自分に腹落ちしました。養老先生の考えの根底にあるものと感じました!感謝、感激!

  • 人は必ず死ぬ
    存在と死を考える
    死ぬことが不孝、そのことを考えないように多忙の方がいい
    死ぬまでに〇〇をしたい、知らずになくなりたい
    いろんな価値観がある
    決めるのは本人  
    でもそれを叶えられるように周囲を整えられているのか

  • パスカルが『パンセ』を書いた目的、内容、普遍性が手堅くまとまっている。学生時代に拾い読みしかしていなかったが、改めてパンセを紐解く気持ちになった。

  • 人間は考える葦である、このワードしか知らなかったが、パスカルという人間が合理的思考を持ちながらも、デカルトのように、ロジック一辺倒ではないことに共感した。内容のエッセンスは理解したつもりだが、何度も読むごとにみかたあが変わる本なのだと思う。

  • 言っていることはわかるが、一抹の胡散臭さが漂う。そのわけが何となくわかる。

  • フランスの哲学者にして数学者のパスカルの「死後、書類の中から発見された、宗教およびその他の若干の主題に、関するパスカル氏のパンセ(思索)」所謂「パンセ」のエッセンスを簡潔にまとめ、またその「パンセ」に関わるという物語によって、現代の問題に上手に当てはめて、より理解を促進してくれる体裁を調えている。
    それにしてもこの「パンセ」が、キリスト教護教論のためのものであっても、その人間の真理を冷徹に見透し、未定稿という体裁であったが、書き上げられ、時代を生き抜いた名著となり、現代人の悩みの根底にも通じていることをまじまじと思い知らされた。
    「人間のあらゆる不幸のたった一つのことから来ているという事実を発見してしまった。人は部屋の中にじっとしたままいられないもいうことだ。」
    「虚栄というものは人間の心の中に非常に深く錨を降ろしている。だから、兵士も、従卒も、料理人も、港湾労働者も、それぞれに、自慢ばかりして、賛嘆者を欲しがるのだ。さらに哲学者たちも、称賛してくれる人が欲しい。」
    「人間の最大の卑しさは、名声の追求にある。…人は、人々から尊敬されていなければ満足できないからだ。」
    まさに確信を得ている言葉であろう。時代を得てもそう思うからこそ名著なのだ。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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