イスラエル 人類史上最もやっかいな問題

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140819333

作品紹介・あらすじ

「知らない」ではすまされない、世界が注視する“この国”を正しく知るための入門書

イスラエル。こんなテーマがほかにあるだろうか?
人口1000万に満たない小さな国が世界のトップニュースになるのはなぜか?
アメリカのキリスト教福音派はなぜ、イスラエルとトランプを支持するのか?
なぜ紛争は繰り返されるのか?
そもそも、いったい何が問題なのか?
世界で最も複雑で、やっかいで、古くからの紛争と思われるものを正しく理解する方法などあるのだろうか?
国際社会の一員として生きていくために、日本人が知っておくべきことが、この一冊に凝縮されている。
争いを拡大させているのは、私たちの無知、無関心かもしれない。

第1部 何が起こっているのか?
1章 ユダヤ人とイスラエル/2章 シオニストの思想/3章 ちょっと待て、ここには人がいる/4章 イギリス人がやってくる/5章 イスラエルとナクバ/6章 追い出された人びと/7章 1950年代/8章 ビッグバン/9章 激動/10章 振り落とす/11章 イスラエルはラビンを待っている/12章 賢明な希望が潰えて/13章 ブルドーザーの最後の不意打ち/14章 民主主義の後退
第2部 イスラエルについて話すのがこれほど難しいのはなぜか?
15章 地図は領土ではない/16章 イスラエルのアラブ系国民/17章 恋物語?/18章 入植地/19章 BDSについて語るときにわれわれが語ること/20章 Aで始まる例の単語/21章 Aで始まるもう一つの単語/22章 中心地の赤い雌牛/23章 希望を持つ理由第1部 何が起こっているのか?
1章 ユダヤ人とイスラエル/2章 シオニストの思想/3章 ちょっと待て、ここには人がいる/4章 イギリス人がやってくる/5章 イスラエルとナクバ/6章 追い出された人びと/7章 1950年代/8章 ビッグバン/9章 激動/10章 振り落とす/11章 イスラエルはラビンを待っている/12章 賢明な希望が潰えて/13章 ブルドーザーの最後の不意打ち/14章 民主主義の後退
第2部 イスラエルについて話すのがこれほど難しいのはなぜか?
15章 地図は領土ではない/16章 イスラエルのアラブ系国民/17章 恋物語?/18章 入植地/19章 BDSについて語るときにわれわれが語ること/20章 Aで始まる例の単語/21章 Aで始まるもう一つの単語/22章 中心地の赤い雌牛/23章 希望を持つ理由

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    「オッケー。ちょっと整理させて。つまり、こういうことかな。僕は生まれたときから、自分の土地にある自分の家で暮らしてきた。両親も、おじいさんおばあさんも、ひいおじいさんおばあさんも、ひいひいおじいさんおばあさんもみんなここで暮らし、僕と同じように土地を耕してきた。いつも誰かに家賃を払っていたけど、ずっとここで暮らしていた。ある日、畑に出て、夕方家に帰ってみると、この人(ここで彼は隣に座っていた子を指さした)とその家族が僕の家の半分で暮らしている。僕が『おい、僕の家で何をしてるんだい?」と言うと、彼は『僕たちはここから遠く離れた町を追い出されたんだ。近所の人は殺され、僕たちの家も焼かれた。ほかに行くところはないし、受け入れてくれるところもない。だからここに来たんだ。ひいおじいさんおばあさんの、ひいおじいさんおばあさんの、そのまたひいおじいさんおばあさんが、はるか昔に暮らしていた場所にね』というわけで、どちらも正しいが、どちらもほかに行くところがない。こんな感じでいい?」

    上記は、本書のコラムに出てくる筆者の教え子の少年の言葉である。
    これは、パレスチナ人とイスラエルが抱える問題の本質を端的に言い当てている。現在紛争状態にある彼らだが、ルーツを辿れば同じ場所に住む同郷の民である。しかし、2000年にわたって戦争と大国間の思惑に巻き込まれ、衝突が起こってしまった。両者とも土地に対する正統なつながりと権利を有し、外部の世界の、お互いの、また自分自身の犠牲となってきた二つの民族の戦いが「パレスチナ問題」なのである。

    本書は、新イスラエル基金のCEOダニエル・ソカッチによって書かれた、パレスチナ人とイスラエルの関係を紐解く一冊である。ソカッチ自身はアメリカのリベラルなユダヤ人社会の出身で、多くのアメリカ人と同様に、イスラエル―パレスチナ紛争をめぐる議論については長いことイスラエル側の物語に接してきたという。しかし、彼はイスラエル及びパレスチナに幾度も足を運び、現地の人々の活動と地域の情勢を目の当たりにしながら、中立的な目線で当問題を論じている。

    本書の前半パートは、パレスチナ・ユダヤ人・イスラエルの歴史の説明だ。
    世界史を学んだ人には周知のことだと思うが、もともとパレスチナにはユダヤ人が住んでいた。そこから、
    ローマの支配によるパレスチナからの離散→ヨーロッパでの迫害→シオニズム運動→バルフォア宣言を始めとするイギリスの二枚舌外交→ホロコースト→イスラエル建国→パレスチナへの回帰とアラブ人との衝突
    という道筋を辿る。この本流に加えて、各時代の出来事について都度補足説明をしながら、「パレスチナという地に何が起こったのか」を詳細に述べていく。

    後半パートは歴史的事実を前提に、「イスラエルについて話すのがこれほど難しいのはなぜか?」を語っていく。筆者はこのテーマを論じるにあたって「イスラエル人とパレスチナ人の紛争を解決することの最大の障害は、政治的想像力の欠如ではなく、政治的意志の欠如だと思う。もっと簡単に言えば、イスラエル人もパレスチナ人も、誰もが平等な権利と安全を保障されるべきだ。この紛争の当事者には、こうした権利に値するのは一部の者だけだと考える向きもあるが、それは間違っている」と言及し、あくまで(自分なりに)中立の立場にいることを念押している。それは在住しているアメリカの政治思想があってのことだ。アメリカにおいては、とかく「イスラエルが正しい」「パレスチナ(ハマス)が悪い」と断じられがちで、二国間の裏にある事情を理解しないまま語られることが多いからだ。

    例えばイスラエルとアメリカの関係について。イスラエルは準西洋国家と言っても良いぐらいアメリカにべったりなのだが、その背景には、ユダヤ人がキリスト教圏ではずっと迫害される立場であった、そんな中唯一寛容な態度を示してくれたのがアメリカだった、という歴史的経緯がある。ユダヤ人がホロコーストという惨劇を経験して自分たちの国を手に入れた姿は英雄そのものであり、アメリカのユダヤ人にとっては、イスラエルは間違ったことをするはずのない正しき国だったという。ただ実際には、イスラエルは非武装のパレスチナ人を射殺したり、隣国に積極的に戦争を仕掛けに行ったりしている。
    要はイスラエルもパレスチナ人も、両者絶対正しいということはなく、両者絶対間違っているということもないのだ。しかし、イスラエルは他国の政治的イシューに絡めとられやすく、右派左派様々な陣営が、イスラエル問題を自らに優位なポジションへと単純化して語りたがる。これがアメリカにおいて特に顕著に表れている、というわけだ。

    それにしても、なぜイスラエルはここまで厄介な問題を抱えているのか?それは出来事の歴史について意見が分かれ、現在その地域を揺るがしている問題をどう理解するかで意見が分かれているからだ。イスラエルの建国の歴史を聖書から現在に至るまで紐解いてみれば、パレスチナ人とユダヤ人に起こった悲劇と、本人たちの力ではどうしようもならなかった「政治的惨禍」が、二者間の問題を複雑にしていることが理解できるだろう。
    ―――――――――――――――――
    私の主観だが、日本人はパレスチナ問題については「イギリスの策略によってユダヤ人がパレスチナ人から土地を奪った」という認識が強く、ややパレスチナ寄りの目線を持っていると感じる。ただ、その認識は知に基づくよりも無知に基づくものだ。例えば、
    ・ユダヤ人がエルサレムを追放されてから、各地(特にキリスト教圏)で迫害を受けてきたこと
    ・WW2のホロコーストを前に、迫害を受けたユダヤ人を受け入れてくれる国は無かったこと
    ・ユダヤ人の受け入れに尽力してくれた国はアメリカぐらいだったこと
    ・絶滅の縁に立っていたユダヤ人にとって「イスラエル建国」は唯一の希望の光であり、彼らはこの可能性にすがるしか道がなかったこと
    など、ユダヤ人側が受けた苦難に対しては理解が及んでいない部分があると思う。

    日本は、G7の中で一番パレスチナ問題から遠い国である。仏教国家(非キリスト教)、東洋(非西洋)、敗戦国である日本は、紀元前から続くユダヤ教とキリスト教の諍い、ユダヤ人排斥とそのバックラッシュによるイスラエル建国、といった歴史の動乱に絡むことはなかった。その意味では、主要国家の中で最もフラットにイスラエル問題を語れる国でもある。本書を読んで理解を高め、俯瞰的な目でパレスチナ問題を論じれるようになりたいものだ。

    ―――――――――――――――――
    【まとめ】
    0 まえがき
    イスラエルーパレスチナ紛争は本質的に、歴史家のベニー・モリスが「正義の犠牲者」と名付けた者同士の闘争だと思う。
    つまり、両者とも土地に対する正統なつながりと権利を有し、外部の世界の、お互いの、また自分自身の犠牲となってきた二つの民族である。それは土地をめぐる紛争であり、記憶と正統性をめぐる紛争でもある。生存権をめぐる紛争であり、自己決定権をめぐる紛争でもある。生き延びることに関する紛争であり、正義に関する紛争でもある。それは、その信奉者が完全に「正しい」と見なす相容れない語りをめぐる紛争である。

    本書は、この論争を支配しがちな2つの陣営、つまり「イスラエルは常に正しい」派と「イスラエルは常に間違っている」派のどちらにも与しない。中立的な立場に立ち、なぜパレスチナ問題が複雑なのかを解説していく。


    1 ユダヤ人、パレスチナ人、イスラエルの歴史
    ・すべての始まりはヘブライ語聖書から。創世記15章18節で神がアブラハムになす約束、つまり「あなたの子孫にこの地を与える」という記述をもとに、ユダヤ人とユダヤ教は「イスラエル(ヨルダン川西岸とガザ地区含む)は我々の土地だ」と信じてきた。
    ・ユダヤ人が飢饉によってパレスチナからエジプトに避難するも、エジプトで奴隷化。その後出エジプトによってパレスチナに戻る。
    ・紀元前1000年ごろ、ダビデがユダ王国を建国、エルサレムに首都を置く。息子ソロモンがエルサレムの中心部にユダ王国を建国する。
    ・紀元前63年ごろ、ローマによりユダヤ帝国が征服される。イエスが処刑され、ユダヤ教の異端派であるキリスト教が誕生する。ローマに対してユダヤ人は反乱したが、鎮圧され、多くのユダヤ人が追放、ヨーロッパやアフリカに散り散りになった。
    ・キリスト教の支配するヨーロッパにおいてユダヤ人は究極のアウトサイダーであり、教会は(実際にキリストを殺したこともあって)ユダヤ人を敵視していた。多くの地域で迫害と暴力が繰り返された。

    ・1880年代、世界各地に離散していたユダヤ民族が、母国への帰還をめざして起こした民族国家建設の運動、通称「シオニズム」が盛んになる。
    ・シオニズムによってユダヤ人がパレスチナに戻ろうとするも、ずっと今まで住んでいた「パレスチナ人」がそこには存在している。
    ・638年に新興のイスラム帝国がパレスチナを征服すると、19世紀までにほとんどの住民がイスラム教に改宗した。それ以降、パレスチナの住民の多くは基本的に自らをより大きなアラブ世界の一部とみなすようになった。
    ・シオニズムの拡大を受けてパレスチナ人はアラブ・ナショナリズムを展開。シオニズム運動に反対の立場を取る。

    ・WW1中、イギリスがバルフォア宣言(パレスチナにおけるユダヤ人の自治を認める宣言)とフサイン―マクマホン書簡(アラブの独立を支持する書簡)を交わす。一方、ロシアがサイクス―ピコ協定(戦後に、中東をフランスの支配地域とイギリスの支配地域に分割する協定)の存在を暴露。中東情勢が一気に混迷化する。
    ・WW2でファシズムが台頭すると、ユダヤ人のパレスチナ移住が加速し、アラブ人とユダヤ人の関係がさらに悪化していく。アラブ人と自国の関係悪化を重く見たイギリスは、ヨーロッパのユダヤ人のパレスチナへの避難を禁止する。当時、ヨーロッパのユダヤ人を受け入れる国は世界のどこにもなかった。
    ・WW2によるホロコーストが、シオニズムの道筋を変える。イギリスはユダヤ人とアラブ人の双方から向けられる暴力や反乱に疲弊し、分割問題から手を引いた。同時に、ユダヤ人虐殺への同情が世論を動かした。国連がパレスチナを2つの国家――アラブ人国家とユダヤ人国家に分割する決議を採択した。このときのパレスチナの人口は約180万人で、3分の1がユダヤ人、3分の2がアラブ人。
    ・1948年5月14日、ユダヤ民族評議会議長で新生イスラエルの初代首相、ダヴィド・ベン=グリオンによる新国家樹立宣言がされる。イスラエル独立。
    ・1948年、イスラエルと、イスラエル建国に反対する周辺国(エジプト、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク)の間で第一次中東戦争が勃発。翌年に終結する。イスラエルが「歴史的パレスチナ」の領土の78%を領有、ヨルダンがヨルダン川西岸と東エルサレムを、エジプトがガザ地区を獲得。パレスチナ人は何も得られなかった。第一次中東戦争をパレスチナのアラブ人は「ナクバ(大惨事)」と呼んでいる。

    ・1964年、中東では反イスラエル派のエジプト大統領ナセルが存在感を増し、アラブ世界の英雄たる地位を確立していた。彼の支援を受けてパレスチナ解放機構(PLO)が創設される。PLOは「イスラエルだけでなく、住民の大半がパレスチナ人であるヨルダンもまた、PLOが建国を目指すパレスチナ国の一部になる運命にある」と主張し、アラブ世界をさらに混乱させた。その間も、すべてのアラブ諸国が反イスラエルのプロパガンダを掲げていた。国民の士気を鼓舞し、自国における自由と機会の欠如から目をそらす手段として依然として有効だったからだ。
    ・1967年6月5日、ティラン海峡を封鎖されたイスラエルが、エジプトに攻撃を仕掛け、ほんの数日でエジプト軍を壊滅させた。第三次中東戦争(六日戦争)である。イスラエルは東エルサレムをまたたく間に征服し、ヨルダン川西岸の古都も掌握する。さらにシナイ半島も掌握し、イスラエルは一気に広大な領土を手に入れた。
    ・エジプトのアンワル・サダト大統領がイスラエルと和平交渉を行い、シナイ半島のエジプトへの返還と引き換えに二国間の関係を正常化した。

    ・1980年代、イスラエルは占領地の締めつけを強化しはじめた。1977年にリクードが権力の座に就くと、入植地の建設は急速に進んだ。ユダヤ人しか住めない新たな入植地が、ヨルダン川西岸とガザ地区全体に広がりはじめると、パレスチナ人が住む町や村は相互に分断され、耕作地は食いつぶされた。
    ・パレスチナ人は日々差別を受け、イスラエルの入植者や兵士から暴力を振るわれていた。占領地のイスラエル人に対してパレスチナ人は「インティファーダ」と呼ばれる民衆蜂起を行い、多数の犠牲者を出した。
    ・1993年、オスロ合意によってイスラエルとパレスチナが和解。ヨルダン川西岸とガザ地区に自治政府を一定期間置くことが決定。ヨルダン川西岸の占領地は三地域に分けられ、それぞれ異なる体制でパレスチナとイスラエルが管理することになった。
    ・2005年にガザ地区からイスラエル軍が撤退し、ハマス(過激派イスラム教徒のパレスチナ人による組織)が同地区を掌握する。ここから現在まで、イスラエルとガザの間で激しい戦闘が繰り返されている。
    ・2007年、イスラエルがガザ地区を封鎖。米国が仲介する和平交渉も、2014年に中断。


    2 建国の父、ダヴィド・ベン=グリオンの言葉
    イスラエルの建国の父でありイスラエル人から最も尊敬される人物、ダヴィド・ベン=グリオンは、パレスチナ(現在のイスラエル)のアラブ人の恐ろしい苦境と尽きることのない怒りを十分に理解していた。
    彼はかつてこう語っている。「たしかに、神はわれわれにその地を約束してくれたが、彼らにしてみればそれが何だというのだろう?反ユダヤ主義、ナチス、ヒトラー、アウシュヴィッツなどが現れたが、それは彼らのせいだったのだろうか?彼らが目にしているのはただ一つ。われわれがこの地にやってきて、彼らの国を奪ったということだ」。

    1967年の六日戦争の勝利とその余波のさなか、危険信号を察知したイスラエル人が何人かいた。国を覆っていた勝利の高揚感のなか、ほぼ伝説と化したある人物が、自ら選んだ隠居生活から再び姿を見せて、奇跡的な勝利に我を忘れないよう国民に釘を刺した。この人物曰く、国民は征服したばかりの土地を持ち続けるわけにはいかない。占領した地域は(東エルサレムとゴラン高原を除いて)できるだけ速やかに返還しなければならない。さもないと、必死で築いてきた国が崩壊する恐れがある。イスラエルは民主主義国家とユダヤ人国家の両立を果たせなくなる。
    その人物こそイスラエル初代首相、ダヴィド・ベン=グリオンだった。

    彼は「イスラエルのナショナル・アイデンティティには主要な三つの要素がある」と語った。これを筆者は「ベン=グリオンの三角形」と呼ぶ。
    まず、イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。次に、イスラエルは民主主義国家である。最後に、イスラエルはこの新しい占領地をすべて保有する。
    イスラエルはこのうち二つを選ぶことはできるが、三つ全部は選べない。そして、この選択によって、イスラエルはどんな国かが決まる。イスラエルが新しい占領地を併合し、支配下にあるパレスチナ人に完全な市民権を与えれば、多数派というユダヤ人の地位が脅かされる。イスラエルが占領地を正式に統合し、パレスチナ人に市民権を与えなければ、もはや民主主義国家ではない。
    ベン=グリオンに言わせれば、唯一にして第3の選択肢は、民主主義国家でありユダヤ人国家であり続けることだ。そのための唯一の方法が、占領地を手放すことだったのだ。

    しかし、残念ながら1967年のイスラエルに、「御老体」呼ばわりされていたベン=グリオンの言葉に耳を貸すものはいなかった。


    3 なぜ双方の言い分が食い違うのか
    パレスチナ人とイスラエル人の子供たちは、何世代にもわたって自分たちだけが国土の正当な所有者だと教える地図を見て育ってきた。主権と領土に関する思い込みこそが、新たな世代の紛争と嫌悪を生み出す。
    考古学もまた紛争地帯だ。ユダヤ人もパレスチナ人もこの土地と結びついていることを明示する実際の歴史的・考古学的根拠は豊富であるにもかかわらず、その多くが、説得力に富む歴史的主張を裏づけるためだけでなく、「相手方」の結びつきを否定するためにも利用されてきた。


    4 イスラエルとアメリカ
    何世代もの間、イスラエルとアメリカのユダヤ人コミュニティは蜜月の関係を結んできた。しかし、その関係はもはや瓦解し始めている。
    ユダヤ人は現在のアメリカ合衆国に植民地時代の初期から存在しており、この地に初めてやってきたのは17世紀前半のことだった。アメリカのユダヤ人もときには差別と反ユダヤ主義を経験したものの、ヨーロッパのユダヤ人が受けたような、政府とキリスト教会の後押しによる恐ろしく暴力的な仕打ちではなかった。アメリカが建国以来負っている罪は人種差別であって、反ユダヤ主義ではない。ここでは、ユダヤ人はたいがい安全だった。ここでは、歴史上のどの場所よりもユダヤ人が受け入れられた。生き延びたのみならず、繁栄したのだ。

    戦後、アメリカのユダヤ人コミュニティは突如、ユダヤ世界の中心となったことに気づいた。ヨーロッパの古く偉大なユダヤ人コミュニティはことごとく消え去った。パレスチナのユダヤ人コミュニティは成長しつつあったが、きわめて不安定で、助けを必要としており、いまやアメリカのユダヤ人には手を差し伸べる用意があった。ヨーロッパのユダヤ人はほぼ壊滅状態だったし、世界の自由主義国家は、アメリカも含めて、ユダヤ人が困窮しているときに避難所を提供しようとしなかったため、アメリカのユダヤ人の大半が、ユダヤ人国家は倫理的に正しく、かつぜひとも必要だと考えるに至った。危機に瀕するユダヤ人のために、どこでもいいから安全で堅固な避難所をつくるというシオニズムの考えは、いまや安全で幸せなアメリカのユダヤ人にとってさえ素晴らしい考えだと思われた。
    ひとたびイスラエルが建国されると、この新しい国を支援し防衛することが、アメリカのユダヤ人コミュニティにとって重要なこととなった。同化、受用、異民族との結婚によってアメリカのユダヤ人コミュニティの伝統と慣習は放棄されつつあったため、イスラエルへの支援は、ユダヤ人としてのアイデンティティ形成のための強い動機になった。

    アメリカのユダヤ人にとって、イスラエルは間違ったことをするはずのない、誇り高き国だった。だが、第一次レバノン戦争で、イスラエルの戦車がアラブの首都を包囲し、住民に砲弾を撃ち込むのを見た。また、第一次インティファーダで、非武装のパレスチナ人にイスラエル兵が銃弾を浴びせる光景を見た。しかし、アメリカのユダヤ人コミュニティはイスラエルに対していかなる批判も口にせず、強力に支援し続けた。
    だが、オスロ合意の崩壊によって、両者の溝と食い違いが明らかになった。そもそもイスラエル人はアメリカのユダヤ人コミュニティ――裕福で高学歴なリベラルと違い、保守派の集まりであった。世界の二大ユダヤ人コミュニティは彼らが信じていたほど思想を共有しておらず、イスラエルのどんな姿勢や行動にも賛同する、とはなり続けなかったのである。

    アメリカのユダヤ人のイスラエル離反を加速させたのは、2016年のドナルド・トランプの当選と、彼とネタニヤフとの蜜月関係である。
    トランプとネタニヤフは共に右翼のエスノナショナリズム的ポピュリズムを推進し、それまでは受け入れられなかった人種的偏見に満ちたイメージや言葉を、政治的利益のために積極的に利用し、民主的な制度と規範をあからさまに軽視し無視した。加えてトランプは福音派の支援者から支持を取り付けるため、後ろ盾となるイスラエルの権益を重要視しており、ネタニヤフの望むことを何でも叶えた。アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムへ移し、ゴラン高原におけるイスラエルの主権を認め、アメリカはもはや入植を非合法と見なさないと言明し、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの一方的併合への青信号となる「和平案」を発表した。
    アメリカのユダヤ人はトランプに我慢がならなかった。国内外における白人ナショナリズム・反ユダヤ主義の黙認とネタニヤフの迎合を目の当たりにして悟った。「イスラエルは、もはや自分たちの考えには無関心なのだ」と。


    5 入植地の問題をどう解決する?
    イスラエル以外のほぼすべての国が、イスラエルの入植は国際法違反であり、占領国が自国の民間人を占領地域に移送することを禁ずるジュネーヴ第4条約に違反すると見なしている。イスラエルはこれに異論を唱える。ユダヤ人とこの領域との歴史的つながりを持ち出して、1967年以前にヨルダン川西岸の領有権を認められた国はなかったのだから、イスラエルを占領国と見なすことはできないと主張している。したがってジュネーヴ条約は適用されない、という言い分だ。
    イスラエルがヨルダン川西岸の全域あるいは一部を併合すれば、とてつもなく大きな問題を自ら作り出すことになる。すなわち、ヨルダン川西岸に住む230万人のパレスチナ人をどうするかという問題だ。もしも彼ら全員が平等な権利を持つイスラエル国民となれば、数百万人の新しい有権者がイスラエルを「パレスチナ国家」に変える票を投じるだろう。しかし、併合してもそれら数百万人のパレスチナ人に市民権と平等な権利を与えなかったり、小さな飛び地をパレスチナの自治居留区とし、イスラエルに併合された領土で囲んだりすれば、イスラエルはもはや民主主義国ではなくなる。それはアパルトヘイトだ。

    こうした選択肢に直面して、イスラエルの指導者の大半は現状維持を選んできた。入植地を拡大し続けて粛々とイスラエルの社会構造に統合していく一方、占領地の最終的な政治的地位をどうすべきかという問題は避けている。しかし、半世紀以上も続く占領、その間にイスラエルが占領地に町や都市を建設し、かなりの割合の民間人をそこへ移動させて住まわせる占領を、本当に一時的と呼べるだろうか?そして、それらの入植地が拡大を続けるなか、この現状をいつまで維持できるだろうか?
    現在、パレスチナ人は「二国間解決の支持」や「投票権の要求」によって問題解決を目指している。

  • 「アメリカのリベラルなユダヤ人社会の出身」で「あらゆるイスラエル人に民主主義と平等をもたらすべく活動する新イスラエル基金のCEOを務める」著者が、(「イスラエルは常に正しい」派と「イスラエルは常に間違っている」派のどちらにも与しない)中立的な立場からイスラエル―パレスチナ問題を語った書。古代からの長い紛争の歴史を紐解き、こんにちの主な論争を丁寧に紹介している。イスラエル問題を概観するのに適した良書。

    著者は、「イスラエル人とパレスチナ人はどちらも正しく、どちらも間違っている――どちらも、自分ではどうにもならない力の、お互いの、自分自身の犠牲者なのである」と語る。

    イスラエル建国について著者は、長年迫害され続けてきたユダヤ人に手を差しのべ安全な暮しを約束してくれる国が全くなかった中で、自力で国家を作るという決断を行ったことは(たとえ追い出されたパレスチナ住民に多くの不幸をもたらすものだったとしても)苦渋の選択として正当化され得る、という。自力で生存権を獲得した、ということだったんだな。

    今日、イスラエル国内のアラブ系国民(イスラエル国籍を持つパレスチナ人)は約190万人を数える。イスラエルが占領し続けるヨルダン川西岸地区には230万人に及ぶパレスチナ人が住んでおり、迫害され続けている。パレスチナの人々への人種差別が最大の問題だということ、よく分かった。

    イスラエルと中東諸国の関係が比較的良好だから、パレスチナ紛争も収まってきているのかと勝手に思っていたが、むしろ民主主義の後退とやエスノナショナリズムや新権威主義の台頭などの世界的潮流の中で、イスラエルも右派ナショナリスト政権が続いており、ユダヤ人とパレスチナ人の対立はより深刻化しているという。オスロ合意が目指した二国家解決(パレスチナ人は自らの独立国家を獲得する)が実現する見込みも立たない。

    トランプ政権がイスラエル問題に与えたインパクトも計り知れないんだな。トランプ大統領が古代ペルシャのキュロス大王のようにイスラエルとユダヤ人に救済をもたらすと信じられていたとは驚きだ(「トランプがイスラエルに尽くす一方で不作法な振る舞いをすればするほど、彼がイスラエルのための人間だという印象が強ま」るという)。「もしトラ」とか「ほぼトラ」とか言われているが、トランプ大統領が復活したら、イスラエル―パレスチナの対立はより先鋭化してしまうのだろうか?

    イスラエルとアメリカのキリスト教福音派の関係も興味深かった。イスラエルを擁護するキリスト教福音派の天啓史観によれば、「ユダヤ人のイスラエルへの帰還と国家建設が「イエス・キリストの帰還が近いことを示す聖書の預言の成就」」なのだという。科学全盛の現代にあって、「ハルマゲドン」や「最後の審判」を信じている勢力が国際社会を動かしているなんて、ちょっと信じられないな。

  • 各紙誌の書評が反響を呼び増刷!『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 | 株式会社NHK出版のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000714.000018219.html

    『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター
    https://bookmeter.com/books/20582737

    【書評】 『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 ダニエル・ソカッチ 著/鬼澤 忍 訳 - キリスト新聞社ホームページ
    http://www.kirishin.com/book/61387/

    New Israel Fund (NIF)
    https://www.nif.org/

    イスラエル 人類史上最もやっかいな問題 | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000819332023.html
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    Michiyo Kさんの本棚から

  • 斎藤美奈子氏の「世の中ラボ」で紹介されていたので読んでみた。著者はアメリカのリベラルなユダヤ人コミュニティで育ったユダヤ人。1990年代前半にはイスラエルで暮らした。現在はサンフランシスコ在住。パレスチナの紛争は、黒でも白でもなく、グレーだという。

    イスラエル-パレスチナ紛争については長いことイスラエル側の物語に接してきた。しかしパレスチナ人、さらにいえばイスラエル人も代弁はできないが、既存のものよりバランスのとれた細やかなアプローチを示すことができる、との弁。「イスラエルは常に正しい」派、「イスラエルは常に間違っている」派、どちらにも与せず、イスラエルに関して事態は黒でも白でもないと理解する手助けがしたい。要するにグレーである。

    数年前、カリフォルニアでユダヤ人主催のキャンプでイスラエルの歴史について語った後、11歳のブランドンが言った「つまり、僕は生まれた時からずっと自分の家で暮らしてきた。ひいお祖父さんもそのずっとずっと昔のまたひい祖父さんも。ある日畑に出て家に帰ってみると、この人(隣に座っていた子)とその家族が僕の家の半分で暮らしている。『僕たちは遠く離れた町を追い出されたんだ。でもここは僕のひいお祖母さんのそのひいお祖父さんがはるか昔くらしていた場所なんだ』・・ってことで、どちらも正しいが、どちらもほかにいくところがない。こんな感じでいい?」・・なるほどこの紛争の核心をついている、と僕はブランドンに言った。

    パレスチナ人とは?
    最近の研究では、パレスチナ人は何世紀にもわたってパレスチナに存在してきたさまざまな民族や文明が混ざり合って生まれたのであり、そうした民族の中には聖書に登場する古代の住民も含まれている。この土地に住む人々は、時と共に、最も支配的な集団の宗教(土着、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)や言語(ヘブライ語、アラム語、アラビア語)を選んできた。・・対立している当の人々は、つまりユダヤ人の子孫なのである。

    パレスチナ・・4世紀から7世紀は大半がキリスト教に。638年にイスラム帝国がパレスチナを征服すると19世紀までにほとんどの住民がイスラム教に改宗しアラビア語が主要言語となる。それ以後パレスチナの住民の多くはアラブ世界の一員とみなすようになった。

    特に出エジプトの前はどうだったのか?が分からなかったので歴史の部分を読んだ。この本や他の本によると、旧約聖書の話にもなるが、ユダヤ人は元はメソポタミアの地に住んでいたが、神の声がありカナンの地・パレスチナに移ってきた。が飢饉などがありエジプトに移住した。が力をつけたユダヤ人を恐れたエジプト王に奴隷にされてしまった。そこでモーセが「出エジプト」を行い、再びカナンの地に戻った。
     パレスチナではダビデ、ソロモンといった王が出てユダヤ人の王国が栄えた。だがその後バビロニアに攻められ連行された(BC587バビロン捕囚)、その後ペルシアによって戻されるも、ローマ帝国が勢いを増すと、属国となり、反乱をするが(AD66-70)負け、国外追放され、ここから離散が始まった。


    斎藤美奈子、世の中ラボ
    https://www.webchikuma.jp/articles/-/3379

    ダニエル・ソカッチ:社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO「新イスラエル(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向にかかわらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外されたマイノリティの利益とアイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、イスラエルが近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持することなどを目標に掲げて活動している。

    2021発表
    2023.2.25第1刷 図書館

  • 人種、民族、宗教、文化、歴史。
    あると言えばある。
    実態はないと言えばない。

    人が集まり、緩く、厳密な定義を持たせないことで、なんとなく成立する物語。
    中には、先鋭的に解釈して文字通り人を殺してでも、自らの物語の筋書きを貫くものもいる。
    周囲との調和を目指すものもいる。

    人は木の股から生えてはこない。
    一人で成人することもできない。
    親、社会、他者から、言葉を、生活を、文化を与えられて育つ。
    それら、全ての偏りから自由には生きることはできない。
    なんという不自由さだろう。

    幸せなことに、今自分の周囲において、人種だの国家だの文化だのが原因で、殺したり殺されたりの連鎖があるわけではない。

    しかし、自分とテロリスト、教条的な信仰などを持つ人の間に、なにか本質的な違いがあるわけではないように感じる。

    もう少し考えていくべきテーマなのかな、と思う。

  • 著者は、アメリカで生まれ育ったユダヤ系アメリカ人である。”あらゆる”イスラエル人に民主主義と平等をもらたすために活動する「新イスラエル基金」のCEOでもあり、同基金は、パレスチナやイスラエルの平和で公正な社会の構築と維持を目標に掲げている。

    本書の構成は大きく2部に分かれており、第1部で旧約聖書の時代から現代に至るまでのイスラエルの歴史を概観し、その土地で今なお続くアラブ人とユダヤ人の争いについて説明する。地理、歴史、紛争の概略を詳細に紐解くことで、この問題について語る「準備」をすることが目的だ。
    第2部ではイスラエルをめぐるやっかいな論争のいくつかを検討していく。イスラエルと民主主義について、イスラエル人とパレスチナ人の未来について、イスラエルとアメリカの関係性とその変化について、それらややこしく、迂闊に語れば論争に火が付く問題を出来る限りフラットな目線で概説してくれる。
    その他、著者の経験がコラムとして書かれていたり、挿絵も豊富なので、情報の密度は高いものの言葉は平易だし、じっくり読めば決して難しくはないだろう。

    こうしてその全体像を見ていくと、例えばイスラエルの建国の父であるベン=グリオンが提唱した「ベン=グリオンの三角形」というこの国のアイデンティティについての考え方や、あるいは1993年のオスロ合意など、歴史を良い方向に変える可能性はどこかに残っていたのだと感じてしまう。歴史にイフは無いと言うけれど、ならばなおさら、和平のプロセスがどこで、なぜ、終了し崩壊してしまったのか。それを知ることに価値はあるはずだ。

    ネット上にはこの問題について概略をまとめた記事が多くあり、簡易的に知る際には役に立つだろう。それでも事態の混迷度は本書副題にある通り、まさに「人類史上最もやっかいな問題」なほど込み入っており、より深く理解するために書籍という媒体はやはり強い。

    私はイスラエル問題に関する本を読んだのはこれが初めてで、上記したように作者はアメリカのリベラルな社会活動家なわけだが、それを踏まえても、本書はイスラエルーパレスチナ紛争について出来るかぎり「中立的」で偏りのないポジショニングがとれていると感じた。それは本書の基本的な姿勢として、「イスラエルが正しい」という主張と「イスラエルは間違っている」という白黒はっきりさせた論説には与しないことからスタートしているからだ。イスラエルとは要するに「グレー」なのだと。

    いまガザ地区で何が起こっているのか、なぜそうなってしまったのか、この問題についてどのような人がどうアプローチしているのか。これですべてが理解出来たとも、網羅されているとも思わないが、フラットな意識を持って知ろうとすることは重要なことだろう。

    読めば読むほど解決方法など無さそうに見えて暗澹たる気持ちにはなるが、本書の最後の章に書かれているイスラエル人とパレスチナ人の問題を解決し、共存の道を探っている人たちの言葉には勇気をもらえる。

  • 他の方々と同様にハマスへのイスラエルによる報復のニュースをみて、パレスチナ問題への問題意識と関心を持つきっかけなり本書を手に取る。

    今までの歴史的背景をつぶさに解説し、多角的にこの問題の紛糾する理由、非常にナイーブな立場の軋轢を提示されている。今までのあいまいな理解を整理することができた。

  • イスラエルの問題は複雑で根が深くて本当に難しい。最新のニュースから得た断片的な表層の情報だけでは分からない事も時系列で詳しく説明されている。最後に掲載されているインタビューはイスラエルの希望だった。こういう人達の活動にももっとスポットが当たって欲しい。

  • 繰り返される戦争、決裂する和平交渉、日本人にとってあまりに複雑なイスラエル−パレスチナ問題を深掘りする本である。おそらく一読して分かる内容ではない。ただ中東の石油依存を深める日本人にとって決して避けては通れない、そして知らなくてはならない問題だ。

  • 2023年10月にイスラエル問題が再び激化した事によって、この本を読み始めた。

    この本を読んでいる間はイスラエルに関する、日本のニュース、YouTubeの動画、Xの情報は見ないようにしていた。偏った情報を入れない為に。

    著者はユダヤ系のアメリカ人のようだが、読んだ限りでは、あまり知識の無い自分でも、イスラエル、パレスチナ、両者の目線に立った公平な視点で書かれている気がした。

    この他にも関する本を読みたい。
    色々なメディアの取り上げ方にも触れ、またこの本に戻ってみようかなと思う。

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著者プロフィール

社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO、「新イスラエル基金(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向に関わらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外された少数派の保護、およびあらゆる形態の差別と偏見をなくし、すべての個人と集団の市民権と人権を確立すること、イスラエル社会の本質的な多元性と多様性を認識し、それに対する寛容性を強化すること、マイノリティの利益とアイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、自国および近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持すること、などを目標に掲げて活動している。妻と二人の娘と共にアメリカ、サンフランシスコに在住。

「2023年 『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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