平和と危機の構造: ポスト冷戦の国際政治 (NHKライブラリー 1)
- NHK出版 (1995年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140840016
感想・レビュー・書評
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なぜ世界の国々で内戦が頻発しているのか、そういう疑問を持って本書を読み始めました。1980年代後半、米ソの冷戦が終結し、今までくすぶっていた内戦が表立って問題になるようになってきました。内戦については、それぞれに歴史的、宗教的、民族的な問題があり、原因を一つに定めることはできません。解決の方法も何が最善かは分かりません。しかし、我々が平和だからそれでよいというわけにはいきません。現地に向かえば危険が伴います。実際、国連の要請で派遣された秋野さんが、タジキスタンという異国の土地で命を落とされたということはみんな聞いているでしょう。でも、我々に何ができるのかを考えていかなければいけません。その際には必ず歴史的背景を知っておかなければならないでしょう。我が日本国は、アジアにも属さず、西欧にも属さない。しかし、それらの両方の文明を併せ持った国と言うことができます。我々にできることはおそらく、アジアと西欧の橋渡しなのでしょう。本書は、NHK「人間大学」において放送された内容をもとに書かれています。少し古くなったので実状に合わないところもありますが、じっくり読んで考えたい1冊です。しかし、秋野さんは言っています。「本を読むだけではダメ、行動せよ。行動しなければ腐る。」
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マルクス主義イデオロギーから自由な、リアリズムの立場から冷戦後の国際政治の課題を論じている本です。
アメリカ、ロシア、中国といった国々のこれからの動向だけではなく、ポスト冷戦時代の産業や金融についても、冷静に語られています。現在でも、著者の慧眼に驚かされるところが少なくありません。
個人的には、無制限な自由貿易には賛同できないと考えていたのですが、本書に「保護主義的措置は一時的で、限定的なものであればよいのですが、それが国益の根幹にかかわるものとされると問題です」という言葉を目にして、より広いスパンで問題を考えなければならないと教えられました。
また、本書の終わりの方では、冷戦後の国際問題を語る上での準拠枠となるべき文明論的な視座についての考察がおこなわれています。リアルポリティークの枠組みでは今ひとつ問題の深いところに踏み込めないような事態が生じてきたという動向を受けてのことだと思われますが、文明史という枠組みが、国際政治の動きを解き明かす上で重要な意味を持つのかどうかということは、まだ定まっておらず、無批判にそうした議論に乗っかってよいのだろうかという疑問も感じます。