議論のレッスン (生活人新書)

著者 :
  • NHK出版
3.57
  • (30)
  • (65)
  • (74)
  • (12)
  • (4)
本棚登録 : 667
感想 : 49
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140880258

作品紹介・あらすじ

不毛な言い争いやひとりよがりの文章から抜け出したい人における「議論のルールブック」。本書を読めば、議論の構造が分かるのみでなく、会社の会議や国会中継、テレビ討論会、新聞のコラムを見る目が変わる。そして知らなかった自分の一面も見えてくる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 議論のわかりやすさのためには、一定のルールが必要という考え方から、議論は「主張・根拠・論拠」から成立するというルールを明確化し、そのそれぞれのポイントをまとめた一冊。一般的なロジカルシンキングでは、ピラミッド・ストラクチャーというようなツールを使って、主張とそれを支える根拠を階層的に構造化することで、わかりやすく伝わりやすい主張が構築されるとされる。本書が優れているのは、主張に対して客観的な事実・データなどで根拠を構築したとしても、その両者を実は結び付けている隠れた前提たる「論拠」が共通化されなければその主張と根拠は繋がらないという点を重点的に示している点にある。例えば、1つの客観的事実があったとしても、それを眺める視点により、全く異なった主張が成立する例は数多とあるし、そもそも「論拠」という形で客観的事実に意味づけをする方向性がなければ、客観的事実の収集自体が困難になる(か、もしくはただ単に意味のない事実も含めて膨大な時間を事実収集にかけてしまうことになる)。

    また、この「論拠」を語る際に、「やはり」という言葉をビッグワードとして使う人は多いが、意味合いをぼやけさせてしまうので使用に留意すべし、という意見は自分としても耳が痛かった。議論の中で何気なく「やはり~だ」というような言い方をしてしまうことが自分自身多い気がしているが、著者によれば「やはり」は主張と根拠をつなげるはずの「論拠」に自信が持てなかったりする際に、「偶然」・「無意識」・「直観」というような便利な言葉を用いるのと同じ感じでその「論拠」に妥当性を無理やり与えようとする言葉だとされる。こうした言葉に依存せずに、隠れた前提たる「論拠」を明言化し(必ずしも言葉にしなくても、きちんと言語化して表現できるレベルまで思考されているか)、考えることが重要だと感じた。

    ただし、全体を通じて議論の構造がビジュアルで見えない表記になっているので、多少のわかりにくさがある。後半で、新聞記事での社説を分析し、その議論の論証を試みる場などはピラミッド・ストラクチャーなどによるビジュアル化がなされないと、わかりにくさがあり、そうした点でピラミッド・ストラクチャーのようなツールの意味合いを再確認することもできた。

  • ○議論において、論拠(理由づけ)はほとんどの場合、表に出てきません。伏せられているのです。しかし、この論拠(理由づけ)が根拠に対して重大な役割を持っており、その根拠によって主張が支持されるのです。
    ○①議論をする際に論拠についてはそれを支持する裏づけ(Backing)を明記する。②論拠の確かさの程度を示す限定語(Qualifer)をつける。③論拠の効力に関する保留条件としての反証(Rebuttal)を提示する。
    ○観察は誰にとっても明らかに同じように生じるのではなく、それに先立って何らかの理論があり、それを通して観察していることになる。
    ○後づけならばどんな経験的事実(データ)でも最も特異な部分を見つけて、そこだけに都合のよい統計的検定を施し、自由に数値上の差を作り出せる。後づけで経験的事実(データ)を解釈すると偶然の要因を正しく評価できない。
    ○分析チェックリスト
    ①議論における論証の構造をつかむ=主張(結論)及びそれに関連する根拠を探す。
    ②根拠が経験的事実(データ)として提示されているか検討する。
    ③可能な範囲で明示されていない根拠(論拠)を推定する。
    ④書きかえ案をを提示する場合にはパラグラフ構造を書き方の基準とする。
    ⑤根拠を経験的事実として提示するための工夫を提示する。
    ⑥主張はなんらかの反論の形式になっているか検討する。
    ○パラグラフ構造(互いに関連のある複数の文書が論理的に集まり、ひとつの主張、結論にいたるために展開する論文構成の基本単位)の規則
    ①ひとつのパラグラフには一つの主張または結論しか書いてはいけない。
    ②主張はパラグラフの先頭にトピックセンテンスとして書く必要がある。
    ③トッピングセンテンスとして書かれた主張のあとにその主張をささえる根拠をサポーティングセンテンスとして書く。
    ④サポーティングセンテンスに書かれる根拠は文頭に述べたトピックセンテンスの主張と直接関係すると考えられる根拠のみを述べること。
    ⑤パラグラフの最後にコンクルーディングセンテンスとして同パラグラフで主張したトピックセンテンスの内容を再度書く。
    ○簡単なパラグラフ構造
    トピックセンテンス(TS)(主張)
    サポーティングセンテンス(SS1)(根拠1)
    サポーティングセンテンス(SS2)(根拠2)
    サポーティングセンテンス(SS3)(根拠3)
    コンクルーディングセンテンス(CS)(再度主張)

  • おもしろい。文章自体はフランクで親しみがもてるし、前半は入門編的なパートなのでサラサラ読み進めていけるが、中盤以降、中級編になってくるとだんだんレベルが上がってきて、理解するのが難儀になってくるが、(たぶん)理解できないほどではないはず。自分が議論をするため、というよりも、人の主張を聞いてそれが論理的な構造を持っているかを確認することが主眼となっているような感じなので、新聞とかテレビなどの論説に流されたくないと思っている人が読めばよいのではなかろうか。

  • 議論の流儀、構造について、解説した本。
    ・人はなぜ意見を述べたり、主張したりするのでしょうか。一つの答えは自分と異なる意見の人がいるから
    全員が自分の意見に賛成であれば、わざわざそれを主張し、論証する必要もない。意見は先行する意見にたいする「異見」として生まれ、それが具体的な形でなくても、対立する意見に対する反論という性質をもつ。
    ・主張=自分と異なる先行意見に対して発せられる反論。
    すなわち必ず反論される対象となっている。
    ・飛躍を伴わない論証は意味がない。飛躍の幅が大き過ぎると、説得力を失う。そのバランスをとりながら、小さなジャンプを積み重ねて距離をかせがなければならない。これが論証。

  • 主張、根拠、論拠、どういう論理構成になっているのか常に気をつけたい。

    少々論理学に興味を抱いた。

    まず主張があって、それを支える根拠がある。その根拠の適切さを問うのが論拠。

  • 議論をする際に組み立てておくべきことを主張されている。
    [主張][論拠][結論]
    何と何が結びつくのか、
    暗黙の了解としている部分はないか、
    常に意識しておく必要がある。

  • 議論にもスポーツと同じようにルールがある。そのルールの主役は「主張」「根拠」「論拠」。

    メモ。

    議論レベル1は日常会話、「主張」「根拠」でよい。
    議論レベル2は公の場での議論、「主張」「根拠」に加えてある程度の「論拠」を準備すること。
    議論レベル3は科学的議論、「主張」「根拠」に加えて、データに基づく「論拠」の議論が中心となるもの。

    高校でアメリカ人教師からライティングの授業で習った「パラグラフ構造」がそのまま掲載されており、昔習ったことはこれか、と再発見できて嬉しかった。

  • 「やはり」のあやうさ。議論の明確さ、構造化。

  • やはり「論拠」を示すのが肝心なのである。何故ならどこから来てどこへ行くかというストーリーを伝えるということが主張することだからだ。データは客観的でなく恣意的な主観的に左右されるとかコロンブスの卵的指摘が多い。要再読。

  • 時間があれば

全49件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

早稲田大学名誉教授(2022年6月現在)

「2022年 『新たな法学の基礎教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

福澤一吉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×