登山不適格者 (生活人新書)

著者 :
  • NHK出版
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140880722

作品紹介・あらすじ

中高年の登山ブームで、山はかつてないにぎわいを見せている。その陰で無知や無鉄砲、甘え、過信による山の事故も増えている。ジーンズに運動靴スタイルの人、雨具やヘッドランプを持たない人、いままで何もなかったのは「運がよかった!」。本書を読んで、山を「安全に」楽しんでいただきたい。

感想・レビュー・書評

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  • 中高年の登山ブームに警鐘を鳴らす本。 著者は NHK の中高年登山講座の講師で登山家。 昨今の登山ブームで山が賑わっているが、散歩やハイキング気分で参加している人も多い。 たとえ低い山や優しいコースであっても、山を甘く見てはいけない。モラルを守り、装備や準備を怠りなく行なって登山することが大切と説く。 そのためのノウハウ、意識の持ち方、気象の把握、装備や食料、登山計画、山小屋の使い方、健康管理や危機管理など、自身の経験を踏まえて紹介する。
    この本は約20年前に刊行されたものだが、現在も中高年の登山ブームは続いている。 装備品や道具、電子機器の発達により、以前より山が身近に感じられるようになった。しかし中高年の遭難のニュースは後を絶たない。この本が刊行された当時より装備も進歩して、スマホやGPSが使えるようになった安心感で油断もあるのだろう。 また百名山ブームで、目標達成を急ぐあまり無理をしているのかもしれない。 自分の身は自分で守る。 他人に迷惑をかけないと言う基本的な所から見つめ直す必要がありそうだ。 そのためにもこの本を読む価値はあると思う。 自分は登山はしないけれど、今後、山に登りたくなったら再読したいと思う。

  • まだうっとうしい梅雨は明けない。
    つい先日、富山に出張したおり、人影まばらな夜の駅のホームに降り立つと同時にくしゃみが出た。冷んやりした空気に刺激されたのか、それとも誰かが良からぬ噂をしているのか…どうも今年の冷夏は疑う余地がなさそうだ。
    車窓から青く伸びた稲の穂先を眺めながらの帰途、岩崎元郎の「登山不適格者」(NHK出版)の頁をめくった。勝手な偏見に違いないが、僕にとっての著者の像は、登山を商業主義の世界に変えてしまった張本人ともいうべき印象が強く、どうにも好きになれなかった。
    …が、どうしても認めないわけにはいかないものがある。それは著者の卓越した文章力。「登山不適格者」は昨今にない“名著”である。世のふがいない登山者を内外からずばりと“斬った”その勇気に拍手を送りたい。登山者であると自負する読者は「えい、やー!」と“斬られ”ないように。ちなみに少し長いが以下の引用を読んで“斬られて”しまった人は「登山不適格者」の称号を与えようではないか。いやー、痛快、痛快。
    ―山の会というのは、山好きな人たちで構成されているとはいえ、自分たちが登ることを最大の目的にしている団体なのである。登山スクールではない。知識や技術を教わることを目的に入会しようとするのは大きな間違いだ。
    体力のない人、技術のない人は、申し訳ないが足手まといでしかない。経験豊かなベテランは、リーダーにはなってくれても、ガイド役を引き受けたわけではない。うまく頼み込めば、一日ぐらいはゲレンデに同行してくれて、ロッククライミングの手ほどきをしてくれるかもしれない。が、それは山の会の先輩としての義務感であり、山仲間への友情から生まれた厚意なのだ。山の会の仲間は決してインストラクターではない。
    自分の体力は自分で鍛えよう、自分の技術は自分で磨こう―。これが山の会の基本である。この認識に立っていなければ、山の会とのいい関係が築けるはずがない。(中略)また、入会した組織で、ペースや志向の合う仲間と出会えないようなときは、ムリして会にとどまらずに、別の集団を探すべきだ。その方が、自分自身にとっても、山の会にとっても、結果的には得策なのだから。


  • 自分の山行を振り返るきっかけとなる1冊。
    なるべく美しい自然を保ちつつ、安全で快適な山行を目指すのには必読。2020年も変わらない。

  • なかなかショッキングなタイトルだが、山で見かける・山にいがちな、心得不足・準備不足・勉強不足な“不適格者”を挙げ、そういう人は山に来るな、とやっつける本(という体裁を取りながら、もちろんそこに気を付けて楽しく意義深い時間を山で大いに過ごそう、という啓蒙書である)。

    著者は、ヒマラヤ遠征隊長などの経験があり、NHKの入門番組で講師を勤めたこともある、ヤマ界では著名な人。

    その内容は山への心構え、装備・食料や読図などの事前準備、自己を知り、他者への思いやりを知れ…というようなものだが、単なる入門書から一歩踏み込んだ警句、傾聴すべき先人のバランス感覚がちりばめられている。

    ウチみたいに、ちょっと山歩きを囓り始めてイイ気になっている初心者はぜひ一読すべき本だろう。

  • この本の問題は、登山不適格な人はこの本を読まない、ということ。

  • 山ガールやトレイルランニングといった山ブームが到来していますが、本書では軽い気持ちで山に入る人達に対して時に厳しく、時に優しく基本的な技術やマナー、最低限身につけるべき知識などについて記した本です。
    非常に勉強になりました。

  •  本書の初出は2003年だが、著者はその頃から中高年や初心者による登山の危険さに警鐘を鳴らしてきた。
     刺激的なタイトルは大げさでも何でもなく、10年近くたった今も、登山に対する啓蒙はあまり進んでいない感覚がある。むしろ”山ガール”ブームによって、さらに「登山不適格者」が(山ガールだけでなくその連れも含めて)山に押し寄せている気がする。

     本書は、頭の固い山男が書いた本ではなく、「昔はよかった」風の思い出話でもなく、山行に関わる準備から山行中の注意点に至るまで、苦言を呈しながらも辛抱強く解説してくれている。山岳会やクラブ活動などの先輩から、きちんとした技術や知識を教わらないまま気軽にハイキングに出かけている人は、耳の痛い話があれば、素直に従った方が自分のためにもなる。
     ただ、最近の山道具やウェア類の進化はすさまじいので、本書で書かれた内容を基本としておさえた上で、ショップや雑誌でさらに勉強した方がいいだろう。

  • タイトルは「登山不適格者」だが、登山を始めたい人の入門書的な一冊。
    最近、「こんな格好で大丈夫か?」と思う登山者を良く見かけたり、単独で来ていた高齢者が転倒していたり、山で「ひやっ」と感じる機会が増えている。

    こういう本がないと、基礎的なことってわからないんじゃないかな。大学山岳部でもここまで教えられる先輩なんかもいなくなってるのかもしれない。登山を始めたい人、まだ自信の無い人などは是非読みたい一冊です。

  • [ 内容 ]
    中高年の登山ブームで、山はかつてないにぎわいを見せている。
    その陰で無知や無鉄砲、甘え、過信による山の事故も増えている。
    ジーンズに運動靴スタイルの人、雨具やヘッドランプを持たない人、いままで何もなかったのは「運がよかった!」。
    本書を読んで、山を「安全に」楽しんでいただきたい。

    [ 目次 ]
    序章 山は危険か?
    第1章 日本人の登山意識
    第2章 気象と装備
    第3章 食料
    第4章 パーティー
    第5章 山行
    第6章 読図
    第7章 計画
    第8章 山小屋
    第9章 健康と危機管理
    第10章 「不適格」の烙印は誰が押すのか?

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    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • とあることがきっかけに自分の登山を見つめ直すために読みました。登山に限らず、色々なことに通じる、初心忘るべからずを痛感しました。

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