悲しんでいい 大災害とグリーフケア (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883556

作品紹介・あらすじ

自分が抱えた悲しみから目をそむけず、人の悲しみからも目をそらさず、悲しみを希望に変えるにはどうしたらいいのか?人間の弱さに共感し、相手の人生を全面的に肯定するグリーフケア。日本社会全体が喪失感に覆われている今、阪神・淡路大震災から東日本大震災までの、悲嘆の現場に寄り添い続ける第一人者が、その限りない可能性をやさしく説く。

感想・レビュー・書評

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  • 心の傷は1人では癒せない
    悲しみとのつきあいかた

  • ☆悲しみに添い遂げて

  • グリーフケアという言葉を学ぶ入門には最適。
    大災害だけでなく、人と寄り添うときの心構えを学べる本。

  • 悲しんでいいという高木先生の実際はかなり明るかった。
    楽しんでもいい。遊んでもいい。
    悪い感情を出してはいけないと押し込めて苦しんでいた心がホッとするでしょう。
    すべて悲嘆のプロセスとして受け止めてよいということ。
    ただこれができる人は相当できた人かも。普通の人は縁を切る。
    因果応報や生まれ変わりは子どもの死とは短絡的に結びつけられないし追い詰めることもある。

    悲しみの向こうに人は生まれ変わる。

  • 東日本大震災後に刊行された本。自分の中の悲しみのをどうしたらよいのか、やさしい語りかけの文で書いてある。突然の不幸に直面した人の内面についても書いてあるので、自分の大切な人が悲しみの中にあるのを助けたい人にも読んでほしい。

  • 被災者や余命宣告をされた患者等に対するグリーフ(悲嘆)ケアの最前線で活動されている高木慶子さんが、阪神淡路大震災、福知山線脱線事故、東日本大震災でのケア体験を主な軸として、悲しみを乗り越えることについて説く。
    誰にでも読みやすいやさしい表現を使い、さらに著者自身の体験が脚色されることなくありのままに書かれているため、胸に迫ってくる。
    一方的に有難いお話を聞いただけという感想に終わることがないのは、末期ガンの宣告(のちに誤診とわかるが)や、阪神淡路大震災の被災経験といった高木さん自身の体験を包み隠さず読者に話してくれているからだろう。

    自分自身が悲嘆にくれる時、また、自分の大切な人が悲嘆にくれている時にどう行動したらいいのか。後者は特に難しい問題だ。
    よかれと思っての言動が、相手を傷つけることもある。高木さんの書く被災者にまつわる赤裸々な体験談は、やさしい文体の一方で、私にはかなり衝撃的だった。一枚の年賀状が人を傷つけることもある…。

    心に寄り添うこと。ともにあること。
    とっても難しいことだと感じたが、もし周りの大切な人が悲嘆にくれている時には、この本に書いてあったことを実践していきたい。

    生きていれば誰にでも訪れる悲嘆。
    まだ若いからか、つい目をそらしてしまいたくなるテーマだが、今こそじっくり向き合うべきだろう。

    科学的検証にとらわれることなく、自らの生の体験を通して、心の底から悲しむ人々に寄り添うということを伝えてくれるこの本は、悲しみをテーマとしていながら、あたたかさも感じる素晴らしい本だった。

  • 思いもかけない大災害は、私たちから多くのものを根こそぎ奪っていく。そんな状況にいる人たちに私たちはいったい何ができるのか。東日本大震災のあと、多くの人が直面した問題ではないでしょうか。何かしたいけど、何もできない焦燥感。
    でも実際何かができるかということではなく、基本的には心を寄せられるかということが一番大事だったのですね。
    悲嘆にくれる人をありのままに受け入れる。
    簡単にできることではありません。そしてその人自身が立ち上がるとき、そっと支えること。
    私もあなたも一人ではない、きっと誰かに支えられて生きているのですから。

  • 【東日本大震災関連・その⑰】
    (2011.08.01読了)(2011.07.20借入)
    グリーフケアという言葉を初めて知りました。
    「さまざまな喪失体験から生じる「負」の感情を、グリーフ(悲嘆)と呼びます。」(10頁)
    「大切なものを失ったときの悲しみとどう向き合えばいいのでしょうか。さらに、隣人の悲しみにどう寄り添えばいいのでしょうか。そして、お互いに支えあいながら、どうやって悲しみの日々から立ち直っていけばいいのでしょうか。この本では、こういったことについて、読者のみなさんとご一緒に考えていきたいと思います。」(4頁)
    グリーフケアとは、悲嘆からの回復という意味です。
    悲嘆から回復するためには、「悲しんでいい」のです。悲しんで、その悲しみを乗り越えた先に、新たな喜びが待っているのです。(14頁)

    章立ては、以下の通りです。
    第1章、「癒しびと」なき日本社会
    第2章、心の傷は一人では癒せない
    第3章、弱っている自分を認める勇気
    第4章、「評価しないこと」と「口外しないこと」
    第5章、老若男女、それぞれの喪失体験
    第6章、小さな希望でいい
    終章、ほんとうの復興のために

    ●悲嘆を引き起こす原因(24頁)
    1、愛する人の喪失 ― 死、離別(失恋、裏切り、失踪)
    2、所有物の喪失 ― 財産、仕事、職場、ペットなど
    3、環境の喪失 ― 転居、転勤、転校、地域社会
    4、役割の喪失 ― 地位、役割(子供の自立、夫の退職、家族の中での役割)
    5、自尊心の喪失 ― 名誉、名声、プライバシーが傷つくこと
    6、身体的喪失 ― 病気による衰弱、老化現象、子宮・卵巣・乳房・頭髪などの喪失
    7、社会生活における安全・安心の喪失
    ●突然の別れ(28頁)
    災害によって大切なものを失った人の悲しみは、病気などで家族を失ったご遺族のそれに比べて、回復までに時間がかかるといわれています。その理由は、「お別れ」の時間を与えられることなく、無理やり関係に終止符が打たれてしまうからです。
    ●心のケアとは(37頁)
    阪神・淡路大震災の後、「心のケア」という言葉は社会的に定着しましたが、「何をどうケアするのか?」ということについては、あいまいなまま今日まできてしまったのかもしれません。
    ●悲嘆ケア(41頁)
    「あなたを一番支えてくれたものは何ですか?」という質問に、約6割のご遺族が家族と答えています。ところが、「震災体験(阪神・淡路大震災)を話す相手」をたずねてみると、一番多かったのは家族ではなく、友人や親せきなのです。
    自分が背負った深い悲しみを表に出せる相手、言い換えれば、悲嘆の感情を受け止めてくれる癒しびとというのは、家族よりも心を許せる第三者のほうがふさわしいということです。
    ●ケアする際の好ましくない態度(94頁)
    1、忠告やお説教など、教育者ぶった態度。指示したり、評価するような態度
    2、死という現実から目を背けさせるような態度
    3、死を因果応報論として押しつける態度
    4、悲しみを比べること(子供の死は配偶者との死別より悲しいなどとする見方)
    5、叱咤激励すること
    6、悲しむことは恥であるとの考え
    7、「時が癒してくれる」などと、安易にはげますこと。もっぱら楽観視すること
    ●心のケアとは(95頁)
    心のケアとは、あれこれ世話を焼くことではありません。必要なのは言葉や行為ではなく、相手の方と時間と空間を共有することです。
    ●グリーフケア・ワーカーの守らなければならない原則(102頁)
    第一の原則「評価しないこと」
    第二の原則「口外しないこと」
    ●何歳で人の死を理解するのか(142頁)
    日本の子供たちは6歳になると、約80%は「人の死」というものがわかるという結果が出ている
    三歳児くらいでは、「自動車は動くから生きている」と答える子供もいますが、四歳、五歳になると、生きものは何かということがわかってくる。そして、生きものが死ぬということもわかりはじめ、五歳児の70%くらいは「ペットは死ぬ」「お父さんも死ぬ」と答えます。でも、自分とお母さんは「死なない」のです。この段階では、子供にとっての死は「なくなってもいいもの」と同じような意味なのですね。
    これが六歳になると、「ペットも死ぬ」「お父さんも死ぬ」「お母さんも死ぬ」「僕(私)も死ぬ」と答えるようになります。
    ●必ず回復する(162頁)
    悲しみと上手に向き合うことさえできれば、人は必ず回復することができます。その力は、誰の心の中にも秘められているのです。

    ☆関連図書(既読)
    「喪の途上にて」野田正彰著、岩波書店、1992.01.24
    「わが街」野田正彰著、文芸春秋、1996.07.20
    「復興の道なかばで」中井久夫著、みすず書房、2011.05.10
    (2011年8月7日・記)

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著者プロフィール

1936年熊本県生まれ。上智大学グリーフケア研究所特任所長、上智大学特任教授。聖心女子大学文学部心理学科卒、上智大学大学院神学研究科博士前期課程修了。博士(宗教文化)。病気や災害、事故などで家族を亡くした遺族を対象とするグリーフケアの実践に携わり、長年、その第一人者として活躍。著書に『死と向き合う瞬間』、『喪失体験と悲嘆』、『輝いて人生』(日野原重明と共著)、『悲しみの乗り越え方』、『それでも人は生かされている』などがある。

「2014年 『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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