マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するII: 自由と闘争のパラドックスを越えて (NHK出版新書 620)
- NHK出版 (2020年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140886205
作品紹介・あらすじ
人気沸騰の哲学者,ニューヨークで自在に語る!
NHK「欲望の時代の哲学」「欲望の哲学史」がテレビで大きな反響を呼び,これを書籍化した『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』が哲学書としては異例の3.5万部の大ヒットとなったマルクス・ガブリエルが帰ってきた! 今度の舞台はニューヨーク。資本主義と民主主義の「実験場にして闘技場」・米国の中心地で、ドイツ哲学のホープであるガブリエルは何を見、何を思い、何を語るのか?!
近年とくに自由と倫理の危機を語るガブリエルは、米国発のものの見方が危機の根源にあると見る。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ章では、一見離れた「資本主義」と「哲学史」をつないで平易な言葉で語る。
まずⅠ章で、高層ビルやブランドショップの並ぶ通りを歩きながら、そこに人々が感じる“自由”は米国の本質を表すと言う。しかしこの“自由”は「人間の意志」と「動物の欲求」を同一視してしまった結果生まれたものであり、カント以来の哲学者たちが唱えてきた「自由への意志」とは異なるもので、そのため人間は自ら人間性を破壊し始めていると説く。
次にⅡ章で、国家情勢が数値で表されることについて、そこでは「生きる意味」の重要性が見落とされていることを指摘する。人は、数値が表すような「生存の条件」よりも、「生きる意味・目的」のほうを重視しており、各人がそれを味わうことのできる「倫理的社会」の構築に向かおうと言う。
そしてⅢ章で、資本主義の新たなエンジンとなりつつある人工知能(AI)について、これが「現実を意味あるものとして認識できない」ことを指摘し警鐘を鳴らす。すなわち、現実は五感を駆使した「感覚=思考」によってこそ認識されるし、あくまで人間知性の可能性を信じる「ドイツ的理想主義」を掲げる。
最後のⅣ章は、ガブリエルの議論を収録した話題書『未来への大分岐』で見事なコーディネーターとなった気鋭の経済学者・斎藤幸平との白熱の対話。ガブリエルは日本へも言及し、待ったなしの社会問題について徹底的に議論する。「どうせ資本主義は変わらない」というニヒリズムの蔓延を痛烈に批判し、すべての活動が持続可能性を志向すべきことを提言する。
全篇にわたって、「哲学は時代との格闘だ」というガブリエルと志を同じくするNHKプロデューサー・丸山俊一が、前著『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』に続いて番組のリライトを手掛け、ガブリエルの語りを簡潔に構成して、彼の思考の”息遣い”を的確に伝える。序章と終章では丸山がガブリエルの意をくんだ解説をつけて読者へのガイドとする。
読者は、全章を貫くガブリエルの「闘志」にシビれ、共鳴していくはずだ。彼は何に怒り、どう戦おうとしているのか? 「新実在論」の旗手として世界哲学の先頭に立つ若き天才が、加速する世界経済の中心地で語る言葉にいまこそ耳を傾けよう!!
感想・レビュー・書評
-
シンギュラリティはありえないということをはっきりと言語化して説明している。
行き着くところは、我々人間とは何者であるか、ということだろう。
特に1章のSNSについては納得。もっと警戒心を持った方がいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
h10-図書館2022/03/01ー期限3/15 読了3/2 返却3/5
-
翻訳がかなり雑。直訳もいいとこ。九鬼周造についてマルクス・ガブリエルが言及しているところ、もっと掘り下げて欲しかった。あくまでテレビの企画ものか。
-
「欲望の奴隷」からの脱出
自由意志のパラドックスを解く―カントから考えた「SNS社会のワナ」
闘争の資本主義を越えて―ヘーゲルから考えた「格差社会のリアル」
思考感覚が「引き裂かれた社会」を救う―新実在論から考えた「AI社会の死角」
フェイクの共同体が壊れるとき―「複雑性の国」日本の可能性(対話者:斎藤幸平)
敵か味方かの「世界」を越えて -
前作から連続して読みました。民主主義についての話が興味深かったです。ヘーゲルを民主主義との関係で考えたことがなかったにで、新鮮でした。斉藤幸平さんとの対談もおもしろかったです。
-
個マルクス・ガブリエルと斎藤幸平の対談は、個人的に注目している2人なので、とても興味深かった。
SNSに中国、自由主義。
混沌とする世界だからこそ、科学だけではなく哲学。 -
SNSに対する見方を哲学的観点から述べている。これらは全てプロパガンダだと。一方で、中国共産党に対して、共感を示しているところに、左派全体主義の闇を感じざるおえない。
つまり自由主義が悪の根源であり、再教育が必要だと。 -
多くの感想にあるように、前半は非常にわかりやすいが、後半の章は、まだ著者が?聞き手が?明確に言語化しきれていないせいなのか、少々意味がわかりづらい。肝心なことを言っていそうなのだが…