英文読解を極める: 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ (NHK出版新書 698)
- NHK出版 (2023年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140886984
作品紹介・あらすじ
英語上級者は何を考えているのか?
英文読解のレベルをワンランク上げたいという読者に向けて、上級者向け学習書の分野で定評のある著者が、そのためのコツや考え方をわかりやすくまとめる。
感想・レビュー・書評
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英語中級者が上級者になることを目指すための本。
英検で言えば、準1級や1級取得を目指すようなレベルの人向けの本といえばいいか。
本書では、①文の構造と予測の仕方、②文章の構造と予測の仕方、③すでに持っている知識を活用して語彙を増やす方法、④言葉の使い方(英語圏の文化的背景を知る)、⑤翻訳の仕方(直訳か意訳かー情報の流れと日英語の構造の違いを考慮に入れた意訳術ー)という観点から、これらの脳力を磨くことで、英文読解の能力向上を図る方法が披瀝される。
①、②では、具体的な英文を読みながら、それがどのような構造となっているのか、またそれぞれの文章がどのような形でつながっているかを構造的に明らかにしたうえで、英文の構造から次を予測する力を養う方法が示される。
③では、単語を覚える際に、その単語の成り立ちや接辞の意味などを押さえながら覚えると意味を忘れにくいという。
ここが個人的には本書の中で、最も感心した部分。
例えば、enamoredという単語。
これは、「夢中になって、魅了されて」という意味の形容詞だが、この単語は、enという接頭辞とamorに分解できる。
enは、名詞や形容詞に付いて他動詞をつくる接頭辞で、例えば、encourage(励ます)やenrich(豊かにする)などがある。
amorはアモーレと同じ語源の「愛」という意味の言葉。
この二つが合わさって、「夢中にさせる、虜にする」という意味となる。
このほかにも、月を表す英語は9月以降、本来の意味からずれているという指摘も目から鱗。
たとえば、october(10月)。
この単語は、”octo”が「8」を表す単語なのに、なぜ「10月」になるのか?
これは、ローマ暦の旧暦の名残で、当時は現在の3月から12月くらいに当たる時期に10の月が設置されており、現在の1,2月の期間に2ヶ月ほど日付のない日が続くというシステムであったことによる。
つまり、実際の言葉の意味よりも2ヶ月多い数字が、その月数となる(octo(8)が10月となるように)。
いやぁ、なかなか知的好奇心をくすぐられる内容だ。
そして、④。
これは、英語圏の人たちの文化的背景が分からないと、英語が理解できないという話しで、個人的にはここが一番、自分の理解が足らないところだということに気づいた。
本書で出てくるのは、聖書とシェイクスピア。
多くの政治家や小説家がこの両者の言葉を引用しているといい、その元の意味を知らないとそもそもその引用された文章自体が理解できなくなるという。
確かにその通りだが、どうも聖書もシェイクスピアも古い文章だからか、本書で取り上げられる文章もかなりわかりにくく、聖書までは我慢して読んだが、シェイクスピアの2~3文を読んで、あきらめた。
最後の⑤は、直訳と意訳で、どちらが、英語の原文の本質的な意味を表しているのか、という面白い考察をしている。
結論としては、これはケースバイケースのようだが、これ自体、自分にとっては新たな視点で、面白い気づきを頂いた。
このように、本書は英語について書かれた本でありながら、その内容はかなり広範な学問領域に及び、全てを理解することはなかなか難しいものの、頗る知的好奇心をくすぐる内容となっている。
また、各章の最後にある、「独習のヒント」もなかなかよい。
これは、その章で説明した内容をより深く理解するために参考となる本を紹介しているコーナーで、そこには、私の大学受験生時代の恩師太庸吉(ふとりようきち)先生(代ゼミ→駿台)の著書も紹介されていて、少し胸が熱くなった。
手元に置いて、繰り返し読みたくなる本ある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
参考になる事柄もあったのだが ...
どんなネタを開陳してくれるのかと楽しみに読んだ。いくつか知らない事柄や、参考になる捉え方もあったが、全体的に仰々しい語り口で話が展開し、どんな秘技が紹介されるのかワクワクして読み進めていくものの、期待感が高まった割に痛快なオチは無く、後味の悪い結末を迎えることを何度か繰り返した心証。「難文・長文がグッと楽しくなる!」のだろうか? 目から鱗系の類書がいくつか出ていると思うので、是非切れ味鋭いネタで続編を出して頂きたい。 -
TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00609574 -
星の数は3、5くらいが妥当である。
英語を読む上でどのように頭を働かせていけば良いのかを教えてくれる。それは例えば旧情報・新情報という情報構造であったり、対比であったり言い換えであったりする。
この本の良いところは、題材となる英文のほとんどが時事英語からとられていることである。例えばトランプやバイデンの就任演説が使われている。
各章の最後には、独習のヒントとして参考となる書籍が挙げられている。
個人的には、自分がいかに乏しい語彙力をもとに文章を読もうとしているのかということを思い知らされた。というのは、英文の中に1つでも知らない単語が含まれていると、途端に文章を読む目が曇ってしまうからである。 -
第4章が特に面白い。
この一冊で英文読解を極めるのは不可能であるが、英語に興味の湧き始めた人が手に取る一冊としては良い本だと思う。 -
全然自分は上級者を名乗れはしないのだけど、第1,2章を読んで、自分がどう英語を読んでいるのかを言語化してくれている、と感じた。英文読解を教える時にどう伝えればいいか迷っていた部分がクリアになった。
聖書やシェイクスピアなどの引用が多い、という部分も大変勉強になった。なるほど確かに今まで躓いた文は引用系が多かった。