人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (下) (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140910122

感想・レビュー・書評

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  • 生物学的視点から「政治」「暴力&戦争」「ジェンダー」「子育て」「芸術」にスポットを当てて解説した最終巻。最終章に生物学的人間の本性を見事に表現した文学を紹介。

  • 人間は空白の石版なのか?という人の本性に関わる基本部分を上巻と中巻で展開してきた著者は、下巻において具体的な例を取り上げて捕捉をしていく。性差、家族、暴力、子育てなどの具体例を通じて、人は環境に起因する気質を獲得するのとは別に、生まれ持った気質がDNA的に刷り込まれていることを説く。人の生まれ育ちに色づけをしないことは理想論のように見えるが、到達できない能力、性質、生理的反応があるということを知る上で重要なまとめという感想を持った。ちなみに、その気質がどのようなものであり、人間の本質(本性)とはそもそも何であるのかについての展開は別の著作(『思考する言語』他)に委ねられている。

  • サイエンス

  • 上中下の下巻。さいご。

    上巻、中巻であきらかになった人間本性が個別のトピックに示唆するものとはなにか、従来のかんがえのどこが間違っているかについて書かれています。

    とりあげられるトピックは「政治」「暴力」「ジェンダー」「子育て」「芸術」の5つ。
    「自分は空白の石板なんて信じていないよ」というひとでも、本書の知見にはびっくりするだろうと思います。
    たとえば「女性の職業選択は差別の結果であると同時に、女性じしんの生まれついての傾向の結果でもあるかもしれない」とか「育児において家庭環境の影響はきわめて小さい」とか。

    個人的な関心と重なるのが「芸術」で取りあげられる「サバンナ仮説」です。人間は進化の結果としてある風景–青と緑、低くて傘の広い樹木、水場…を好んでいる。という仮説です。くわしくはこのブログ(他人まかせ)→https://shorebird.hatenablog.com/entries/2014/05/25

  • 上中下3巻の大作だが非常に読む価値あり。特に育児に関する部分はずっと座右の銘になっている。「お子さまの心は真っ白なキャンバスです。お母さまの育て方次第で才能は伸ばせます。」自分はこういうのが大嫌い。心は真っ白なスレートではないのだ。しかしだからといってどう育ててもいいわけではない。子供の未来は握れないが今日幸福にできるのは親なのである。深くうなずくばかりであった。

    人は誰でも、人間の本性に関する一つの理論をもっている。
    皆、他者の行動を予測しなくてはならないから、行動の出どころについての理論を必要とする。

    左脳は左脳の関知しない状況で右脳が選んだ行動の説明を求められると、一貫性はあるが間違った説明をでっちあげる。

    「プロクルステスの寝台」−物事を一定の枠にはめ込もうとすること(山賊が旅人を無理やりベッドに寝かせ、丈に合わせて熨したり足を切ったりするという神話から)

    ゲノムの遺伝子数は、生物の複雑さとはあまり関係がない。

    「石のスープ」「石でスープをつくる」と言って材料を出させスープを作ってしまう

    サイコパスは男性の3〜4%

    限られた時間とリソースで判断を下さなくてはならず、ある種のエラーが高くつくような場合は、その人を判断する基礎として何らかの特性を使わざるをえない。そういう場合は必然的にその人をステレオタイプに従って判断することになる。

    2つの集団の重なりが非常に小さくて、片方を無条件に差別しても心苦しくない、というケースもある。
    (例外が発見される可能性はすべてのチンパンジーをしらみつぶしに調べるコストに見合うほど高くない)

    もし、才能や動因などの心理的特性に個人差がないなら、裕福な人はみな強欲か盗っ人に違いないということになる。

    自然主義的誤謬=ある特性が道徳的なら、それは自然に根ざしたものに違いないという誤謬。不自然なものは悪いという誤謬。

    仲介者の寄与はわかりにくく、しばしばピンはねや寄生虫に見られる。歴史上繰り返し見られるのは仲介者に対するゲットー化。(ユダヤ人・中国人・レバノン人・・・)

    至近要因と究極要因の混同

    「道徳的茫然自失」道徳感情
    ”よいこと”と”きれいなこと”の混同が起こりやすい

    こんにち、「社会批判と呼ばれるものの多くは、下層階級の好みを非難する一方で自分を平等主義者とみなしている上層階級のメンバーによって構成されている。

    ”「育児のアドバイス」に参ってます”

    仮に遺伝というものが存在しないとしても、親子との相関は、育児が子供の人格を形成することを意味しない。
    子供は、形成されるのを待っている画一的な存在ではない。
    親は関係がないということではない。たいていの場合、親が子供に下一番重要なことは”死なせなかった”ということである。
    それでは、親が子にどう接するかは問題ではないのか?否、親は子供に大きな力を行使し、その行動は子供の幸福に多いに影響する。
    「私たちは、子供の明日を掌握してはいないかもしれないが、今日を掌握しているのは間違いないし、明日を悲惨にする力も持っている。」

  • 160430 中央図書館
    ダイバーシティと「平等主義的左派」の緊張関係についての本。
    左派は、性差、人種、社会的階層ということについて、極端にハリネズミ的である。たとえ著名な科学者であっても、そのイデオロギーカルトにはまってしまっていると、かえって「差異」があるものを差別している、ということに自ら気づかないということだ。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784140910122

  • [ 内容 ]
    豊かな人間本性の存在を認めることは、現実問題にも新しい視野をひらく。
    暴力的な感情は進化のなかで用意されてきたもの。
    その進化の仕組みの解明は、暴力の根絶に貢献する。
    男女の心の生得的な違いを理解することで、女性差別や性暴力の撤廃が推進される。
    子どもの知能や性格の生得性を知ることは、育児の負担を軽減する。
    日常に真の現実性と元気をもたらす新しい人間観の登場!。

    [ 目次 ]
    5 五つのホットな問題―人間の本性から見る(政治―イデオロギー的対立の背景;暴力の機嫌―「高貴な野蛮人」神話を超えて;ジェンダー―なぜ男はレイプするのか;子育て―「生まれか育ちか」論争の終焉 ほか)
    6 種の声―五つの文学作品から(文学作品から人間本性を理解する;脳という物質の驚異;「結果の平等」が招くディストピア;ポストモダン教義の暗黒面 ほか)

    [ POP ]


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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 5 五つのホットな問題
    6 種の声

  • 人間についてのあくなき興味から。

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著者プロフィール

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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