- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140912027
作品紹介・あらすじ
俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一らにより、時代を超えて受け継がれた琳派の魅力はどこにあるのか?純粋な美を追求するファインアートではなく、日々の暮らしとともにある生活芸術だった琳派は、日本美の原型とも言えるデザインを生み出していった。非対称と余白の画面構成や斜線のダイナミズムなど、現代にも生き続ける琳派の大胆なデザイン原理を明解に示し、日本人が自然風土から学びとってきた美の本質に迫る。琳派芸術への新たなるアプローチ。
感想・レビュー・書評
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褒めすぎじゃないの?何でも琳派に結びつけようとしている
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安土桃山時代から江戸時代にかけて、江戸や京の庶民が創り上げた芸術で、浮世絵とならび日本人の粋・数寄と、細やかな情緒性と自然観を最も表すといわれている琳派。芸術の枠を越えて広く庶民の生活に及んだそれは、ときに生活芸術と称される。
第一章には「琳派は、西洋人における絵画や彫刻といった純粋美術とは一線を画し、生活用品から絵画まで生活空間をつくり飾る、生活美術の日本における大きな潮流であったのです」とあり、さらに日本芸術の根底にあるのが、自然礼賛という考え方で、これは人間をモチーフの中心に据える西洋芸術とは異なる点などが述べられる。
章立てが琳派に軸足をおいて、その顕著な特性を語る形式をとりつつ、うまく絵画の基本が随所に盛り込まれているので、丁寧に読むとかなり、絵画やデザインの基本がわかる体裁がお得。
あたしも琳派には惹かれるひとりだ。ただ当時それを実際に生み出したひとたちは、たとえそれを学問の見地から解き明かしたものがあったとしてもそれを伝える方法がなかっただろうから、逆に今、実際には生活から離れた完全な芸術としてしかそれに触れ合えないわれわれが「生活」芸術たるそれを座して学ぶのは、やや面映くもある。
ちなみにこれを功罪といっていいのか、現在の西洋芸術には、本来まさに生活に密着し、人を飾るためのジュエリー分野に、飾るためのジュエリーが存在する。非常に精巧に作られ、かつ豪華に装飾されつつも、身につけるものではなく、そのものの美しさを楽しむものとして扱われ、ひとつのマーケットを形成している。その一番のメリットは、ジュエリーでありつつも「身につける」という制約(重すぎる、極端な凹凸がある、サイズなど)から離れられるがために、伸び伸びと贅の極みを謳歌しうることにある。逆に日本には、そのマーケットすら存在しない。
ま、そう高い鉱物に恵まれなかったからハイジュエリー文化がそだたなかったこともあろうが、どうもわたしは、端的に住宅事情も大きく、生活芸術の発達に貢献したのではないかと疑っている。狭い長屋や共同生活から生まれた文化が、生活と切り離した完全な芸術に結びつくとはちょっと考えづらい。特に日本は欧米とは違って木造家屋なため、火事などの人災によっても完全にものは失われる。そのときに生活用品以外の高価な芸術品に思いが及ぶとは考えられず、畢竟優先順位の問題で、オールインワンの発想になった、そもそも合理性から派生した文化なのではないか、と。
火事が日常茶飯事だった江戸、あるいは政治の中心にあった歴史から常に紛争や諍いに巻き込まれていた京都。その性格はどこか、大きな力(火事、政治)を諦念しつつもそれを跳ね飛ばして粋にやろうぜ、という、ほんとうの意味での庶民の強さにあったのでは、と、あたしは(勝手に)思うわけ。
あたしが琳派を愛するのはつまり、豪華さと完成度ももちろんだけれど、これが庶民から生まれたからこその洒脱と強さ、元気が匂ってくるからだったりするんだよね。
ちなみにあたしは遠近法でご飯が三杯いけるくらいのジオラマ好きなので、昔、なんで日本画にその技法がないのかな?だってできないはずないじゃん、例えば同時代の運慶・快慶の彫刻はあそこまでリアルなんだよ?なんでなんで?って思っていた。全部をありのままに写す西洋画と違い、日本画は平面にすることで現実すなわち時間や空間などを超越した完全な理想郷を映し出すことができるからだと知って、少しわかった。たしかに宗教画にも一部、そういった技法は存在するし、ある種ピカソなどは逆に三次元を素直に二次元化しようとしたという部分、類似性がなくもないのかもしれない。今でもあたしはジオラマ好きだけれど、でも、日本画のマインドもすきだな、そんな風に思ったりもした。
・・・ちなみに日本の歴史のこの、時代の名付け親って誰なんだろうか。安土桃山、なんてなんだかそれだけで桃色・桃源郷というイメージで、目にしただけですでに、馥郁たる香りが匂い立つかのようじゃあないか。なんかいいなあ~。たまらなく日本がスキだって感じるのは、こんなときだ。 -
琳派がいかに近代西洋のデザインに影響を及ぼしたかについて述べられた本。思ったより琳派自体への言及が少なく、後半は日本のサブカルチャーと西洋文化の関わり(もちろんその源は琳派だと言っている)になっていったのが、少し期待はずれだった。琳派について学ぶには物足りないかな。
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貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784140912027 -
芸術にかこつけて作者のクソみたいなニッポン万歳思想を脳みそに強制的に叩きこまれるクズ本。21世紀にもなってルサンチマン全開のオヤジ慰撫史観を見せられるとは思いもしなかったよ……。
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琳派に対する作者の思い入れがすごい!20世紀の芸術やデザイン、グラフィックなどすべてにリンパの影響が見られると書かれている。
平成25年4月25日読み終える -
日本の歴史の中で琳派が、いかに生成され西洋美術に影響を与えたか解説した良書。
前半では、華道茶道、禅といった詫び寂びの下地から琳派が誕生し浮世絵に影響を与えるまでの流れを解説。後半では、西洋美術が写実に限界を感じていた時に出会った琳派と浮世絵がその後の作家にどうのような影響を与え多を指摘。著者はデフォルメやコラージュといった表現手法は、すでに琳派の中に見て取れると述べている。
再認識させられたのは、琳派が装飾性を持ったインダストリアルデザインであるということ。琳派がヨーロッパに波及するまでは、純粋芸術と比較して工業デザインはレッサーアートに分類されており、琳派がその価値観を変えたと指摘している。