- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140912423
作品紹介・あらすじ
日本人は、稲作・米食を自国文化の基層をなすものとして誇りにしている。だが、イネの品種から栽培方法、米の調理法、食べ方、信仰まで、アジアの稲作文化には、私たちの想像を超えた多様性が存在する。約四〇〇〇年前より、アジア全域に広がった稲作と米食は、その後、各地域においてどのように展開し、現在どうなっているのか。本書は、稲の起源を追い求め、30年にわたって海外調査を続ける著者が、その成果を紀行文としてとりまとめた一冊。インド・ヒマラヤから、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、中国まで-アジアの稲作文化の全容を臨場感豊かに描いていく。
感想・レビュー・書評
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☆アジア各地の稲作・米食
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農学博士による、東アジアにおける稲と米の研究結果をまとめたもの。純粋な研究結果というよりも、研究旅行記といった方が的確かもしれない。書かれているのは、インド、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、中国の6カ国。研究結果も興味深いが、旅行記部分も楽しく読めた。
「世界には、世界三大穀類と呼ばれる種類がある。米、小麦、トウモロコシの三種で、額面上の生産高はトウモロコシが一位である。しかし、トウモロコシは家畜の餌として消費されたり、アルコールに加工されたりする分が多く、直接人の口に入る分でいうと、じつは米が世界一多く食べられている穀物なのである」p12
「(米栽培には大量の水が必要)1キロの米を作るのに使われる水の量は3トンにもなるという」p13
「(どこでも外食できるわけではない)自由に外食できる環境とは、食べるものに満ちあふれている特異的な環境である」p30
「ここ30年足らずの間に南京の米はずいぶん美味くなった」p258
「(ハイブリッドライス)市販の種子を播いてそれから次世代の種子を得ようとしても、ある場合には彼らは種子をつけず、また仮に種子をつけても、それらを播いてももはや同じ性格のものが出てくることはない。それらの品種は「エフ・ワン」といって、毎世代専門業者の手になる種子を買い続けなければならない。なぜなら、彼らがもともと「他家受粉植物」といってほかの株の花粉でないと受精できない遺伝的な仕組みをもっているからである。植物には他家受精するものと自家受精するものとがある。稲や小麦のように自家受精するものでも、他家受精でできた株のほうが自家受精でできた株よりもよく育つのだ。この原理を雑種強勢という。その詳しいメカニズムはわかっていない」p266