- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140912669
作品紹介・あらすじ
新世代の書き手による、ウィトゲンシュタイン哲学への最上の入門書が誕生!
哲学史に決定的なインパクトを残した独創的な哲学者として、また、奇行の多い天才の典型として、比類なき評価を得ている孤高の人物について、その波瀾に富んだ生涯と独特の思索の全体像をつかむ、初学者向けの理想的な1冊。一般には"転向"とされる「前期→後期」の変遷も、「像(Bild)」という概念に沿って原典を読み解くことで統一的に理解し、ウィトゲンシュタインのラディカルな思考がもつ本質的な可能性を見出す。手稿・手記の精密な翻訳を手掛けた経験のうえに、身近で秀逸な比喩によって難解な原文のエッセンスを的確に伝える懇切丁寧な解説を実現した。21世紀のウィトゲンシュタイン入門書はこれで決まり!
(予定)
序章 嵐のなかの道標
第一章 前期の軌跡
1節 『論理哲学論考』はいかにして生まれたか
2節 『論理哲学論考』とはいかなる書物か
3節 語りえないものたち①――論理
4節 語りえないものたち②――存在
5節 語りえないものたち③――独我論、実在論
6節 語りえないものたち④――決定論、自由意志論
7節 語りえないものたち⑤――価値、幸福、死など
8節 使い捨ての梯子としての『論考』
文献案内① 著作の生成プロセス、前期にまつわる文献
第二章 後期の方法と目的
1節 哲学への回帰の道
2節 ケンブリッジへの帰還
3節 「像」による幻惑としての哲学的混乱
4節 哲学的混乱の自覚を促す道
5節 前期ウィトゲンシュタインが囚われた「像」
6節 規則のパラドックス、言語ゲーム、家族的類似性
7節 「形態学」という方法論――ゲーテからウィトゲンシュタインへ
8節 創造的、臨床的、触発的
文献案内② 後期にまつわる文献
第三章 鼓舞する哲学
1節 晩年に向かう10年の歩み
2節 後期の主題の断片①――心
3節 後期の主題の断片②――知識
4節 後期の主題の断片③――アスペクトの閃き
5節 鏡と勇気
6節 嵐に立つ者たちに
文献案内③ 講演、日記、伝記、概説
あとがき
人名索引
感想・レビュー・書評
-
難しかったですが、ある程度は理解できました。
世界は偶然の集まりであるから、未来はなるようになる。その可能性こそが人間の幸福だと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
-
2023.11.1読了
-
今年度1番です。
一つの像に囚われず、様々なアスペクトを検証すること、それに自覚的にあろうとおいう実践を胸に留めおこうと思います。
構成として、ウィトゲンシュタインの生涯と彼の思想の変遷を重ねて描かれている本書は、非常に読みやすいと思います。個人的にはかなり刺さりました。 -
この本自体は分かりやすかったけど、ウィトゲンシュタインの哲学が面白いとは思えなかった。科学、数学が発展する中で哲学が重要性を失っていく時代に起きた話と感じた。哲学界では重要な話かもしれないが、世の中全体での重要性はよく分からなかった。
-
9/3
-
関係者の誰が悪いのか、もっと入門向けにできる筈
-
2022/01/04 23:05
ウィトゲンシュタインは、やっぱり難しそうだからということで、なかなか、読んでみようとは思えなかったのだが、この本のおかげで、一度は読んでみようと思っている。
今回は図書館で借りて読んだのだが、参考になる文献案内もついているし、やっぱり購入しよう。
色々と瞠目させられる解説が多くあったのだが、最後の最後で、いまの自分には下記が一番心に刺さったように思える。
P301
人生が耐え難くなると、状況が変化することを人は思い描く。だが、最も大切で有効なのは、自分の態度を変えることだ。しかし、我々はこのことをほとんど思いつかない。そういう決心をするのは極めて難しい。
自分の態度や立場、考え方といったものを変えようと決心するのは、我々にとっては極めて難しいことだ。それは一面では、いま自分がどのような見方に囚われているかや、他にどのような見方がありうるかに気づくこと自体がそもそも難しい、ということでもある。しかし他面では、気付いてもなお、実際に変える意思を持つのは難しい、ということでもある。我々はいまの自分を惜しみ、変わることを恐れる。それゆえ、勇気がここで必要になる。 -
この本を通して得られるのは、まずウィトゲンシュタインという人物の人となりである。提唱者がどんな人間だったのか、を知ることは哲学に必要なのか?と思う人もいるかもしれないが、少なくとも私はこの本を通してウィトゲンシュタインという人がどんな人間なのかを知れたことで一層、ウィトゲンシュタインの哲学の深みが増したように感じた。浮世離れした天才ではなく、孤独で、悩む人。様々な行動も含めて俯瞰したことで、それらを経て発せられた言葉をどんなトーンで受け取ったらいいのかが少しわかった気がした。
次に得られるのがウィトゲンシュタインの哲学の骨の理解である。一つひとつの書を深く理解するための梯子になるような骨の理解。ウィトゲンシュタインの思考を貫く重要な要素が、平易に、わかりやすく、でも理解を妥協しないような文章で綴られている。ウィトゲンシュタインを「わかった気にさせる」本はいくらでもあるが、この本は「これからわかろうという気持ちにさせる」ものだと思う。ここで得られた骨の知識があれば、ウィトゲンシュタインの著書に臨める気がしてくるのだ。そういう意味で「はじめてのウィトゲンシュタイン」、入り口としての機能を担う一冊なのではないかと思った。
特に後期ウィトゲンシュタインの哲学において何度も出てくる重要な要素に「連関」「見渡す」というものがある。多くの具体を見て、目を移していくことで、これだと決めつけずに物を見、探求し続けるという姿勢だ。この本ももしかしたら、ウィトゲンシュタインという存在へのアプローチとして、「連関」「見渡す」を実行できるような構成にしてあるのかもしれない。様々なウィトゲンシュタインの側面を見ることで、ウィトゲンシュタインが立体になる。素晴らしい本だと思う。