物語としての旧約聖書: 人類史に何をもたらしたのか (NHKブックス 1283)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912836

作品紹介・あらすじ

【「はじめに」より】 聖書には、旧約聖書と新約聖書があり(略)旧約聖書のほうは、大小39の書から構成されています。そのほぼ半分は古代イスラエルの先祖たちの物語や王国の歴史記述ですが、預言者たちの言葉、イスラエルの民が詠った詩歌、さらに短編小説を思わせる物語や人生を省察した作品などがそこに加わります。聖書と呼ばれるので、堅苦しい宗教的な教えを思い浮かべる方もおられるかもしれませんが、そこには人間味あふれる物語が少なくありません。(略) ユダヤ教の聖書がキリスト教に受容されることにより、旧約聖書に伝わる思想の多くもキリスト教へと引き継がれました。唯一神観、自然観、歴史観、人間観など、キリスト教思想の多くは旧約聖書に由来します。それだけではありません。ユダヤ教やキリスト教を介して、旧約聖書の物語や思想はイスラム教にも受け継がれました。初期のイスラム教徒が自分たちを創世記に物語られるアブラハム(イブラヒム)の子孫と理解したことなどは、その一例です。 旧約聖書を残した古代イスラエルの民は、紀元前1200年前後にパレスチナに定住した弱小の一民族でした。紀元前1000年ころに王政に移行したあとも、彼らは弱小の民であるがゆえに、南のエジプトと東のメソポタミアに興ったアッシリアやバビロニアといった大国のはざまで翻弄され続けました。王国は南北に分かれ、北王国は紀元前七二二年にアッシリアに滅ぼされ、南のユダ王国は紀元前586年にバビロニアによって滅ぼされ、主だった人々は失ってバビロニア捕囚民となりました。捕囚から帰還した紀元前6世紀後半以降、エルサレムを中心とする彼らの地はペルシア帝国の一属州になり、ペルシア帝国が滅亡してからは、エジプトのプトレマイオス朝の、またシリアのセレウコス朝の支配下に組み込まれました。旧約聖書に記されたもっとも新しい時代は、マカベア戦争と呼ぶ、ユダヤの民が蜂起し、セレウコス朝に独立戦争を挑んだ紀元前二世紀前半です。その後、独自の王政が敷かれた時期もありますが(略)反ローマ独立戦争に敗れたユダヤの民は故地を失い、世界に散在する民(ディアスポラ)となるのです。 古代イスラエルのこのような歴史のなかで、旧約聖書は書き記されました。そしてそれが、ユダヤ教成立の基礎となり、キリスト教誕生の土壌となり、イスラム教にまで浸透しました。当時の古代オリエントの強大国に翻弄され続けた弱小の民が残した旧約聖書は、こうして、その後の宗教の歴史にはかりしれない影響をおよぼすことになりました。それは人類宗教史に生起した一大逆説と呼びうるような現象です。(略) 本書では、ヘブライ語で伝わる旧約聖書にもとづき、古代西アジア文明地の一隅に歴史を刻んだイスラエルの民が伝える物語をたどりながら、そこにたたみ込んだ思想と信仰の特色を探ってゆきます。それによって、人類の宗教史にはかりしれない影響をおよぼしえた旧約聖書の秘密の一端を、また旧約聖書のもつ今日的意義の一端を明らかにできれば、と願っています。

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  • 天地創造ー人間と自然の調和:七曜制 非神話化 被造物 神の姿似 人間中心主義 大地に仕える エデンの園 ー人は塵から造られ塵に帰る:楽園追放 息吹 生命の木  カインの末裔ー都市文明への批判的視座:不条理 確執 牧羊→農耕 バベルの塔 大洪水ー現代的意味:唯一の神 アブラハムーおそれとおののき ヤコブとその子らー神の摂理 出エジプトー苦境からの解放 カナン定住ー嗣業の地の配分 ダビデとその後ー翻弄される王国 預言者の言葉ー時代批判と将来への希望 預言者群像ー素顔と個性 小さき者たちの神ー様性と逆説性

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著者プロフィール

1948年生まれ. 専攻, 旧約聖書学・古代オリエント学. 現在, 立教大学文学部教授.
著作:『古代メソポタミアにおける死者供養の研究』(ドイツ語版, 1985),『創成神話の研究』(編著, リトン, 1996), 『ギルガメシュ叙事詩』(編訳, 1996), 『創世記』『エゼキエル書』『ルツ記』『コーヘレト書』旧約聖書Ⅰ, Ⅸ, ⅩⅢ(1997−98), 『歴史と時間』歴史を問う2(編著, 岩波書店, 2002), 『古典としての旧約聖書』(聖公会出版, 2008),『古代メソポタミアの神話と儀礼』(岩波書店, 2010), 『この世界の成り立ちについて──太古の文書を読む』(ぷねうま舎, 2014)『新装版 ギルガメシュ王の物語』(ぷねうま舎, 2019)ほか.

「2022年 『バビロニア創世叙事詩 エヌマ・エリシュ  』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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