司馬遼太郎スペシャル 2016年3月 (100分 de 名著)

著者 :
制作 : 磯田 道史 
  • NHK出版
4.12
  • (12)
  • (15)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 144
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142230600

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 多様性尊重のうえに自己確立 磯田道史著『司馬遼太郎スペシャル』.
     「100分 de 名著」番組テキストが、「100分 de 名人」に転じたかの、感.
     没後20年を期して、一作品を論ずる内容が作家一人(いちにん)を論ずる視野を示す.

    戦国、維新、戦中・戦後.
     4作品を軸にその関連深い作品も、豊富にとりあげる.「なぜ日本は失敗したのか」「なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか」.
     著者は、司馬の戦争体験に思い馳せつつ、そこを思いめぐらす.

     『国盗り物語』は、「日本陸軍の『先祖』が濃尾平野から生まれてくる過程」(31p)
     『花神』は、「陸軍が誕生時にもっていたはずの合理性は
    どこへ行ったのだ」(42p)
     『「明治」という国家』は、「(薩長土肥の)この多様さは、明治初期国家が江戸日本からひきついだ最大の財産」(59ー60p)
     『この国のかたち』は、「(敗戦までの十数年)日本史のなかでもとくに非連続の世界」「『異胎」「鬼胎」=自分のこどもではあるが親に似ていない」(74&75p)

    司馬のリーダー像
     「国を誤らせない、集団を謝らせない、個人を不幸にしない」(46p).
     一方で対極にあるのは、「仲間だけでしか通用しない異常な行動を平気でとってしまうこと」(47p).
    ここを読んで、頭の痛いのは国民のほう、か?.

     筆者はまた、最も有用な財産となったのは「江戸の多様性であると司馬さんは言います」(50p)と、書く.
    本書表紙の副題には、「自己を確立して、他人をいたわるーそういう人になってほしい」、と.

     あわせて.「多様性尊重のうえに自己確立」ということなのかと、うけとめたのである、が.(日本放送出版協会 2016年).

  • 歴史文学の分類が史実に近い順番に、史伝文学、歴史小説、時代小説となっていることを初めて知った。史伝文学という言葉にいたっては今回初めて知ったし、歴史小説と時代小説の使い分けはまったく知らなかった。司馬作品はほとんどが歴史小説とのこと。

    このテキストは番組で主に扱う作品以外にもさまざまな作品を挙げてくれていて、司馬さんの考えがよくわかるし、歴史の勉強にもなる。

    恥ずかしながら司馬作品は『燃えよ剣』、『二十一世紀に生きる君たちへ』と堀田善衛との対談を読んでドラマの『坂の上の雲』を見ただけ。『竜馬がゆく』は積んだまま。

    今年が没後20年とのことで、この機会に読んでみたい。

全14件中 11 - 14件を表示

著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

磯田道史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×