都市と星〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF ク)

  • 早川書房
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117245

感想・レビュー・書評

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  • 中盤辺りまでワクワクして読めたが、後半は説明的に過去が語られ、少し残念だった。キャラクターがあまり掘り下げられておらず、作者の背景設定を見せるための存在という感じがした、

  • 面白かった。序盤からスケールの大きい謎が好奇心をかきたててくれる。アルヴィン達が地下に潜った辺りからさらに先が気になるようになった。ヒルヴァーとの友情にグッときた。

  • 銀河宇宙に進出した人類はその後滅びの道をたどり、地球にただひとつ自己完結型のユートピア都市を建設してその殻に閉じこもった。十億年の停滞を経た後、未知への探究心をおさえられない一人の若者が、ついに外の世界への扉を開く。
    冒頭からVRゲーム?が出てきて面食らった。唯一都市の設定が面白く、人間のデジタル化、千年の寿命、心象の視覚化システム、オンライン通話などなど、これが1956年の小説であることに驚くばかり。地球全土は砂漠化しており、都市の外には何があるのか。主人公に共感して興味がおさえられないまま物語は引っ張られていく。探索の舞台はやがて星々の世界に広がり、人類の精神性とその進化にまで言及される。巨匠の先見性と想像力に度肝を抜かれっぱなしだった。脳みそが拡張されるような感覚を味わえる、とにかくクッソ面白かった一冊。

  • サーガ、マスターコンピューターなど今のVRやスマートシティーに繋がる発想とそこに対する警鐘を感じることができる一冊。

  • 文庫本で500ページ程度と、とても長い訳ではないが内容ら非常に濃い。主人公と小説の世界観を一緒に旅したような、感覚となった。

    生きる意味、理想の追求の果てに何があるか、という哲学的な問いも考えさせられる一冊。

  • 「都市」は地球文明の象徴であり、「星」は未来の象徴。
    さらに、ダイアスパーは都会の、リスは田舎の象徴だと思う。田舎の人は、テレパシーで会話する。

  •  12年振りのアーサー・C・クラーク。コロナの影響でどこにも行けないゴールデンウィークだからこそ、ハードSFでどっぷりと世界観に漬かりたいと思い読むことにした。
     タイトルからは内容の想像が湧かないが、主人公である少年、アルヴィンの冒険譚といったところ。ただし、少年の冒険とそれを通じた成長を描くだけではなく、物語は人類の今後と宇宙の終焉まで見据えた壮大な物語へと発展してゆく。そのダイナミズムに圧倒される上に、人生の歩み方に関する哲学的な問いまで吹っ掛けられる心地にもなり、視覚的にも精神的にもガンガン揺さぶりをかけてくる、長期休暇に持って来いの小説だった。

     この物語の舞台は、超絶凄いコンピュータに都市の全てをコントロールされ、あらゆる苦痛から解放された都市「ダイアスパー」から始まる。管理される世界というと、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』、オーウェル『1984年』、ザミャーチン『われら』、ハスクリー『すばらしき新世界』……と、ディストピアと称されるSFを想起する。
     私もこのジャンルは大好きでよく読むのだが、読んだ感想として必ずといってよいほど思うのが、「この世界はこの世界で、幸せはあるんじゃないかな」ということだ。自由という言葉の意味などは相対的なものなのだから、自分の周りの社会や、直近の過去や容易く想像できる近未来と比較しているのに過ぎないのだと思う。そうであれば、これから先に上述したような小説の世界観が到来したとしても、それがあまりにも急激な変化でなければ、自明のものとして受容できるのではないか、と。
     で、本小説においてはその思いが極めて強かった(まあ、ざっと調べる限り、ディストピア小説なんて呼ばれていないのだけど)。ディストピア小説でよくある設定として、しっかり管理している体だけど結局崩壊する、といった世界観がある。ソ連崩壊的な。
     これと対照的に、本小説の都市「ダイアスパー」では、実に十億年もの気が遠くなるような年月を、綻びもなく維持し続けている。もちろん、不穏なことも書いてはある。そこには子どもが存在せず、失意や悲劇という過剰がない故に失われてしまった「想い」がある。都市の外に出ることに恐怖感を植え付けられている。それでも、人はそうした揺りかごですやすやと眠るような幸せの中で生活しているのだ。ユートピアと呼んでさえ良いと思う。この均衡を崩す存在としてアルヴィンがいるが、その存在すらも都市の成立時に意図して組み込まれたものであり、人類はアルヴィンのような人物が現れないダイアスパーを作れた、ということになる。
     小説の終盤でアルヴィンが自分の行動が本当に正しかったのかと自問自答する描写があるが、これも尤もなことだと思う。彼が行っているのは、見方によってはユートピアの破壊であるし、十億年単位で平和を維持できるシステムなど、現実には未来永劫出現しないかもしれない。
     巻末の解説には、「宇宙に広がり、より高度の知性を身につけようとすることこそが知的生命の証なのだ」(p.476)とあるが、そもそもこうした前提自体に違和感をおぼえてしまう。

     でも、この物語を一人の少年の物語と見るならば、アルヴィンは、心の持ち方や生きていく指針を探し求めているだけだ。ダイアスパーとリスを繋ぐことの是非は置いておくとして、彼のそうした気持ちは素敵だなと思う。アルヴィンは確かにユートピアを破壊してしまったのかもしれないが、既存の社会を最適解だと考える必要はないのだし、完全なユートピアなど望むべくもない現実世界においては、こうしたエネルギーこそが世界を動かしてゆくのだろう。
     この物語において、アルヴィンは子どもの象徴として描かれる。子どもがこうした気持ちを持つものだとするのであれば、子どもが生まれ続ける限り……生命が受け継がれてゆく限り、生命は変化し続けることを運命づけられているのかもしれない。

  • 話の運びも細かく設計されている感じがするので、読みやすいし、起承転結もはっきりしている。個人的には『幼年期の終わり』の方が話のスケールは大きくないのかもしれないけど、イメージが大きく揺さぶられる感じがして好きだけど。

  • 終わってしまった世界の話は、壮大ではあるがあまり楽しむことができなかった。もう少し年を重ねれば違う感じ方になるのだろうが。

  • 人間を含めたあらゆる物質が管理され、究極的に快適に完成された都市。その外側には何があるのか?と疑問をもつストレンジャー。彼の疑問すらも計算されたもの?という大きな謎がストーリーの根幹です。
    唯一の欠点は、10億年の進化を経て登場人物のビジュアルが現生人類とかけ離れてしまっており、映像としてイメージしづらい点。
    終盤、人類が地球から宇宙へ再出発を目指します。実はこれは古代文明のお話しで、この人類の子孫が我々である…というスジかと期待しましたがどうやら外れたようです。

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