火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117641

感想・レビュー・書評

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  • 未来の火星を舞台にしたSFではあるが、どこか寓話めいた雰囲気もある。
    達観的に、淡々と進められる「歴史」は人間の滑稽さを容赦なく映し出し、しかし同時にその温かさを奥底に感じさせる。
    地球から火星への探検、そして移住のなかで、多くの人間たちは地球に残してきた様々なものに思いを馳せる。
    戦争・宗教・科学・都市…人間が生み出し(てしまっ)たあらゆる業は、たとえ背負うに重すぎるとしても、容易に置いていけるものではないのだろう。
    人間が人間である限り、環境へはたらきかけずにはいられないのだ。
    地球人と火星人の噛み合わなさ等シニカルな視点が多いものの、詩的な表現が全てを優しく包み込んでいた。

    読んだとき真っ先に連想したのは星新一のショートショートで、どことなく感じが似ているなあと思っていたら、解説で真っ先に名前が出てきて「おお」と思った(笑)

  • 友人に勧められて読んでみました。神秘的な描写とともに語られる”記録”。直接グロテスクな表現は出てこないのに、どこかそら恐ろしく、身震いします。遠いはずなのに、すぐ未来にありそうなリアリティ。静かな火星を破壊していく地球人。火星という舞台、もしかしたらそれは地球上の、人間が壊している自然、動物、そして地球そのものを表しているのかもしれない。

  • 高校の頃に読んだことがあったけど、氏が亡くなられたというニュースを聴き、改めて全部読んだ。本当に名作だと思う。SFには疎いけど、これはSFというよりは幻想記に近いような、詩のような綺麗な本だと思う。
    短篇集からなる年代記で、時代が移りゆくにつれて火星と地球で生きる人達がどの年代でもある種切なげに描かれていた。高校の頃は「月は今でも明るいが」が好きだったけど、今なら断然「夜の邂逅」だな。素敵すぎる

  • 一旦中断していたが、最近読み直して一気に読了。人類の浅はかさとか愚かさが描かれていて自己嫌悪を感じつつも、全体的に詩的で物悲しくて、雰囲気が好き。

  • 揃いも揃って無神経な人達が織りなすロマンティックSF!

  • 久しぶりにレイ・ブラッドベリを読んだ。本書も表現が詩的で描写も美しい分残酷さが際立つ。色彩も綺麗!
    地球人が火星に移民しようする話だが、その数十年に渡る地球人や火星人の物語を短編で描き、年代ごとにオムニバス風にまとめたもの。
    火星人に賛嘆されて迎え入れられるだろう、という地球人の驕りや、野蛮な火星人に宗教を布教せねば、という勝手な思い込み。なるほど、ありそう。
    どの話も印象的で、読み終わった後もひとつひとつくっきり思い描ける。
    でも一番心に残ったのは、火星人の築いた文明を守るために仲間を殺してしまう地球人乗組員の話。その男を殺害せざるを得ない隊長の苦悩がまたいい。この登場人物は時間を経て後にもまた登場する。
    それと火星人夫婦の夫が、地球人到着を予知した妻が連れ去られないよう地球人を殺害する話。倦怠期で妻を大事にしなくなった夫が、嫉妬にかられて乗組員二人を殺してしまう。緑の千本のリボンに吊り下げられて、炎の鳥で空を飛ぶシーンも何とも素敵だった。
    また時間をおいて読みたい。

  • SFの古典。
    ブラッドベリ作品の中では一番センチメンタルかもしれない。SFガジェットはせいぜい宇宙船ぐらいのもので、人生の哀しみが描かれている作品が多かった。
    解説によると、新版では作中の設定年が変更され、一部の短篇が別作品と差し替えられている。こうなると旧版が欲しくなる……。

  • 当て所のない文章。いや、当てがあるとすればそれは火星か。それとも地球であるか。
    史実を物語るかのように、ただ淡々と綴られるこの年代記には戦慄さえ覚える心地がした。史実であるはずなのに、それでいて少しも実がなく感じられる内容。
    見果てぬ夢。我々が見る夢とは、本当に目指すべき、目指しても良い夢なのか。そこには畢りがあるのみなのではないか。
    SFとは、いくらも夢物語などではなく、少しのリアルが裏付けてあるのだろう、と本を閉じながら思った。

  • 【収録作品】2030年1月 ロケットの夏/2030年2月 イラ/2030年8月 夏の夜/2030年8月 地球の人々/2031年3月 納税者/2031年4月 第三探検隊/2032年6月 月は今でも明るいが/2032年8月 移住者たち/2032年12月 緑の朝/2033年2月 いなご/2033年8月 夜の邂逅/2033年10月 岸/2033年11月 火の玉/2034年2月 とかくするうちに/2034年4月 音楽家たち/2034年5月 荒野/2035-36年 名前をつける/2036年4月 第二のアッシャー邸/2036年8月 年老いた人たち/2036年9月 火星の人/2036年11月 鞄店/2036年11月 オフ・シーズン/2036年11月 地球を見守る人たち/2036年12月 沈黙の町/2057年4月 長の年月/2057年8月 優しく雨ぞ降りしきる/2057年10月 百万年ピクニック

  •  地球人が火星に始めてロケットを飛ばした2030年から、植民を始めて、発展して、衰退するまでの27年間を描いたオムニバス。短編ひとつひとつがそれ単体で充分に面白いのがすげぇ。SF設定を切ない方面に使うのが抜群にうまいなこの人は。

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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