火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
3.93
  • (109)
  • (128)
  • (73)
  • (14)
  • (11)
本棚登録 : 1758
感想 : 145
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117641

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短編の寄せ集めが一つの大きな物語になっている。
    人間の愚かさを感じるところが多いね。
    雰囲気はちょっと寂しい感じ。
    でも、最後の場面が唯一平和で一番美しい場面なのかも。

  • なんて素敵な本だろうか。まさに語り部というか。一つ一つの話がとても面白いし、詩的な文章が素晴らしい。
    なんだかラファティの「宇宙舟歌」を思い出してしまって、なんでかな〜て思って著者序文を読んだらわかった、「神話」なんだ!

  • 通奏低音のように全編にわたって漂うさみしさ、むなしさが印象的。宇宙空間の空は空しさの空か。
    読み終わった後、表紙を撫でながら静かに余韻に浸った。目が覚めてから、ついさっきまで見ていた夢を思い出そうとするような感覚。あれだけの物語がこの一冊の文庫本の中に詰め込まれていたのかと思うと不思議な気分だ。大切にしたい本。

    火星年代記における「SF的」な設定は表現の手段だろう。サイエンス・フィクションという狭いくくりに収まりきらない力を持った作品だと思う。火星じゃなければ描けない文学。
    解説によると、星新一が愛読したとのこと。確かに彼のショートショートも同じような香りがするな、と妙に納得した。人間を始めすべての存在に対して一歩引いているような、この感じが好きなんだよなぁ。

    詩的。
    ブラッドベリの作品の特徴として叙情的な文体がよく挙げられるが、ぜひ原書で彼自身の言葉を味わってみたいと思う。

  • 面白いと聞いて読んだが自分にとってはあまり響かなかった。ヒューマンドラマ系のものがあまり響かないのかもしれない。

  • 最初どうしてもイメージできない描写がひたすらに続き、これ読み切れるかなと心配していたのだが年代が進むにつれて加速度的に読みやすくなる。でも文明のうつろいを描写で感じることになるとは……。
    「優しく雨ぞ降りしきる」のスピード感と「火の玉」における信仰対象への解釈の話がいっとう好き。こういう話、自分で思いつきたかった!というタイプの面白さ。

    私にはまだ言語化が難しいところがたくさんあるのだが、先に同作者の華氏451度を読んでいたのでこの辺りは作者のテーマなのかなと思った。たまに殴りかかるような風刺が飛んでくるのでまったく油断できない。
    ホラーっぽいなこれ…という描写もちょくちょくあったが、巻末の解説にある掲載誌の話を見て納得した。

  • 火星がどんな風に侵略されたか、地球はどんな状況なのか、地球人は何を考え火星へやってきたか、それらをいくつもの短編を読んでいくことで把握できるようになっているのが面白かった。喉元にナイフを突きつけられたような恐怖を味わう話もあったし、心を押しつぶしてくるような話や、詩的で美しい話もある。
    目線が変われば見えてくるものも違っていて、それぞれの立場で真実を見せてくれるのが良い。これが一人の主人公の語りであれば偏った情報しか得られないからだ。
    いくつか印象的な短編があった。第三探検隊が懐かしさの中で殺された話。地球人の愚かさに抗おうとしたスペンダーの話。火の玉に出会った神父たちの話。死んだ家族を造った男の話。火星人になった話。どれも忘れがたい。きっとこうやって争いや悲しみはひとつひとつ積み上がって、戻れないところまで来てしまうのだなと思った。
    ラストの水面を眺めるシーンはゾッとさせられたけれど、それ以降の年代記も読んでみたい。

  • 評価も感想も非常に難しい。とりあえず詩人、幻想みたいな謳い文句に引っ張られると結構具体的な描写をしていて、拍子抜けするかもしれない。
    普通に人が死に、殺し、殺される。地味で淡々としているが、かなり無常でダークな作風だ。ダークといっても暗黒ではなく冷たい暗灰色といった感じ。
    かなり読むのにコツが必要で、現実的な先入見は捨てなければならない。火星と言っても当然リアルな火星ではない。しかし人の見た夢の中の火星も違う気がする。地球が見た夢の火星みたいなイメージだ。本人が神話と表現するように幽世みたいな。まあよくは分からないが。

    最初は捉え所がなくて微妙だと思ったのだが、終盤に進むにつれ文章のキレ味も増してくる。華氏451度のように文章でぶん殴ってくるような衝撃はないが、やはり表現の核も結論も変わってはいない。
    最後に収録されている『優しく雨ぞ降りしきる』と『百万年ピクニック』の表現力や抒情性はやっぱり素晴らしい。
    短編集ということだが、各話一応連続性があり、この百万年ピクニックで完成し、そういうことだったのかと納得する作りになっている。
    そして三体III下などはある意味この作品の改変バージョンであることに気付く。代表作と呼ばれる理由もそこにあると思う。埋め込まれた後続への種子が咲いたのだろう。創作を通した著者の計画は成功しているのかもしれない。
    ただ一つ、年代表記は不要だったと思う。あまりに展開が性急すぎる。

    瞬発的な面白さは無いが、徐々に良さが浸透してくるタイプで、ある時ふいに読むと波長が合って頭に入ってくる感じだ。しかしそのタイミングは分からず、読めない時は本当に読めない。読める時も作者が序文で宣言している通り、答えが明快に解るとかではなく、何かスッと感じ入り読めてくるとしか自分には表しようが無い。まあこの序文が最も意味が分からないのだが……。だから面白いという観点では評価出来ず、かなり読み手を選ぶと思う。全く読んだことがないので詳細不明だが、確かに星新一が影響を受けたっぽい作風だが、更に掴み所がなく解り難い話だと思う。キノの旅などが好きな人には刺さるかもしれない。

  • 自分の想像力がいかに乏しいかを知った

  • 「ロケットの夏」から始まる、火星年代記。地球から火星へとやってくる人々。面白い話があれば、怖い話もある。痛烈な風刺もあれば、切なく悲しい話もある。ブラッドベリが描く数々の短編。視覚的にも思い浮かべやすいストーリーが多い。
    序盤は夢や希望溢れる話が多いと思いきや、一癖も二癖もある展開。終盤は物悲しい話が続くが、絶望的な暗さではない。この辺りの匙加減が絶妙。

  • 「火星への最初の探検隊は一人も帰還しなかった。火星人が探検隊を、彼らなりのやりかたでもてなしたからだ。つづく二度の探検隊も同じ運命をたどる。それでも人類は怒涛のように火星へと押し寄せた。やがて火星には地球人の町がつぎつぎに建設され、いっぽう火星人は…幻想の魔術師が、火星を舞台にオムニバス短篇で抒情豊かに謳いあげたSF史上に燦然と輝く永遠の記念碑。著者の序文と2短篇を新たに加えた新版登場。」

全145件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レイ・ブラッドベリの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×