- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150120740
作品紹介・あらすじ
〈人間の再発見〉の初期の時代の冒険譚である表題作をはじめ、珠玉の中短篇7篇を収録
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
監視せよ、しかし統治するな。
戦争を止めよ、しかし戦争をするな。
保護せよ、しかし管理するな。
そして何よりも、生き残れ!
コードウェイナー・スミスの人類補完機構全中短篇を収録するシリーズ第2巻は、<人間の再発見>期を舞台とする珠玉の7篇を収録。表題作に加え、「クラウン・タウンの死婦人」や「帰らぬク・メルのバラッド」、「ショイヨルという名の星」など、読み応え十分な傑作ばかりで非常に満足できる一冊です。一方、本書では既刊の短編集での未収録作品はありませんので、全て再読扱いでした。ただ、5年ぶりの再読だったので、(第1巻と同様)懐かしくもどこか新鮮な気持ちで読み進めることに。
・クラウン・タウンの死婦人
歴史の一場面を垣間見ているかのような荘厳な印象の作品。犬娘ド・ジョーンの行進からクライマックスまで総じて鳥肌ものかと。
・老いた大地の底で
初読の時は読みにくさを感じた本作ですが、今回はそこまで読みにくさを感じず。むしろユーモアさが極まって中々味のある作品かと。
・酔いどれ船
本作品の原型が「大佐は無の極から帰った」であることもあり、作品の印象としては第1巻収録の作品に近いかと。久しぶりに登場するヴォマクトになんだか感慨。
・ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち
復唱したくなるような表題。内容がこれまた異質。宇宙で唯一、不老長寿の薬(ストルーン)を生産し、宇宙で最も裕福な惑星であるオールド・ノース・オーストラリア(通称ノーストリリア)が舞台。ノーストリリアを狙う盗賊ペンジャコミンと、ノーストリリアの兵器管理官ママ・ヒットンとの攻防(といってもほぼ一方的だが)をユーモアに描く傑作。かわゆいキットンの圧倒的なテレパシーに一瞬のうちに自滅させられるペンジャコミンが衝撃的。
・アルファ・ラルファ大通り
<人間の再発見>期、これまで画一的なしあわせを強制されていた人々には、不幸や冒険、恋愛の自由が与えられ、古代の文化、言語、災厄までが復活される。人類補完機構の指導のもと、一方的に与えられる自由に戸惑う恋人たちが、上空の忘れられた予言機械を目指して、はるか雲の上に続く廃道アルファ・ラルファ大通りを上っていく…
初読と比べ、印象が最も変わった作品。当時はドラマチックな「星の海に魂の帆をかけた女」や、「ショイヨルという名の星」のグロテスクさに関心を寄せていたのか、本書の魅力に気付いていなかったようです。一見すると、人間らしさを取り戻す素晴らしい取り組みに思える<人間の再発見>ですが、現実にはそれに当惑し、悲しむ人々も居る。シリーズ中でも恐らく随一の文学性が込められた本作品は、ジョンズ・ホプキンス大学の教授であり、大統領顧問をも勤めた著者の世の中を冷ややかに見透かした怜悧な頭脳を感じさせられる作品でもあります。
・帰らぬク・メルのバラッド
長篇「ノーストリリア」の読了者としては、終盤のせつなさには、いつ読んでも心が揺さぶられるものがあるのです。
・シェイヨルという名の星
「両頬にひとつずつ乳房が生え、赤ん坊のようなぽっちゃりした指がひたいから房となって垂れている」…シリーズでもずば抜けての気持ち悪さ。グロテスクな描写のオンパレードはまさに地獄絵図。読み応えばっちりで、想像力もかきたてられる傑作です。
シリーズ全3巻を読み終わってみて、個人的には最も充実した一冊でした。どの作品も傑作ばかりで外れがありません。 -
SF。短編集。シリーズもの。
前作『スキャナーに生きがいはない』と比較して、若干の読みにくさは感じるものの、世界観は圧巻。
「クラウン・タウンの死婦人」「アルファ・ラルファ大通り」「帰らぬク・メルのバラッド」の順に好き。 -
「老いた大地の底で」を読んだ時は難解で今回は読みにくいかな?と思ったけど概ね好みで堪能できた。中でも「シェイヨルという名の星」はラストにして1番面白かった。「酔いどれ船」と「ママヒットン〜」も好き。
-
人類の再発見、ころのお話をまとめて。短いキャプションがついていて結構お役立ち。
人類補完機構が複数で構成されている意義がかんじられるところがこのシリーズの素敵なところ。かわゆいキットゥン達の話がグロだけど好き。徹底した自衛って過激だなあ! -
『人類補完機構全短篇』の第2巻。
収録作自体はそこまで多くないのだが、各短篇はそれなりの長さがあり、内容も濃厚。読み応えがあった。
成程、彼女がク・メルかぁ……と、妙な感慨を抱いたw