母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)

  • 早川書房
4.14
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本棚登録 : 314
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150122317

作品紹介・あらすじ

不治の病の母が娘のため選んだ行動をつづる表題作、娼婦の殺人犯を追う「レギュラー」など単行本版『母の記憶に』から9篇を収録

感想・レビュー・書評

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  • ケン・リュウ短編集3冊目。プロの小説家として幅の広さを感じられる短編集。
    設定がアメリカ的で、ハリウッド映画を見ている感覚で読める作品が多い気がした。最後の「レギュラー」なんかは映像化に合ってると思う。

    「カサンドラ」…マイノリティ・リポートと似たSF的設定。”こちらが正しいとかあちらが間違ってるとか解らないんだ” だな。

    「状態変化」…頭の中でロックが鳴ってる感じの作品。”それなりに生きる位なら格好良く死にたい 普通でいいからさ も少し正直に生きたい”って思う。

  • 前作同様、発想を広げてくれるような刺激的な短編集。最後の「レギュラー 」にはぐっと心を掴まれて泣きそうになった。

  • SFとして完成度高いか

  • やはりケン・リュウの作品は良いな
    SFって基本的にそうだと思うけど、人間の存在の意義を問うような作品なんだよね
    その問い方っていうのかな、それがケン・リュウの良さだと思う
    あとは女性が主人公の話が多くて、女性の社会で抑圧された部分が書かれていたと思う。

  • 原題 MEMORIES OF MY MOTHER AND OTHER STORIES

    収録9篇のうち、印象に残ったのが「状態変化(State Change)」。
    主人公の魂がアイスキューブとして存在するという、他とちょっと変わった感じのお話。
    SFな感じが全くしない。
    ほっとくと溶けてなくなる〝ハズレ〟の魂に縛られた人生を、過去の偉人の人生と比較するあたり、対比がとっても鮮やかです。
    その収束も。

    わたしには両端を燃やす蝋燭はない。
    (Edna St. Vincent Millay)
    コーヒースプーンで命を量ったりもしない。
    (Thomas Stearns Eliot)
    欲望を鎮める泉の水もない。
    (Jeanne d'Arc)

    人生は全て実験よ。
    (Ralph Waldo Emerson)
    塩の魂の彼に身を委ね、もう氷に戻ることはないんだろうな。
    そう思いたいです。

    sī tēcum attuleris bonam atque magnam
    cēnam, nōn sine candidā puellā
    et vīnō et sale et omnibus cachinnīs.
    ご飯と女の子とお酒と塩と面白い話。
    カトゥルスは偉大です(^-^)

    ちなみに、蝋燭の両端を燃やす”burn the candle at both ends”は、昼夜なくボロボロになるまで働く、という慣用句ですね。
    わたしにも両端を燃やす蝋燭はない(`ω´)

    たばこが魂の友人の状態変化もよかった。
    文学も哲学もウィットも。

    日本オリジナル第二作品集その1。

  • この短編集にある世界をときどきのぞいて、わたしが今立っている場所がどうっていうことないと思って安心する。見えている現実だけが現実ではないということが、感じられる。

    その中の一遍「残されし者」が、ムーンショット計画と重なって、ゾワゾワとなるのは、わたしだけではないはず。

    ハッピーハッピーな内容ではない、人間愛が感じられる、しかもめちゃくちゃ上手い不思議な作家さんなので、手元に置いておきたい一冊。

  • 私のような人間が、先入観として、機械またはAIと呼ばれるものの冷たさを意識するとき、この短篇集は背筋を寒くさせる。「パーフェクト・マッチ」などがそれに当たる気がする。機械的ということばがときに冷酷を示すとき、そこにはどんなものの意思も介在していないように思われる。ただ私はここに「知識」というものもひとつ疑念においておきたい。経験やいわゆる情によらず、たんに自らを観察者としておくときにもまた、私は寒気をおぼえるのだ。「知識の遊戯」としてのストーリィに、機械に対するものと同じこわさを感じるのも、私の先入観だろうか。私自身は「たましいが拒否」するのだと感じているが……。とまれ、とても勉強になった。訳者たちがどうして掲載の順を決めるのかということだけ、疑問には感じたが。

  • ◆読書記録2冊目
    ◆No.064

  • ケン・リュウのSF短編集第三弾。基本的にケン・リュウの短編は読みやすいと思うが、本作は今までの中で一番初心者向けのような気がする。

    「母の記憶に」
    10ページほどの短い短編でありながら、表題作かつ開幕に相応しい内容で、不治の病に罹った母親が、娘の成長を見届けるために相対性理論によって自身の寿命を伸ばす物語。娘の人生のほんの端々で顔を見せる母と娘の心温まる交流や、ズレていく年齢差による確執と、短いながらも描かれてる内容は深く、親離れのタイミングを逃したが故の悲しみと、自分の人生を全うするのを見守ってくれる親という本来あり得ないはずの幸福感が同居しており、実にエモーショナルかつドラマティックである。数回かつ、その一日しかないからこそ、繋がりはより強固になり、やがてそれは末期の時に見る昔の夢のような、母とのかけがえのない思い出と呼ばれるものへと昇華されていく。

    「重荷は常に汝とともに」
    異性に遺された謎の遺跡と正体不明の文化。それが何かを解き明かす考古学的な楽しみに加え、真相の肩の力が抜ける感じがたまらない。何に物語性を見出すかは人それぞれで、明かされた事実もまた一つの物語であるのだろう。

    「ループの中で」
    技術が発展しきった中での近未来での戦争の一つの形である。予見的という意味ではこの作品が随一で、無人機による戦争の参加はすでに現実でも行われている。行き着いたシステムの先は非人道的で、それに耐えられる人間は果たして何人いるだろうか。薄ら寒さも漂う一作。

    「状態変化」
    SF、というよりはファンタジィ寄りな一本で、魂を物質化するという設定からは文学性も感じる。そのモチーフの使い方がテーマとオチと非常に噛み合っており、最後にタイトルを読んだ時に文字通り腑に落ちてしまった。今回の短編集の中でもお気に入りの一作である。

    「パーフェクト・マッチ」
    マッチングにより人の意思の所在を機械に委ねるというのは使い古されたテーマであるものの、今の時代にはまた違ったリアリティをもって響くであろう作品である。記憶やレコメンドによる選択肢の外部委託はもはや留まるところを知らず、誰しもが失敗はしたくない。しかしながら不確定要素に身を委ねてみたくなるのも人情で、どこかでそれに折り合いをつけるしかないのだろう。余談だが、作者による中国への警戒心には笑ってしまった。

    「カサンドラ」
    ケン・リュウはこういう物語も書けるのかと驚かされた一本。これは誰もが知ってるSから始まるスーパーヒーローの物語で、主人公は何を隠そうヴィランである。すでに決まった運命を変えるために戦うヴィランと、自由意志を信じて現在を生き続けるヒーローの終わりのないダンス。以前の短編にあった「良い狩りを」もそうだが、こういう物語を見せられると長編で読みたくなってしまうのがケン・リュウの玉に瑕な所だ。短編だからこそ光る話だが、長尺の長編で読みたいという贅沢な物語である。

    「残されし者」
    データ化し、永遠を生きることになった死者からのデジタル世界への誘惑を跳ね除け、血の通った人間としての生を生き続けることを選んだ男と妻と娘の家族の物語。死者が襲ってくるわけではないのでサバイバル要素は薄いものの、完璧な善意による誘惑と、滅びが決まっている世界に居続けることの葛藤は凄まじく、それには正解がない。父が縛り付ける理由も分かるし、また新世代がデジタルに対して抵抗がないのも理解できる。しかしながら、その矛盾した両極で悩み続けるのが人間で、テーマの重さとキャッチーな物語性が魅力。

    「上級読者のための比較認知科学絵本」
    ケン・リュウらしい壮大な仕掛けの詰まったSF力を感じる作品。好みかと言われたら難しいが、この壮大さと叙情性は素晴らしく、やはり愛に回帰するのはケン・リュウらしいと思った。

    「レギュラー」
    トリを務めるのはサイバーパンク・ミステリである。娘を失ったトラウマを抱える母親が、調整者(レギュレイター)で己をコントロールしつつ、依頼された売春婦殺しの謎を追う骨太のSFハードボイルドである。体に仕込んだサイバーパンクなギミックは面白く、ウォッチャーという観察眼の殺人鬼の人物造形も面白い。調整者の設定は素晴らしく、クライマックスのはち切れそうな緊張感と選択の重さに一役買っており、その末路と安堵感は一本の映画を見たような満足感に溢れるものだった。文句なく今作の中で一番の作品であろう。

  • 失われた異星人の"サーガ"を読み解こうとし、またそれを観光向けに"翻訳"するという、なんともありえそうな話『重荷は常に汝とともに』が面白かった。文化文明があれば、法もあり得る。本当の「正解」を知ることはできないからこそのコミカルな(シニカルな?)一編。
    自分に合った物や人を薦め、行動を導いてくれるAIと人とを描いた『パーフェクト・マッチ』も好き。今のごく単純なおすすめ機能がもっともっと先へ行ったら?快適さの陰にある怖さや犠牲にしているものに気づいたとき、どうするか?何ができるのか、という問い。提供しているのが一企業である以上、そのAIの示唆には誘導的なものがはたらくだろう、という点でも面白い。完全に"客観的""公平"な視点・検索・提案などないと突きつけられる。
    「ただの株式会社で、――ぼくたちほかの人間がどこでもコンピュータにアクセスできる社会の恩恵にあずかっちゃいけないっていうことにはならないだろう。」
    「自分たちを監視してるのが政府なのか一般の会社なのかで区別する人たちがどうしているのか、理解できないわ。」
    「もしわれわれがつぶれたら、後釜に何がすわると思う?シェアオールか?中国の企業か?」

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