作品紹介・あらすじ
パロ‐モンゴールの戦いの渦中に突如現れた豹頭の超戦士グイン。彼の出現は,人々の運命を大きく変えてゆくが…。かつてのモンゴールの公女将軍,氷の公女とも呼ばれたアムネリスは、いまはクムの虜囚としてクム王の竃を受ける身となった。一方、かつてはグインと行を共にしたイシュトヴァーンも、いまは王への野望に憑かれ、ついに運命の一歩を踏み出した!
感想・レビュー・書評
絞り込み
-
-
やっと文庫版を手に入れました。最新刊以外はなかなか置いてある書店が無いうえ、通販でも新品で続きの巻を揃えるのが難しい作品ですね…。
さて、ついにイシュトヴァーンとアムネリスが相見える時が来ました。お互いに曰く付きの恋に傷つき、それぞれ多くの苦難を乗り越えてきた二人。イシュトヴァーンとアムネリスは、パロのナリスとリンダの二人に自尊心を傷つけられたり、愛憎入り混じる感情を抱いている点、私は心を通じ合わせる素地があると思っていました。しかし、お互いの迸るプライドの高さから、初対面で相手を見下し合うという、対話と協働には程遠いやり取りをしてしまいます。そのため、可哀想なアリさんがやっとこさ実現させた会談も、あわや破談するところでした。
しかしながら、もう一歩のところでなんとか感情を退け、現実的かつ合目的的に判断することで、お互いの利害のために手を取り合うことになりました。
本巻はこの一連のイシュトヴァーンとアムネリスの感情の推移を上手に見せてくれた。スッと納得できる感情の動きだった。
いまの二人は王になることとモンゴール再興という誰しもの目に見える実利で結びつくだけだが、お互いの昏い、秘めた望みで結びつけば、より分かち難い繋がり方をするように思う。
すなわちアムネリスはナリスを殺して自分のものとすること、イシュトヴァーンはリンダを殺して自分のものとすることを胸に秘めており、この感情のベクトルは大きさも方向もほぼ一致しているからだ。お互いの恥部である以上、曝け出すのは容易ではない。しかし、彼らがお互いの望む結末の相似に気付いたとき、昏く冷たい引力で剛結するのではないかと考えた。
それにしてもお互い、望みを叶えることができても、絶対に幸せになれないバッドエンドが確定している点が健全ではない…。実世界で自分が関わる場合、絶対に御免蒙りたい精神の持ち主であるが、ふと省みると、望んで手に入らないものをむしろ壊して誰も得られないようにしようとする傲慢な考えは自分にもあるようにも思え、とても恐ろしくなった。
何となく、反省を促してくれる巻であった。
-
アムネリスとイシュトが出会う巻です。美男美女が惹かれあうのは時間の問題か。リンダ可哀想・・・
-
ついに、イシュトヴァーンとアムネリスがまみえます。王を目指すイシュト、虜囚の身からの解放を願うアムネリスの利害が一致。お互い手を組むことになります。
それにしても、今巻は登場人物の心情描写が凄いね。イシュトとアリのただならぬ関係。アムネリスとフロリーの関係。ナリスへのアムネリスの思い。そして、イシュトのリンダへの思い。
様々な人間模様を抱えながら、いよいよモンゴール復活へののろしが上がる、物語の重要ポイントです。
-
アムネリスも気の毒だ。全部ナリスのせいだね。イシュトとは、悪い意味でお似合いだと思う。頑張れ。負けるな。
-
1997年7月14日再読
2007年3月16日再読
-
このタイトルはイシュトファンとしては感慨深いものがありましたね。
-
5{ ?られて初めて読んだのがこの巻でした。おいおい、どこから読み始めてるんだ…って感じですが、光の公女「アムネリス」がとても魅力的で、意外とすんなり入れた1冊でした。
著者プロフィール
東京都生まれ。早大卒。江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞受賞。中島梓の筆名で群像新人賞受賞。『魔界水滸伝』『グイン・サーガ』等著書多数。ミュージカルの脚本・演出等、各方面でも活躍。
「2019年 『キャバレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」
栗本薫の作品