愚か者死すべし (ハヤカワ文庫 JA ハ 4-7)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309121

感想・レビュー・書評

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  • 主人公の探偵も依頼者も警官も犯罪者もヤクザも胡散臭いやつもみんなお喋りだ。本当によく喋る。何だあこれはと思っているうちに、そのお喋りがだんだんと快感になってくる。この長ったらしい会話が原尞の真骨頂なのだと合点した。ストーリーもよく練られているし、最後の二転三転もいつもどおりで楽しめる。文庫本の付けたしでのパリから帰った錦織警部補と沢崎との会話も最高だ。

    • やまさん
      goya626さん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      やま
      goya626さん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      やま
      2019/12/01
  • 新シリーズ第1弾。
    と作者は言っているが、13年経った今も続編は出ていない。しかも、前作から6,7年経っている。それだけ間が空いても、無理に時間の流れを止めようとせず、時代背景もきちんと執筆している時代に合っている。
    相棒の渡辺が亡くなって、第1期のシリーズが完結してから6年。沢崎は相変わらず「渡辺探偵事務所」を続けていた。
    今回の依頼人は高校生らしい女の子。自首した父親に「自分に何かあったら、『渡辺』を頼れ」と言われて、探偵事務所を訪れていた。
    神奈川の銀行で起きた射殺事件、依頼人の父親である伊吹が護送中に襲撃されたり、銀行の射殺事件のどさくさに紛れて行われていた誘拐事件…たくさんの事件が同時に進行していく。あまりにたくさんのことが起き過ぎて、今回は内容についていくのが困難だった。
    それでも、こんなにたくさん張った伏線をきれいに回収するのはさすが。ただ、唐突に沢崎が事件の本質を見抜くのは、ちょっと不自然さを感じるところもある。
    そして、来月14年ぶりに新作が発刊される。
    今作では携帯の操作に戸惑っていた沢崎。どんなおじいさんになって帰ってくるのか?非常に楽しみ!

  • 相変わらずの沢崎のハードボイルドっぷり。
    会話や行動が、とにかくハードボイルドです。
    言い回しも洒落ています。
    とにかくタフです。
    銀行強盗の身代わりに自首した男を救うため受けた依頼ですが、同時進行でいろいろな事件が起こってきます。
    ストーリーが進むにつれ、意外な事実が浮かび上がってきます。
    練り上げられたストーリーに、思わずうなります。
    面白かった。

  • 登場人物に錦織がいない事に、あれっと思い少し不安でもあったが最後まで読むと読者の心をくすぐる展開にニヤっとさせられる。ここまでシリーズを通して読んでいて感じたことは事件のカラクリの中に当時の性の話がでてくることが多いなという感想。様々な小説の話のカラクリに性の話が絡むことは多いけど。良いとか悪いとかではなく多いなと思った。次は待望の最新巻「それまでの明日」これを読むために過去のシリーズを読んできた。期待したい!!

  • 沢崎という探偵の 推理力、観察力が 
    なんとも言えないほどの
    推進力があり 本質に 迫っていく。

    不思議な 事件が つぎつぎに起こっていく。
    ヤクザの組長と 足を洗った料理人と その兄弟関係。
    フィクサーのような老人とそれに連れ添う美女。
    フィクサーの寝言で、政治家が 恐れ戦く。
    それに眼を付けて、金を奪おうとする 
    スズキイチロー、ノモヒデオ。
    警察のウラを知りぬいて、駆け上っていく刑事。
    それが複雑に絡み合って事件の真相が明らかになっていく。

    人間が沢山でて来るので、
    最初に 登場人物の紹介があって、わかりにくいものが
    すこし、わかりやすくなっているのは、助かる。

    でも、どうして といういくつかの疑問が 残ったままに、
    事件を 解決させてしまう 沢崎。
    探偵という矜持とほこりと 
    その職分をよく知っているが故に、
    カリスマ的な オーラがあって いい感じだ。

  • 沢崎探偵シリーズ第五作。

    いよいよ携帯電話が登場した。
    作中にもあるように探偵に必須な携帯電話だが、
    探偵沢崎には似合わない気がして、
    時代が進むにつれどうするのだろうかと心配だった。
    相変わらず伝言サービスを使っていて、
    なんだかほっとした。

    渡辺探偵事務所の渡辺に相談しに来た若い女性。
    依頼を引き受けたわけではなく、警察署に女性を車で送っただけだったが、
    銀行強盗の容疑者が銃撃さたれたのに巻き込まれる。
    2つの誘拐事件を解決して、大金の運び役をすることになる。
    そして、銃撃事件の真実を突き止める。

    錦織警部がパリに行ったと聞いて、驚いた沢崎が面白かった。
    何を見ても驚いたことがなかったのに。
    おなじみの伝言サービスの女性が再婚してたり、
    ひきこもりの男性と話したりとちょこちょこ面白かった。

  • 大晦日からの数日の出来事を描いた、沢崎さんという探偵が主人公のハードボイルドミステリー。いくつもの犯罪が交錯する中、真相に迫っていく。
    この『愚か者死すべし』は前作から9年の歳月がたって発表されている。2004年11月に発売されている。長い間ファンは待ち続けないといけない。
    でも、待ったかいがあった。面白い作品に仕上がっている。でも、長いなぁ~
    本作品の続編、『それまでの明日』は2018年に発売された。14年ぶりになる。この作品を読み終わってしまうと、また10年待たねば新作を読めないと思うと、今から五年後に読んでみてた方が、次作を待つストレスは軽減されるかもしれない?

  • 犯罪小説、ミステリーなのですが、いちばんの魅力は謎解きやドキドキではなくて。
    一人称の主人公(作者)の文明批評であり、人間観察であり、つぶやきの味わいであり。散文詩のようなもの。
    つまりは「何を話しているか」よりも「どう話しているか」というあたり。
    チャームポイントは細部であり、具体であり、文章です。
    レイモンド・チャンドラーの私立探偵フィリップ・マーロウ・シリーズの、燦然たる孤高の輝き。
    なんですが、私たち日本人はその触感を、なんと翻訳ではなくても日本語で楽しむこともできます。



    「愚か者死すべし」原りょうさん作。2004年。
    原りょうさんの「探偵・沢崎シリーズ」の第4作にして、最新作(14年間、続編が出ていない…)。

    今回も、相変わらずの「チャンドラー/原りょう節」とでも言うべき文章で魅了してくれます。
    もうこうなると、「広沢虎造が好き」みたいなもので、確立された節回しそのものに素晴らしさがあります。
    と…言うとなんだか「マンネリ」と言っているようですが、また見方によっては立派な「マンネリ」であることも確かなのですが、
    確信犯な「変えない世界観」の中で、面白さを維持していく仕掛や構造を作り上げる苦労というのは、実際大変なものだと思います。
    原りょうさんのこのシリーズの場合は、「文章」「語り口」という屋台骨そのものが最大の旨みなので、そこを損なわないバランスみたいなものには相当に意識を感じます。

    これだけ寡作で頑なな創作姿勢を見ると(完成した小説と、かなり以前のインタビュー記事くらいしか知りませんが)、
    個人的に付き合いをするとかなりげんなりするような人なのかもしれませんが(失礼)、
    この人の小説は、僕は大好きです。
    新刊を出してくれるなら、5000円までなら払っても良い、と思います。
    (4000円くらいか…?)
    そもそも、「探偵・沢崎シリーズ」は、長編4、短編集1なんですが、文庫本や単行本で買って読んだ上に、
    結局電子書籍で再び買って再読してしまっていますし。



    実は読了してからかなり経ってしまって記憶が薄いのですが...

    以下全て不確かな記憶に基づいて。

    【ネタバレです】

    探偵・沢崎に客。若い女。
    「父親が傷害事件の犯人として逮捕されているのだけどそれは冤罪だからなんとかして」
    と言っているうちに何かあって、父親が拘留されている新宿警察へ。
    そこで、移送される容疑者が駐車場で誰かに狙撃される。
    だが、沢崎の妨害のせいか?弾が逸れて護送の刑事が狙撃される。

    ここから、「その傷害事件の真相は?」とか。

    そこから派生したのか別線だったのか、「政界に巨大な影響を持つ90代の老人の誘拐事件」とか。

    「その老人が持っている幻の戦前の映画のフィルムライブラリー」とか。

    「引きこもりの青年を協力者にして、結果、その子の社会復帰につながる?」とか。

    そんなディテールの一つ一つが実にふくよかに、面白く。



    なんですが。

    最後の最後の方で、急展開。
    実は、そもそも命を狙われていたのは護送していた刑事の方で、
    裏には「不正刑事の犯罪隠匿があった」という落ちになっていきます。
    この、裏切られた感というか、「だったら全部ほとんど、脱線だったのかよ!」という、物語至上主義で考えるととんでもない展開。
    (その上、その最終的に判明する悪人刑事の、「殺人まで犯さなけばならなかった秘密」は、とうとう分からないままに終わるという、実に挑戦的な段取り)。

    語りたいのは「物語」ではなくて、「この小説」なのだ、という確信というか、信念。
    これだけの、物語る技術がある作家の手にかかると、実に心地いい。

    すかされた、裏切られた感が、快感に変わる一冊。

  • 新◦沢崎シリーズ。
    作品を世に出すのに相当の歳月をかけただけあり、伏線が練り込まれて結末が読めませんでした。
    読むのにも時間がかかりました。前三部作よりはましですが。

  • 新シリーズということだったので、何かが変わったかと思ったけれど、沢崎自体は今までどおり。
    時代が昭和から平成に代わったってことか?
    携帯電話を使えず、灰皿がある限りタバコを吸うスタイルは、そろそろ無理があるかも。
    もはや令和だしね。

    新宿署の錦織やヤクザの橋爪が出ないことが新シリーズということなのか、とも思ったが、少なくとも錦織の出てこない意味はあったので、新シリーズということについてはおいおいわかってくるのだろう。

    さて、肝心の事件の方だけど、いったいどれがメインの事件と言っていいのかわからないくらい、複数の事件が錯綜する。

    無為な命が多数失われる。
    そして自己中な論理を振りかざす犯人。
    その構図は変わっていない。
    だけど読後感は悪くない。
    被害者が子どもではなく、そこそこ悪党の大人だったからだろうか。

    必要以上の金はもらわないというスタイルも変わらず。
    しかしこの仕事っぷりで、どうやって自宅の家賃と事務所の家賃と駐車場代を支払えているのか?
    まあ税務署の署員に『探偵というご職業は、意外に不況に強くて、安定した、結構なお仕事なんですね」と言わせるだけの収入はあるようで、何より。

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