君の話 (ハヤカワ文庫 JA ミ 18-1)

著者 :
  • 早川書房
4.20
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本棚登録 : 925
感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150315054

作品紹介・あらすじ

映画化作品『恋する寄生虫』著者の最新作、待望の文庫化架空の青春の記憶を植えつけられた青年は、その夏、実在しないはずの幼馴染と出会う。これは、始まる前に終わっていた恋の物語。

感想・レビュー・書評

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  •  一本の映画を観終え、観客席で吐息をもらして立ち上がるのが緩慢になるような読後感でした。
     エターナルサンシャインのような雰囲気を感じて余計にそう思えてしまったのかもしれません。
     今作も他の三秋さんの作品同様に落とし穴の中で安寧を見出してしまう退廃的な人間に刺さる内容でした。
     最近物語ばかり読んでる自分に対して「こんなことしてて意味あるのか?」と疑問を感じていました。そんな疑問のなか本作を読んで自分の人生で欠落しているものを補うために読んでいることに気付き、さらに物語の終わりに疑問へのひとつの解答を得たように感じました。本当に三秋さんの作品は自分にとって劇薬であり、定期的に接種しないと現実をもがけないんですよね。それが毒であるとはわかってるんですけど。

  • 読んでいて、人の頭の中って現実とフィクションの違いをどこまで正確に認識しているんだろう…と考えてしまいました。
    自分にとって都合のいい記憶だけを覚えている場合だってありますよね。
    本人たちが幸せなら、嘘でもなんでもいいんじゃないかな…と思える物語でした。

  • 三秋縋の小説は、甚だしく虚構なのだけど、偽りのない人の想いがあって、読みたくなる。

    記憶を消したり、加えたり、思い出したり。
    そんなことを薬一つで、誰にでも叶えられてしまう世界なんて、人が人の原型を保てなくしてしまうようなものだ。

    主人公の家族はそうやって、主人公の存在を抹消し、自分だけが主役の世界を楽しんでいる。

    自分の記憶が、本物なのか、偽物なのか、真剣に疑わなければならない中で、どうしてヒーローになり、ヒロインになれるんだろう。
    そこに、人間を感じる。

    正直、いつまで経っても先に進まない主人公の疑心暗鬼にはイライラするし、ひっくり返ったかと思いきや献身的すぎる姿勢にだって納得出来ない。

    でも、自分の記憶の、たった一点を幸せに染めてくれたそのことのためなら、人間がコロッと変わったっていいじゃないか、となんだか分かったような気もしてしまう。

    他者がいて、私は存在する。
    記憶は、そのための縁なのかもしれない。


  • 君の話/三秋縋

    初めて読んだ三秋縋さんの小説です。

    設定が変わっていて、義憶技工士によって
    作られて義憶という嘘の記憶を買い求めて
    自分の本当の記憶にする時代。

    人は心の拠り所として、望む記憶を捏ったり、
    記憶を消したりすることも選べて、
    人は自分が望む記憶を手に入れれるように
    なっていた。

    そんななか、主人公は記憶の中の幼馴染に
    現実世界で出会って戸惑う。
    義憶だと分かるので接触を拒むが、そうと
    知りながらもどうしようもなく彼女に惹かれて
    しまう。

    義憶の中の幼馴染が現実に現れてしまった理由。

    僅かな関わりから始まって、深く繋がってゆく、
    あまりにも優しい優しい嘘の物語。

  • 途中までは近い将来こういう世の中になるんだろうか?とかこんな仕事が出来るのか?とかワクワクと想像したり、その一方早川書房だし薄ら寒いようなちょっと怖い話なのか?と思って読み進めていったら、孤独を抱えた似た者同士の男女のくすぐったい恋物語でした。
    理想の青春、家族を持ち合わせてる人はどれくらいいるんだろう?そこを埋めようと悪あがきしたり、妄想するのも自分らしさと思っていたけど、それさえも他人に委ねてお金で買える世の中になったら個性ってなんだろうなって考えてしまいました。

  • ちょっと違うかも知れませんが、自分の青春時代に流行ったセカイ系作品を読み終わった後と同じ、なんとも言えない読後感を味わえました。主人公とヒロインにとっては世界以上に大切な出来事があったのに、世界は何も知らないし変わらないというこのモヤモヤ感が心地良いんですよね。SFガジェットの活かし方も素晴らしいですし、この作品大好きです。

    キャラもセリフも、設定も、ストーリーもめちゃくちゃ刺さったんですが、特に好きなところは、死の恐怖に直面した際に灯花が放った「私の死後、その死を嘆き悲しみ、一生消えない傷として心に刻みつけて欲しかった」という嘆き。その後、彼女のしたことを含めてあまりにも自己中心的な想いだと思うんですが、その気持ちも痛いほどわかってしまうこの独白に非常に胸を打たれ、一番惹き込まれたかもしれません。こういうキャラクターにとても弱いんですよね。

  • ・三秋縋さんらしい悲しく優しい話だった。
    ・他の作品同様、物語の前半で恋愛が進みつつ、いくつか謎が深まってゆき、後半でそれの解明とともに、恋愛心情が掘り下げられていく構成で、とても面白い。
    ・今まで読んだ三秋さんの作品と異なったのは、他は"悲しいハッピーエンド"という印象だったが、この作品は"幸せなバットエンド"という印象を受けた。

  • 嘘の記憶でも、最後に本当の記憶を二人で作ることができて良かったね、と思いました。

  • 夏凪灯花とは一体、何者なのか。違和感を抱えて読み進めるうちに、次第に不器用な二人のやり取りから目が離せなくなった。
    どこまでも切なく、穏やかな結末。
    心に優しく灯るような、温かく愛おしい読後感だった。

  • 義憶のある世界に生きた、ひとりぼっちの二人の話。
    丁寧な言葉を使うなーって印象。
    レーテ、グリーングリーン、ヒロインとかの義憶のネーミングセンスが素敵。

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著者プロフィール

WEBで小説を発表していた作家

「2015年 『僕が電話をかけていた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三秋縋の作品

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