フィンチの嘴: ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ文庫 NF 260)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150502607

作品紹介・あらすじ

ガラパゴスには多彩な嘴で有名な鳥ダーウィンフィンチが生息している。20年をかけて彼らを丹念に調査した研究者のグラント夫妻は驚くべき事件を見い出した。鳥たちは気候の変動に応じて刻々と変貌し、「現在」も進化を遂げているのだ-種を突き動かす驚異的な自然の力を克明に描き出し、進化は「過去」の出来事に過ぎないという固定観念を打破するピュリッツァー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ガラパゴス諸島において、ダーウィンフィンチと呼ばれる鳥類が、いかにして個別の嘴を持つようになったのか。その疑問を長年研究したグラント夫妻が発見した、驚嘆すべき進化にまつわる物語。

    この本はとことん、「ダーウィンの唱えた自然淘汰理論の証明」に取り組んでいると思います。また、ダーウィンが確信していなかった部分についても、ダーウィンの理論が適用できることを証明しています。
    改めてダーウィンの先進性に驚くとともに、これほどの地道なフィールドワークによって、劇的な理論に結びつく研究をやってのけた、グラント夫妻は超人です。
    個人の生涯で、これだけ多くの疑問に答える実践研究を成果として挙げる人は、今後もそうでないでしょう。

    進化論を理解する上ではかなりわかりやすいですし、面白いです。ものすごくよかった。

  • 『進化』とは何かを知りたければ、
    まずはこの本を読んでみよう!
     
    『フィンチ』というのはガラパゴス諸島に住む鳥の一種。
     
    『ガラパゴス諸島』は『諸島』というくらいなので
    たくさんの島から成っています。
     
    フィンチはガラパゴス諸島のいくつかの島に
    住んでいるのですが、彼らの嘴の特徴が
    島ごとに違っている。
     
    そのことに目をつけた進化学者が
    フィンチの嘴を調べることで
    地球上の生き物の『進化』について
    研究した顛末が書かれた一冊です。
     
    この本を読んでいてわかったこと。
     
    植物を含む『生き物』は、その環境に合わせて
    常に適応していくものなんだということ。
     
    『進化』というのは常に『過酷な環境』で起きた
    生き残り競争の結果だということ。
     
    もちろん人間だって例外ではないはず。
     
    我々はいまも進化の過程にいるのです。
     
    生き物に興味のある人は、これを読んで
    知識を広げることをおすすめします!

  • ダーウィンの進化論の原点とも言えるガラパゴス島で、
    ダーウィンがそのとき気がつかなかった フィンチの嘴の進化を
    実際、何年もかけて、観察することによって・・
    『進化』の臨床記録をし続けた グラント夫妻の物語。

    生態は『食性は、完全に昆虫食のムシクイフィンチを除けば雑食である。
    地上フィンチは植物食が中心で、花や地面に落ちた種子を拾って食べるが、
    コガラパゴスフィンチはイグアナの皮膚の古い角質層や寄生虫も食する。
    サボテンフィンチはサボテンの実や葉を食べ、
    虫の代わりにサボテンの花粉を媒介する。

    樹上フィンチのうちキツツキフィンチやオオダーウィンフィンチは昆虫を中心に食べる。
    キツツキフィンチは小枝を道具のように使い
    樹木の中に住む昆虫の幼虫を捕食する事で知られる。
    ハシボソガラパゴスフィンチは吸血フィンチとしても知られる。』

    虫食いフィンチ、地上フィンチ、樹上フィンチに分けられ,
    本書では、13種としている。

    第1章は、ダフネ島でおこっている フィンチの『進化』を説明する。
    食性が大きな役割を果たし、それに対応する嘴が進化する。
    グラント夫妻の固体識別法による20年近い観察によって得られた成果。

    進化という表現が・・・小さな進化と大きな進化があり・・・
    ここでは、小さな進化がとりあげられている。

    ダフネ島という隔離されたところで、起こる自然淘汰・・・
    旱魃が続けば・・堅い種子を食べるために、嘴は大きくなる。
    雨が降り続けば・・柔らかい種子がふえ、小さなフィンチが生き残る。
    気候の変化により、植生が代わり、それに対応したフィンチが生き残る。
    自然選択・・・自然淘汰は、振り子のように起こる。

    1章は、非常に優れた考察でしたが・・
    あくまでも、小さな進化についての範囲内のことだった。
    これを読みながら・・・
    今西錦司氏のすみわけ理論は正しいなぁと思った。

    この本は、科学ジャーナリストのワイナーによるもので・・
    ダーウィンをどう評価するのかが、きちんと貫かれている。

    『ダーウィンの「種の起源」には、
    種の起源のことはほとんどかかれていない。
    正式な書名は
    「自然選択、すなわち生存競争における
    有利な品種の存続による種の起源について」
    というものだが、特定の種の起源についても、
    自然選択についても、生存競争で生き残る品種の保存についても、
    何一つ実例は挙げられていない。』15p

    バッサリと切っているところに、よさがある。

    ダーウィンは言う
    『自然選択は、世界のいたる所で、日夜目を光らせていて、
    どんな小さな変異も見逃さない。
    悪いものは捨て、よいものを取るという取捨選択を、
    機会さえあれば、いつでもどこでもおこなっている。
    これらの変化は、あまりにもゆっくりと進むので、
    長い時間をえた後でなければわからない。』15p

    実際に進化を見るということはできないのである。
    ダーウィンも進化を見ていない・・・
    進化を証明しようと試みているが・・。

    進化論は、大いなる仮説だったのだ。
    しかし、やはり生物たちは進化しているのである。

    変異とは連続するものということから・・・の疑問。

    ダーウィンは自問する。
    『キリンの尻尾のように、
    ハエタタキくらいにしかならないつまらない器官がある一方で、
    目のようなすばらしい器官があるということが、
    自然選択で説明できるだろうか?』175p

    『自然選択の力は、ゆっくりだが確実に働く。
    生死はしばしば、ごく些細なことで決まります。
    自然選択それ自体が進化ではない。
    それは進化につながるひとつの仕組みに過ぎない。』

    1949年 ホールデインは、
    1ダーウィンを 100万年に1%の変化とした。

    大きな疑問
    鳥は、9000種ほどあるが、なぜそれほどたくさんいるのだろうか?
    自然は、なぜそんなにたくさんの鳥の種を必要としたのか?

  • 実証されないことで、進化論が批判されていた時代もあったことに驚いた。確かにその通りなのだが、教科書には進化の実証とできるような例が沢山あるから、そういう過去に思いもよらなかった。
    島にいるすべてのフィンチを個体識別し、データを測定するというのはものすごい研究だ。
    変異は非常に大きく、選択圧は強い。やはり、グードルの言うようなランダムウォーク的進化は否定されるものだろう。
    種のあり方が、本質的に動的なものだということを改めて考えさせられた。
    枝にとまって揺れている鳥のイメージは、進化の実相をよくあらわしていると思う。

  • 生物は、地球上に誕生してからどのように多様化してきたのか。私たち人間は、何故この今あるような形に進化を遂げてきたのか。自分たちのことなのにわからない不思議な生物界。本書では、グラント夫妻が20年に亘って続けているフィンチという鳥の研究結果から、生物が進化してきた背景と意味を学ぶ。フィンチとは、ガラパゴス諸島に生息する嘴が特徴的な鳥で、気候変動によって嘴の大きさを変貌させて、種が生き延びる方法を選んでいる。「自然選択」を鳥自身で行っているのだ。ところどころに見られる夫妻の日常会話から彼らの研究に対する熱心さやフィンチに対する愛情を感じることもできて、生物学に詳しくない私にもおもしろく読み進めることができるドキュメンタリーになっている。積極的に引用されるダーウィンの「種の起源」からは、現代の「種の進化」を私たちのより身近なものに感じさせてくれるので、今までの「進化」という言葉に対するイメージが一新させられるはずである。読了後、森羅万象に感謝したい気持ちになる意味で、温かい1冊。ガラパゴス諸島に訪れたくなる。

  • ・ダーウィンの唱えた進化論とは、自然選択の必然的結果であって、その過程を想定するのは難しい=進化過程の観察は不可能とされていた。
    ・ガラパゴス島のフィンチという鳥を研究するグラント夫婦は、フィンチは嘴の大きさによって好んで食べる種子の大きさが異なる事を観察。
    ・ガラパゴス島の気候変動の際に、フィンチの採食する種子に偏りが発生し、それに伴って種子の大きさに嘴の大きさが合わないフィンチは個体数を減らしていった。
    ・世代を経ると、上記の現象の結果、フィンチの嘴サイズに偏りが生じ、それは進化の過程に他ならないと言う。
    ・フィンチの他にも農薬に耐性を獲得した虫や、ワクチンへの耐性の付いたウイルスも例に挙げられる。我々の身の回りでも目を凝らせば進化は観察出来るのである。

  • ガラパゴス諸島で20年の長きにわたりガラパゴスフィンチの体のサイズとその生存率を丹念に追った研究者夫妻のノンフィクション。非常に興味を惹かれる書き方で、スイスイと読み進められる。
    ガラパゴス諸島は独自に進化を遂げた野生動物の楽園としてよく知られているが、その夫妻は孤立して人も近づかない離島の鳥に注目した。そこでは餌となるサボテンやハマビシなどの植物とフィンチたちだけのほぼ孤立した環境で、生態学の研究を行うには理想的環境であったからだ。彼らはそこで、ほんの0.5ミリ程度の嘴のサイズの違いがフィンチの生存率に大きく関係していることを見出した。旱魃で、食べられずに残されたのはサボテンの固い種子だけという時期は、長い嘴が生存に圧倒的に有利にはたらく。ただ長ければよいというものではなく、雨量が多く、柔らかい種子が大量に利用できるときは逆に短めの嘴が有利になるなど、環境変化に応じて、生き残るフィンチの体の特徴は敏感に変動する。
    その差が大きくなったときに、さらに別の環境要因の変化が進化の「山」を引き離す方向に働けば、まさに我々が別種として認識する種が誕生するのだろう。
    ただ、ここで上げられるフィンチの例は、まだ種として確立できないレベルの中での変動であり、そこから飛び出して種として独立するところを観察で見出すのはやはり難しいと感じる。極端な話をすると、チンパンジーを数世代飼育しても人間にはならないし、逆もしかり。

    また、本書では、フィンチの嘴の長さの変化をもって進化が見られるとしているが、これは実際のところDNAの配列の変化まで伴うものなのだろうか?
    また、ほかの例として挙げられている、捕食者の存在による魚の模様、色の変化についても、数世代で起こる変動は我々が通常抱く「進化」という概念と本当に適合するのか、そしてDNAの配列変化があるのかそのあたりは疑問が残った。

    夫妻が研究を行った70-80年代はまだまだ分子生物学は限られた人たちのものであり、また現代のように各種の遺伝子配列が簡単に同定、報告されている時代ではなかったため、その疑問に答えるだけの内容はかかれていない。本書ではミバエにおける酵素の組み合わせの違いを取り上げているが、あまり説得力がないように思える。
    ただ、これらの疑問は本書がかかれた以降のこの20年の間に確実に解決されているはずだ。
    また、一部分子生物学の話が出てくるが、一般の読者にもわかるよう細部を省略しているのがかえって解りにくくなっている点は否めない。

  • 通常は観察するのは難しい生物の進化を、ガラパゴス諸島の中でも特に周囲の環境から隔絶されたダフネ島にて観察した内容を元にした本。ガラパゴス諸島では一般的であるダーリンフィンチという鳥についての観察の話が中心である。俺の一世代ぐらいの期間で、ダーウィンの言う自然淘汰を観察できるとは非常な驚きであった。

  • Library
    ★5
    Reserved

  • 上野でやってた大英博物館展で
    ダーウィンが捕まえたフィンチを見たけど、
    けっこう小さい鳥だった。

    本書にはフィンチのくちばしを計測する重要なミッションがあるのだが、
    ああいう小さな鳥の小さなくちばしを計測してやっと科学的に進化論が説明できるのだなと変なところで感心した。

    わかったつもりだった進化論がやっと理解できた。

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