- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150504823
作品紹介・あらすじ
花とハチの関係、DNAの複製機能、脳の錯覚……世界的に著名な生物学者の講義を『知の逆転』の著者が編集・翻訳。解説/吉川浩満
感想・レビュー・書評
-
著書『利己的な遺伝子』で、個体は遺伝子が自己複製するための乗り物に過ぎない、と発表し、センセーショナルを巻き起こしたリチャード・ドーキンス博士が、1991年に英国王立研究所で行った子どもたち向けのクリスマス・レクチャー全5回を編集・翻訳したもの。最後に翻訳者吉成真由美さんのインタビューも掲載されている。
宮部みゆきさんの『本よみうり堂』でおすすめされており、先日読んだ『世界を読み解く科学本』でも二人の研究者の紹介本の中に入っていたのだが、それも納得の面白さである。
レクチャーのテーマは「宇宙で成長する」。これは、個体が一つの細胞から何兆個もの細胞へと分裂し、大きな組織体へと成長する「個体発生」、惑星上のすべての生命体が進化の過程を経て成長していく「系統発生」、宇宙に対する大人の認識を持つ、という三つの意味を持つ。
ドーキンス博士は、さまざまな道具や写真、コンピュータ・プログラムを使い、このテーマを五感で納得させてくれる。
レクチャーの構成も巧みである。
最初に、私たちの住む地球が長い年月をかけて驚くほどの多様性を展開してきたこと、それらは運に作用されるが、超自然的なものではなく、説明できる道筋を経てたどりついたものであるとし、科学的に物事を見ることの大切さを述べる。
次に、精緻な造りのため、超人的な力(神)がデザインしたのではないか、と思ってしまいがちな自然界の器官(デザイノイド)が自然選択によって形づくられてきたものであることを、自然界の鳥や昆虫などの例から説明する。
さらに、デザイノイドである「目」を例に挙げ、その機能が少しずつ進化して現在の形に造られてきたことを、コンピュータ・プログラムでシミュレーションする。
それらの説明を経て、生物は何のために生きているのか、という問いの答えとして、生物はDNAを自己複製するための器械であり、そのためにお互いを利用し合って生きている、というドーキンス博士の主張が述べられる。
最後に、人間の脳がどのように進化していったのかを説明し、脳の進化により得られた世界をシミュレーションする力、その力に情報を更新していくことで、世界をより正確に把握し科学的な視点を持つことができると述べる。
本書は、自分たちが万能であると勘違いしがちな人類に、途方もない時間をかけて行われてきた生物の進化をさまざまな例を用いて具体的に説明することで、広い視野を持って物事を見ることの大切さを教えてくれる。実際にその場で講義を聞いているような感覚にさせてくれる翻訳も素晴らしい。進化生物学初心者でも楽しく読むことのできるおすすめの一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「進化は、長い時間の中の幸運の積み重ね」
高校時代に「生物」に苦手意識がありましたが、予備知識がなくてもサクサク読めました。
いまいる生物はそれぞれ自然と人為的行為によって進化しており、なお成長し続ける。
人間が大きな脳をもてたのはなぜか? 創造力、言語、テクノロジーか相互作用することで、特異な発展を遂げてきた。
生命体の生きる理由は、自分の子孫(DNA)を遺すこと。
人間だけが生態系のトップにいるのではなく、それぞれの生物が自然の淘汰にあいながら、各々の生態系のなかでトップに君臨している。
とてもイメージしやすく進化論を学ぶことができました。 -
「利己的な遺伝子」の著者として知られる,イギリスの進化生物学者,リチャード・ドーキンスが行った日本での数回の講演をもとにして書かれた一冊.
一般人向けに,わかりやすい例を多用しつつ進化,生物の本質に関して丁寧に説明されている.生物の素晴らしい性質をたくさん紹介しているため楽しく読める.それでいて進化に関しては明確に著者の分析が与えられている.
ドーキンスは無神論推進者としても知られており,その思想がふんだんに本著の中で垣間見ることができる.そもそも宗教が社会において全面に出てこない日本社会の住人としては想像がつきにくいがかなりはっきりとした態度で,宗教の非論理性を述べており,その論調も読んでいて面白い.
本著で印象的だったのは以下の一文
> DNA は世代を下って流れる川のようなもの.DNA の川は私たちを通って,同じ姿のまま未来に向かって流れていく.
生物はあくまで DNA を伝搬するための乗り物であり,その本質は種の生存のために変化を続ける DNA であるととれる.今のコロナ禍ではっきりと,ウイルスの変異種の出現が続き,感染力を高めたりワクチンへの抗体を身につけたりしている状態を見ることでそれがはっきりと確認できる.
進化とは直接関係がないが,人間が地球を統治している時間が,地球,さらには宇宙の時間スケールで考えるといかにちっぽけなものかも説明している章がある.毎日の仕事に追われると,自分その狭い周辺が世界の全てであるよに錯覚すべきだが,あくまで自分という個体はホモサピエンスという種の DNA の 1 媒介者であることを忘れたくはない. -
橘玲著『「読まなくてもいい本」の読書案内』で本書を知った。科学的にモノを考えることは、無神論へと発展することを理解できた。卵と鶏のどちらが先かは、進化論を理解すれば単純なことだった。『利己的な遺伝子』も『神は妄想である』も読みたい。
-
面白いので、生命の進化に興味がある人はぜひ。
感覚的に把握できないことを、例えで分かりやすく伝えるのが上手。
1000年遡るのをを1歩(1m)とすると、アウストラロピテクスの時代までは3km、初期の哺乳類までは65km、魚が陸に上がってきた時代までは500km…とか!
一歩で平安時代まで戻っちゃうのに、500km先って…途方も無さすぎる。 -
ドーキンスのエッセンスが凝縮されていて既書と比べて格段にとっつきやすい。一日で読み終えてしまった。
時間スケールをわかりやすくするため、地球や進化の歴史を一年や一日に例えたりすることがよくある。しかし本書のように、距離で表すのは新鮮だった。
1mで1000年遡るとして、紀元0年からはじめる。
1mでダビデ王の頃、3mでピラミッド建設の少し前。
ホモ・ハビリスまでは2㎞、初期の哺乳類は65㎞、生命の起源・最初のバクテリアまでは3500㎞、とこんな具合だ。
また、第3章が白眉。
実を言うと著者の『盲目の時計職人』を読みかけのまま長いこと放置してしまっているのだが、この章で全部説明しきっているのではないかと思うほどよくまとまっていた。
「(進化途中の)半分の眼が一体何の役に立つのか」という創造論者に対する反論は実にシンプル。
「半分の眼でもないよりマシ」と。ここの証明は鮮やかだった。 -
"われわれは、色彩に満ち生命にあふれかえっている素晴らしい惑星で目を覚まし、しばらくして再び目を閉じなければならない。"(32ページ)
折に触れて思い出すドーキンスの言葉。本書は著名な進化生物学者であるドーキンスが子供向けに行った特別講義を文庫にしたものである。
私は進化学が好きだ。長い時を経て命を繋いできた地球上の全生物を尊いものと感じさせてくれる。また、人間が生物の頂点であるという驕りから私たちを解放する。
本書からはドーキンスの自然への愛を感じることが出来る。それは、私がこの本を気に入っている理由の一つである。 -
タイトル通り、進化とはどのように行われてきたのか、知るために読んだ本です。
進化というのは非常に長い年月をかけて、登る山のようなものだという例えがわかりやすかったです。
高いところ高いところに自然選択によって登ろうとするが、一度自然選択によって登った山は降りれない(ないよりあったほうがいいため)この例として、オウムガイの目が例示されてます。
とても面白かったのですが、翻訳がですます調だったのに、急にそうで亡くなったりと、少し違和感がありました。 -
ミッシングリンク 錯覚 脳 顔の像
-
無神論者として、徹底的に冷静なのがイイ