超予測力―ー不確実な時代の先を読む10カ条 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150505226

作品紹介・あらすじ

専門家より正確に未来を見通す「超予測者」たち。彼らの思考法・スキルとは? 読むだけで予測精度を高める10の心得を伝授する

感想・レビュー・書評

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  • この本のベースとなったのは、2011-2015年に、アメリカ国家情報長官直属の組織が主催した「予測トーナメント」に出場して圧倒的な成績を収めたチーム「Good Judgement Project」の構成員たちに共通する思考法。

    予測する内容が国際政治に関わる複雑な問題であったにもかかわらず、GJPの予測はCIAのプロの情報分析官も上回ったという。著者は「超予測者」と名づけてその思考法の共通点をあぶり出している。

    彼らは、高いIQがあるわけではない。予測力は才能ではなく、意識して磨いていくことで向上させることができる能力であるということ。また、積極的に物事を探究し、確率論的物事を捉え、新たな条件や事実の認識とともに予測を微修正していくという。

    ーーーーー

    資本市場の仕事をしている身としては、半年、1年、2年単位で主要国の経済環境と市場環境や、基幹産業動向を想像する癖がついている。

    しかし2019年末の武漢でのウィルス発生の報道、2020年1月の武漢ロックダウン報道をみたときに、このコロナ問題がどこまで影響が出るかは正確な予測が出来ていなかった。

    2021年2月の今、東日本大震災の余震の夜にこの本を読みながら、近未来に関するアジェンダ/テーマを自ら設定し、それらがどのような帰結につながるかを積極的に思考し、アップデートしていくことが、今後の自分の人生に非常重要であると痛感した。

    恵比寿ワタリガラスでサトコウと飯を食べた際に教えてもらった。

  • 昨年出会ったシリコンバレーのベンチャーキャピタリストから教えてもらった本。彼らはまだ20 代。forbesの30 under 30にも選ばれている。ベンチャー投資のしかもアーリーステージの投資する彼等はビジネスモデルは掘り下げない。人物の評価で投資の意思決定をする。しかも様々なデータを入手し整理し、何が成功に最も影響を与える因子かを定量的に捉えようと努力する。そんな彼らが勧めてくれたこのsuperforecasting。予測力を高めるにはどうしたら良いかが描かれている。予測力は向上させる事が出来る。大いに参考になったし、勉強になった。

    • Hideyasuさん
      読み始めたよ。ファスト& スローが多く言及されているから、こっちも再開した。
      読み始めたよ。ファスト& スローが多く言及されているから、こっちも再開した。
      2020/11/29
    • Hideyasuさん
      おすすめ有難う。読んだぜ。良い本教えてくれて有難う。
      おすすめ有難う。読んだぜ。良い本教えてくれて有難う。
      2021/02/17
  • 「みんなどんなにすばらしいカードがそろっていても、私が降りてしまっては困るからと、絶対にレイズしようとはしないの」。そこでデュークは生徒たちに尋ねる。自分に強いカードがそろっていてもレイズしないのに、なぜ相手がレイズしたら強い手を持っていると思うのか、と。「この演習をしてみて、みんなようやく自分がどれほど敵の視点でテーブルを見られていないか分かるのよ」とデュークは言う。

    レンゼッティ家はチェスナット通り84番地の小さな家に住んでいる。フランク・レンゼッティは44歳で、引越会社で経理の仕事をしている。妻のメアリーは35歳で保育園で働いている。二人には5歳になる息子のトミーがいる。夫を亡くしたフランクの母カミラも同居している。ここで質問だ。レンゼッティ家がペットを飼っている可能性はどれくらいか。
    この質問に答えようとするとき、たいていの人は一家の詳しい情報に目を向ける。こんなふうに考える人もいるかもしれない。「レンゼッテというのはイタリア系の名前だな。フランク、カミラというのもそうだ。だとするとフランクには大勢の兄弟がいたはずだが、息子は一人っ子だ。おそらく大家族を望んでいるが、経済的余裕がないのだろう。だから代わりに犬を飼うというのは理にかなっている」。一方別の人は「ペットは子どものために飼うことが多いが、レンゼッティ家の子どもはまだ一人で、ペットを世話するには小さすぎる。だから飼っていない可能性が高い」。このようにストーリーを組み立てるのはとても説得力がある。家族にまつわるさらに詳しい情報が得られる場合はなおさらだ。
    しかし超予測者は、少なくともはじめはこうした情報には目もくれない。最初に確認するのは、アメリカの家庭の何%がペットを飼っているかだ。
    (フェルミ推定)

    新たな視点を手に入れる方法はたくさんある。他の人々はどんなふうに予測を立てているのか。どんな外側、内側の視点を持つに至ったのか。専門家は何と言っているのだろう。訓練すれば自分自身で新たな視点を生み出せるようにもなる。
    ビル・フラックも予測を立てるとき、デビッド・ログと同じようにチームメイトに自分の考えを説明し、批判してほしいと頼む。仲間に間違いを指摘してもらったり、自分たちの視点を提供してもらいたいからだが、同時に予測を文字にすることで少し心理的距離を置き、一歩引いた視点から見直せるからでもある。

    積極的柔軟性は、ペンシルバニア大学で私の隣の研究室にいる心理学者ジョナサン・バロンが考案した概念だ。バロンが作成した積極的柔軟性を測るテストは被験者に、次のような文に同意するか否かを尋ねる。
    ・自らの考えと矛盾するエビデンスを考慮すべきである。
    ・自分と同意見の者より、違う意見の者に耳を傾ける方が有益である。
    ・意見を変えるのは弱さの表れである。
    ・直感は意思決定における最高の指針である。
    ・矛盾するエビデンスがみつかっても、自らの考えを貫くことが重要である。

    もう一つの示唆に富むエビデンスは「五分五分」という表現にまつわるものだ。注意深く確率論的に思考する人にとって、50%というのは数ある選択肢の一つにすぎない。このため50%と数字を使う頻度は49%や51%と変わらない。一方、頭の中に選択肢が三つしかない人は確率を判断しろと言われると、50%という数字を使いがちだ。50%を「どちらともない」と同義に考えているからだ。このため頻繁に50%を使う人は、予測の正確性が低いと考えられる。トーナメントのデータもまさにそれを裏づけている。

    あなたと人生のパートナーのこと、そして二人を結びつけた無数の出来事を考えてみよう。あの晩、あなたがパーティに行かずに勉強していたら。パートナーがあの日もう少し速く歩いて、電車を逃していなかったら。あの週末、あなたが友人の誘いに応じて町を離れていたら。こんな「もしあのとき」を挙げていけばきりがない。あなたたち二人がめぐりあう可能性はとほうもなくちっぽけだった。それにもかかわらず、二人は出会った。それをどう理解すべきか。ほとんどの人は「すごいな、なんて運が良かったんだ」とは思わない。およそあり得ないようなことなのに、それでも起きたという事実を「そうなる定め」だった証拠とみなすのだ。
    似たようなことが宇宙規模でも起きている。宇宙の起源に関する現在最も有力な説であるビッグバン理論を考えてみよう。そこからは自然法則がきわめてうまくかみあった結果、恒星や惑星、生命が誕生したことがわかる。ほんのわずかでもずれていたら、われわれは存在しなかっただろう。たいていの人はこうした考察を聞いて、「すごいな、なんて運が良かったんだ」とは思わない。もしかしたらビッグバンは何十億界も起きていて、何十億個のパラレルワールドがうまれていたかもしれず、そのうちいくつかは生命に適した環境を生み出していたかもしれない、と考えることもない。科学者のなかにはこのように考える者もいるが、ほとんどの人は何かの(もしかしたら神の)力が働いたのだと思う。「そうなる定め」だったのだ、と。

    正確に先を読むには確率論的思考が欠かせないものであり、また運命論的思考が確率論的思考を阻害するなら、超予測者は物事を運命としてとらえない傾向があると推定される。それを検証するため、われわれは次のような運命論的表現に対する彼らの反応を調べた。

    ・物事は神の計画に従って起こる。
    ・あらゆることは理由があって起こる。
    ・不慮の出来事や偶然といったものはない。

    さらに確率論的表現についても反応を調べた。

    ・必然的なことは何もない。
    ・第二次世界大戦や9・11のような主要な出来事も、まったく違った展開になっていた可能性がある。
    ・われわれの人生に偶然はつきものだ。

    アメリカの一般成人の平均値は、9段階の真ん中あたりだった。ペンシルバニアの学部生はそれより少し低く、GJBの一般ボランティアはそれよりさらに低かった。すべての集団のなかで超予測者のスコアが最も低く、はっきりと運命論を否定する側にあった。

    どのような作戦も確実と言えるのは敵の主力と対峙するまでである。
    ―フォン・モルトケ

    予測可能性に限界があるのは、非線形システムにおけるバタフライ硬貨の当然の帰結である。私の初期の研究「専門家の政治予測」では、専門家の予測の正確さは五年先を境に低下した。

    一般の予測者の視力を0.2だとすれば、超予測者のそれは0.5になる。テトロックはこれを「人生を変えるような変化」と語る。

  • 毎日少しずつ変化している。10年前に、今を想像できたか、20年前は? 10年単位で考えると本当に大きく変わった。想像することは不可能だっただろう。改めてそこは同意できた。本当にそうだ。
    本文には米国の選挙のこと、州のことが何度も出てくる。馴染みがないので、そこは読んでいても振り返ってあのときはどうだったか、とは考えられない。仕方がないけど。

  • 人のススメで読んたが、自分と相性が悪かったのかも知れない。
    全く心に残るものが無かった。

  • [出典]
    「解像度を上げる」 馬田隆明 P.349

  • ★★★☆

  • 予測などというものがちゃんと研究されていることにまず驚かされました。

  • ・訳書特有の文体で、頭に入れるのが難しかった。

  • 不確実性を楽しむ。予測力を評価する。
    【予測の方法】
    ①現実的②分析的③多様な視点④確率論的(可能性を多段階評価)⑤慎重な更新(事実が変われば意見を変える)⑥バイアスが影響していないか確認する

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著者プロフィール

(Philip E. Tetlock)
ペンシルバニア大学心理学・政治学教授。カナダ生まれ。イェール大学でPhDを取得。カリフォルニア大学バークレー校、オハイオ州立大学で教鞭をとり、現職。スタンフォード大学行動科学先進研究センターのフェロー、ラッセルセージ財団のフェローも務めた。専門は社会・文化心理および意思決定過程。アメリカ心理学学会、アメリカ政治学学会、アメリカ科学振興協会などからの受賞歴多数。邦訳書『超予測力』(早川書房、2016、共著)。

「2022年 『専門家の政治予測』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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