実力も運のうち 能力主義は正義か? (ハヤカワ文庫NF)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150506025

作品紹介・あらすじ

成功を決めるのは努力か環境か? ハーバード随一の人気教授が「能力主義」の是非を問い日本中に議論を巻き起こしたベストセラー

感想・レビュー・書評

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  • 能力主義は差別を解決しない
     "努力して得た能力によって差別を乗り越えた"
     は美談ではない。美談にすると差別が温存され
     る。
     努力は素晴らしいが、そもそも差別がない社会を
     目指すべき。

    能力社会
     能力/学力社会は最後の偏見であり差別。
     他の差別は糾弾されるが、能力勝者は見下し、
     差別を認識もしておらず、むしろ正当化されてい
     る。これが見えない差別を生む。
     特に高学歴が差別に敏感かつ無意識差別をする。
     労働者、不細工、太ってる、低学歴なんて
     努力できるはずなのに!

     教育の限界
     チャンスを平等にしても結果は平等でない。
     
     欧州
     努力を過小評価
     欧米
     努力至上主義
     黙々と努力できる才能は遺伝で決まっている。

  • 真の平等とは何か?を考えさせられる本だった。オバマ元大統領等、過去の大統領らの発言・境遇を例とした論拠は理解しやすく、能力主義を市場原理と道徳性の観点から分けて説明している点も分かりやすい。
    社会への目の向け方に気づきを与えてくれる一冊。おすすめです。

  • 2023.12.23 『ファスト教養』で引用されている。

  • 正直なところ読むのに苦労した。理解しきれていない部分もあるので何回か読み返して理解を深めたいと思う。
    アメリカンドリームに代表される能力主義は本当に称賛されるべきことなのか、という問いに対してアメリカの政治家、経済学者の発言や、過去の事例を参照しながら考えを述べていく内容。
    個人的に興味深いと感じたのは、学歴偏重主義の話。国を統治する上で必要なのは名門大学の学位を有していることではなく、「実践知と市民的美徳」であるという主張には説得力があると感じた。(事実ワシントン・リンカーン・トルーマンは大学の学位を持っていない。)
    アメリカの話がメインではあるが、日本に置き換えられることも多いので、読んでみると新たな気付きや視点を得ることが出来ると思う。

  • ハーバード白熱教室のマイケル・サンデルによる能力主義社会に対する警鐘。
    2016年の大統領選でトランプがヒラリー・クリントンを破って当選した。そこで明らかになったのは、富める者と貧しい者の間の断絶だった。そしてそれはアメリカが80年代から目指してきた能力主義の行き過ぎにより招かれた事態であると、かつては人種の違いや出自によって生まれた差別を解消する者として、その人の能力で人を評価しようとする能力主義は素晴らしいものに思えた。
    しかし、それは能力を安易に測る手段として学歴偏重を生み、結局、社会の流動性を高めるのではなく、裕福な家庭に生まれた者が、様々な手段で高学歴を得て、そのような手段を得られない者は相変わらず社会の底辺にあり、高学歴者が、そうではない人を蔑み、学歴がない人たちが高学歴者との不当な格差に怒りを覚えるという社会を生んでしまった。
    この現状を打開する方法はないのか?

    アメリカン・ドリームとして語られることの多い、人がその能力によって評価される世界が、能力に恵まれなかった人、それを育む運や機会に恵まれなかった人に対しては厳しいものになるという、今考えると自明とも思えた事に目を向けてこなかったこの40年の世界を批判的に捉え直している。

  • 能力主義というか日本の学歴主義はもう崩壊していると思います。イギリスも。官僚だけでなく、経験値やエネルギー、ひらめきが力と感じてます。、

  • 共和主義の伝統的な生産者の倫理の喪失
    能力主義による蔑視、驕りの蔓延=個人主義(≠共同体主義)の蔓延
    アリストテレスの生産を通じた美徳
    教育への選別機能の付加
    競争優位を失いたくないがための完璧主義

  • 大卒者とそれ以外の学歴者の差異が、社会階層の分断線となっていて、その分断線が、世代を超えて固定化している。さらに、大卒者の中でも、トップ校と、それ以外の差が大きくなり、その分断も、世代を超えて固定化している(トップ大卒の子どもはトップ大に入り高給取りの「勝ち組」となり、大学に進まなかった親の子どもは大学に進まずに「負け組」となる)。

    この構図については『学歴分断社会』(吉川徹)等でも取り上げられていて、アメリカでも日本でも同じだと認識したが、この本では、その動きを支える「メリトクラシー」の負の側面に踏み込んでいる。

    優秀な人を責任あるポジションにつけるという「メリトクラシー」の理念そのものに対しては、誰も異論を挟まないだろうが、能力によってポジションを分ける社会で「負け組」となったら、他人に対しても、そして、自分自身に対しても言い訳の出来ない「挫折」になる。

    更に、高学歴の「勝ち組」は、「学べ!学べ!」とだけ言って、それが出来ないで負けるのは、自己責任だと追い詰める。

    この蟻地獄のような構造から出てくる「負け組」の怒りが、トランプ現象を生んだのではないかとのこと。確かに、そういう面はありそうです。

    なかなか難しい問題ですが、解決の糸口として、次の2つがあげられていた。

    1つは、大学の選別装置としたの役割を和らげること。くじ引きの導入など。

    もう1つは、労働の尊厳を取り戻すこと。極端に金融化が進んだ経済の中での税金のあり方の変更など。

    労働の尊厳を取り戻すということに関連して、今週日曜日に聞いた、マタイの福音書のぶどう園の労働者のたとえを思い出した(マタイ20章1-16)。

    ぶどう園の主人は、朝早くから働いていた労働者にも、夕方1時間だけ働いた労働者にも、1日分の賃金を支払うという不思議なたとえ話。なかなか腹に落ちる解釈を聞いたことがない(唯一、井上神父の解釈だけが腹に落ちた感じ)。

    でも、労働の尊厳を取り戻すということで、労働の多寡ではなく、働いてくれたことに対して、「友よ、ありがとう」と声をかける神さまの姿には、何かがあるような気がした。1日中、仕事にありつけなくて、悶々としていた労働者が最後の1時間働いたことに対して報いる紙さまの姿に。

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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